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#7テスト終了

「それでは」「テスト」「……終了」「おめでとーー!」

 僕を除いた4人が声を上げ乾杯をする。

「ほら、玲君も!」

「え? あ、うん」

 言われて僕も紙コップをほかの4人に合わせた。

 ここにいるのは5人。僕と優とその友達の野々山さん、樋口さん、三輪さんである。

 なんでこの5人かと言うと、昨日に引き続き優の勉強を見ることになったぼくは、彼女の家では落ち着いて勉強ができないので図書館にでも行こうか、と教室で話していたところに樋口さんたちがやってきて、なぜか彼女たちを含めた5人で喫茶店で勉強することになり、その関係で今回テスト後の気晴らしに僕も誘われたのである。

 正確にいえば僕は半ば無理やり連行された。テスト明けの今日は生徒会で招集がかかっていたのだがさぼることになってしまった。きっと次行ったとき会長にいじめられるんだろうなぁ……。

 昨日コーヒー一杯(お代わり自由)で何時間も居座る迷惑な客をしていた僕たちは、さすがに2日連続で同じ店に行くのはどうかと思い、別の店にて騒ぐことにした。

 選んだ店はバーガー屋。周りには僕たちと同じぐらいの人たちでにぎわっている。その中には同じ学校の制服もあり、例外なくテスト明けの喜びを表している。だから多少うるさくしても大丈夫だ。

 男1人に女4人。こういうとき漫画とかでは周りの男が嫉妬してすごい目で見てくるものだ。気になった僕が周囲を見るとなぜかいいものを見たとでも言いたげな眼をしていた。当然ながら僕は≪お人形のようにかわいい女の子を囲む女子高生≫という風に見られているとは気付かない。

 とはいえ孤立無縁(ハーレム)という状況に変わりはなく、僕はなんとなく緊張しながら照り焼きバーガーにかじりついた。

「あ〜あ、玲君。口のところ、汚れちゃったよ」

「えっ、嘘!?」

 言いながら左隣りから紙ナプキンを手渡す優に礼を言って受け取り、右隣の樋口さんから

「伏見君、ちょっとこっち向いて」

と言われたので振り向いた。

「じっとしててね」

 そういった樋口さんは手に持った紙ナプキンで僕の口元をやさしく拭いてくれた。

 あぁ〜〜!? という優の悲鳴と おぉ〜〜!! という向かいからの歓声を聞きながら恥ずかしくなってしまった僕は、顔が熱くなるのを感じてうつむいてしまった。

「あ、ありがとう。樋口さん……」

「いいえ、どういたしまして」

 それでも僕はかろうじて礼を言う。

「伏見、ちょっといいか?」

「……何?」

 僕は向かいに座る野々山さんの声に顔をあげた。

――カシャッ

 視界に入ったのは携帯電話(カメラ)

