Ep8;緋色の外套
本日二回目の投稿です。
なんか今日は書けてしまいました(*^^)v
午後、体力作りの為に街の外壁の所を走っていると、どこかから声が聞こえてきた。
「へへへ、コイツ案外可愛い顔してんじゃねぇか。連れて帰ろうぜ」
「はっ、まぁたコイツのワリィ癖だ。このロリコン!」
「嫌! 放せ! 放せー!!」
男達の下ひた笑いと、年若き少女の悲鳴。
俺が正義の味方なら、真正面から男達の前に出て行って、少女を直ぐに助けるのだろう。
だが、俺にそれ程の力は無い。武器と言えば、つい先日目覚めた能力のみ。
この状況、逃げるべきだろう。
俺はそう判断して、走っていく。
少女の悲鳴が消えるまで。
◆ ◇ ◆
それは私────‘魔女見習い’パンドラの人生の中で、一番の過ちだった。
王宮に献上する荷物を積んだ馬車に、自分の杖を置いたまま客人用の馬車に乗ってしまった。
魔女にとって、魔法もしくは魔術を使うための媒体であり、魔力をためる杖は必須のモノ。
それをおいて馬車の中で話しこむなど、我々にとってはもっての外だった筈。
そんな時に、盗賊に襲われるなんて思いもしなかった。これは私の自業自得だ。これで死ぬならそれも良いだろう、半ばあきらめていた時、私を見つけた盗賊の一人が私の手を取って、こんな事を言った。
「へへへ、コイツ案外可愛い顔してんじゃねぇか。連れて帰ろうぜ」
息を呑んだ。私はいまだ齢十四だ。後二年で結婚可能な年齢では有るが、それでもそう言った事はまだしていないし、結婚前にそんな事をするつもりもなかった。
師匠にそう言った事をして行う魔術もあると聞いたが、それは信頼も重要だと聞いた。
「はっ、まぁたコイツのワリィ癖だ。このロリコン!」
嗤いながら言う盗賊の仲間。他の数人も恐怖に震える私を嗤っている。
「嫌! 放せ! 放せー!!」
絶叫、私の叫びが森の中を響き渡る。
ここは首都の直ぐ近くだった筈。あわよくば、誰か助けに……
無駄だとは解っていても、抵抗せずにはいられない。
私のプライドも何もかも、こんな奴らに蹂躙されると思うと、怖気がする。
「こんな邪魔なローブ、引き裂いちまうか」
「嫌だ! やめろー!! 誰か……! 助けて……!!」
数人の男に羽交い絞めにされた上で、びりびりと音を立てて引き裂かれる私のローブ。
このローブ、気に入ってたのになぁ。
半ばあきらめが入ってはいるが、私は叫び続ける。
この状況を打破してくれる、勇ましき者を求めて。
「助けなんか求めても、誰も来やしネェぜ。ここはそう言う場所だ」
「そうだそうだ、騎士も、ましてや冒険者も来ネェ場所だ」
「こんな所を通った、馬鹿な自分を呪うんだな」
「ここに来るのは、まさしく愚か者だ」
男達は、私から希望さえも奪おうと手を伸ばす。
涙が一筋、頬を伝う。
流れるその涙は、絶望か後悔か、
‘なんだお呼びかぁ? 愚か者なら、ここに居るぜ’
それとも希望を掴んだ故か。
差しのべられた手には、一つの希望が隠れていた。
『何だ手前は‼‼』
盗賊らしき風体の男達は、気配なく自分達の背後に降り立ち、不穏な言葉を放った緋色の外套に付いたフードの部分で顔を隠した男に疑問を放つ。
パンドラは突然の男の来訪に、目を見開き彼の言葉に感動した。
それはきっと、私に差しのべられた勇者の手なのだと。
「俺はお前らの言う所の愚かもんさ、今からそいつの要望にこたえようと思ってね」
盗賊、パンドラ、ここに居る緋色の男以外の全員が息を呑む。
盗賊はこの男の奇妙な自信に、パンドラは男の言葉への歓喜に。
「さぁ、かかってきな。チンピラども‼」
緋の男は、右手の人差指でクイクイッと盗賊を挑発する。
これまでの男の発言への怒りと、その正体への不安から、盗賊たちは激怒した。
そしてそのまま手に手に武器を取り、雄叫びを上げて男へと襲いかかる。
そんな事をモノともせず、パンドラへと笑みを浮かべる緋の男。
男の微笑に、パンドラは驚愕した。「あれは、何だ」と。
先の数瞬で、パンドラは男の魔力を読んだ。パンドラとて、今は媒体がなく見習いとは言え魔女を自負する身。それくらいは出来る。
だが魔力を調べた途端。全身に振るえが起きた。
大きすぎる。その魔力は、自信の練摩した魔力と比べても、由に七倍はある。例えるならば水槽と湖。それ程の魔力の差。
彼はいったい何者なのか。そんな疑問が、パンドラの脳裏をよぎる。
それとはまったく関係なく、男は攻撃を受ける。
いくつもの斬撃、打撃を。四方八方から完全に同時に。
「へッ、殺ったか?」
盗賊は自分達が囲み、攻撃し、弱っているだろう緋の男確認する。
「なっ……!」
「居ないだと……!」
「どう言う事だ……!!?」
動揺し、周囲を見回す盗賊たち。
緋の男は、その上空から黒炎の門を開き、現れた。
「門……!?」
その魔術は、まさしく小型化された門。
だが、この男のそれはどこか異質。
本来、門の魔術は属性を持たぬ比較的に汎用型の魔術だ。
それが炎を纏うなど、聞いた事もない。
「‘燃えな’」
緋の男が、盗賊たちの中心に右手を翳して一言、言霊を放つ。
その瞬間、空気が弾けた。
否、実際には盗賊の張る包囲網の中心に、先程の黒炎が爆発するようにして、一瞬だけ現れたのだ。
だが、それは空気が破裂するようにして見える原因となった。
盗賊たちが、吹き飛んだのだ。
目算で言う所約三メートル程、木にぶつかって止まるまで。
戦闘は終わった。
緋の男が、一撃で盗賊を気絶させる事によって。
「大丈夫か?」
緋の男は、パンドラに自分の来ていた外套を羽織らせた。
疑問に思い自分の身体を見れば、肌が大きく露出していた。
「フフッ……」
パンドラは、その男の性格が、少しだけ解った気がした。
主人公、非力な少女を助ける。と言うお話。
気絶はしたが、生きてはいる盗賊たち。
魔女さん、主人公に興味を持つ。って感じです。
ではではまたいつか。ノシ
最近暇さえあれば執筆している私、間和井でした。