「保存」

 不意を突かれた僕は鯉のように口をパクパクさせる。

――カシャッ

「もう一枚」

 僕はあわててもう一度顔を伏せて、勘でカメラから顔が隠れるように両手を突き出した。

「ちょっと真琴! 何やってんのよ!!」

「ん、なんだ優。君もこの写真がほしいのか?」

「そんなこと言ってないでしょ! 玲君が嫌がってるんだからやめなさいよ!!」

 ありがとう優。僕はいい友達をもった。

「じゃあいらないのか?」

「っ!! べ、別にいらないわよっ!!」

「いや、その目はうそをついている目だ」

「そ、そんなことないわよ……」

「ふむ、まぁいい。後で送っておくことにしよう。どうしてもいらないというのなら止めておくが」

 さてどうする、と付け加える野々山さんに優は

「……」

 えっ、黙っちゃうの!? そこは断固拒否してくれないの!? 少し悲しくなった僕はうるんだ瞳でそっと優を見上げた。

「―――!!」

 そんな僕の無意識かつ無自覚の行動は彼女の顔を真っ赤に染めた。

――カシャッ

 また!? 僕は顔を伏せ、しかしカメラレンズはふさいでいるはずと思い少しだけ指に隙間を開けて見ると

「な、なに撮ってんのよ!?」

今度の被写体は優だった。

「カメラを持ってる時にそんな顔するのが悪い」

 その言葉に三輪さんはうなずき、樋口さんはにっこり、僕はノーコメント。優は

「撮るほうが悪いんでしょ!」

と至極もっともなことを言った。

 とりあえず僕はジュースを飲んで一息ついた。

「……ずるい」

 そこでポツリとつぶやいたのは今まであまりしゃべらなかった三輪さん。

「何がずるいんだ琴音?」

「……ゆーゆーもミリりんもマコすけもレイっちと仲良し。琴音だけ仲良くない。だからみんなずるい」

「あらあら、確かにそうね。私たちだけ伏見君と遊んでてずるかったわ」

「ふっふっふ。しかし甘いな。この世はしょせん弱肉強食。伏見と遊びたいなら自ら行動するしかないのだ!!」

 拳を天高く振り上げた野々山さんの言葉に少しだけ目を見開く三輪さん。どうやらそれが彼女なりの驚愕の仕方らしい。そのまま何やら考え込む三輪さん。

 ここで少し忘れていたことを。

 なに、そのネーミングセンス? っていうかいつの間に僕にニックネームが??

「……レイっちじゃ、いや?」

「えっ? 読心術っ!?」

「……レイっち分かりやすいだけ」

「うむ、分かりやすいな」

「ええ、そうね」

「あたしも人のこと言えないけど玲君は顔に出やすいよ」

 そうだったのか……。

「……そうだったのかって思ってる」

「「「うん」」」

 う〜ん、これから気をつけよう。

「……これから気をつけようとしてる」

「「「してる」」」

 いや、もう勘弁してください。

「……分かった。じゃあ、はい、アーン、ふっしー」

「……えっと、どういうこと??」

 目の前に出されたフライドポテト。その持ち主は当然三輪さんだ。

「……レイっちじゃ、嫌なのかなと思って。だからふっしー」

「いや、そこじゃなくて。何でこんなこと、してるの?」

「……自ら行動」

「ふむ、なるほど。さすがだな、琴音」ニヤニヤ

「ええ。私もそうすればよかったわ」ニコニコ

「む〜〜」ムッツリ

「……アーン」無表情

 ……なに、この状況?? 身動きできません。

「……やっぱり、琴音だけ、仲良くない?」

 じわりとにじむその瞳。涙の気配にあわてる僕は周りに救援要請(ヘルプ)

 ニヤニヤ。ニコニコ。ムッツリ。変わらぬ状況。

「…………」

 いや、事態は悪化していく。感情の読めない瞳に大きくなっていく涙の球。僕は、それがこぼれてしまう前に、

「……あーん……」

全面降伏をした。

――カシャッ

 またもカメラ音。反射的に僕がポテトをくわえたままそちらを見ると、

「……邪魔しないで」

三輪さんがレンズを隠していた。そして、そのまま携帯を取り上げて懐にしまい、次のポテトを手に取った。

「……はい、アーン」

 ニヤニヤ。ニコニコ。ムッツリ。変わらぬ状況。

「……あーん」

 いや、そうではない。

 少し嬉しげな三輪さん。

 表情としては薄いけれど、ほんのかすかな微笑み。

 それは、疲弊していた僕を少しだけ、うるおした。それでも帰るころにはぐったりと疲れていたけど。



「佐川君、おつかれさま」

 テスト明けの今日は一時間ほど軽く流すような部活があった。

 一年対二年の紅白試合。夏目先輩が俺に声をかけてきたのは、それが終わった時だった。

「は、はい。先輩はどうしたんですか、こんなところで?」

 俺の質問に先輩は、二年の先輩にタオルを渡しているマネージャーを指差した。

「彼女を待っているのよ」

「そ、そうなんですか。じゃあ、退屈だったでしょう、大変でしたね」

「ううん、全然。スポーツとかは私苦手だけど、見るのは結構好きだから」

 見るのは好き。それを聞いて心の中でガッツポーズ。

 そんな自分を自覚しておかしく思う。自分はこんな人間だっただろうか、いや、違う。しかし、彼女のことを思うと際限なく舞い上がって、そのまま自分がどこにいるのか分からなくなってしまう気がする。

「そうだ、さっきのゲームかっこよかったよ」

 みんな半分ぐらい遊び感覚でやっていた試合。そんな物で褒められても仕方ない。

「あ、ありがとうございます!」

 なのに、すげぇ嬉しい。

 さっきまで走っていた疲れが急速に引っ込んでいくのが不思議に思えた。


 ちなみに、三人娘のフルネーム。

 野々山真琴 樋口美理 三輪琴音

 本文で外見とか書かなかったのは今のところ自分の中でサブキャラだからです。あとがきで補足するのはあまり好きではないのですが、でも軽く一言。

 順番に、ボーイッシュで背高、レイヤー入ったやや長髪のおっとり、不思議なツインテール、見たいな感じです。では失礼します。

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