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Ep23;影と吸血鬼

 お久しぶりです。

 今回は投稿が遅くなったため(あんま関係ないけど)

 分量がいつもより少し多くなっております。


 形としてはバトルかなぁ……

 では、Ep23;影と吸血鬼どうぞお読みください<(_ _)>




「話をするためにも、まずはこちらの部屋に来てもらおうかの」


 気付けば、アキラは可愛らしい部屋の中に居た。お姫様の寝ていそうなカーテンの付いたベッドに、奥に有るピンクのカーペッドに乗せられた無数のデフォルメされた動物のぬいぐるみ。

 部屋の中心らしき場所には、場違いな程傷だらけな少年。アキラが風の魔術で拘束されている。


 その眼の前には、鮮やかな金色の長髪に陶磁器のように白い肌、その内に二つの翡翠の宝石をたたえた美しい少女の人形が立っていた。


「さぁ、一時的にでも決着がついた所で話と洒落込もうかの。なぁ、アキラとやら」


 アキラを呼ぶとともに、手を向ける人形。

 人形の身体はどうやら木で出来ているらしく、一言喋る内にカタカタと言う音が何度も聞こえてくる。その腕には球体関節がはめられていて、身振りをしようとするたびにきりきりと音がする。

 人形は直ぐそこに有ったソファにドサリと座り込み、その姿に似合わぬ爺口調でアキラに問う。


「は、何でそんな事……! 吸血鬼なんかを信用するかよ」


 無機質に、無表情に聞く人形の言葉はアキラの心には届かなかったのだろう。

 つい先刻切り刻まれた傷だらけの身体を無理やりに動かして、アキラは風の拘束に抗った。

 後ろ手に風の刃で巻き取られた両腕、膝立ちに固定された両足、そしてその全てを薄皮一枚で切り裂かぬよう覆う、さも生物をあやめる為に作りだされたかのような鋭利な拘束の旋風。


「ガァ…ァア……!!」


 それからどうにか逃れようとして、身体を捻り、切り裂かれた。飛散するアキラの血液。無数の風には容赦などと言う言葉を知りはしない。

 耐刃素材であるはずの緋色の外套も、鍛えられ始めたばかりの若き身体も、全てに切り傷を付けてアキラの抵抗を許さない風。

 傷つけて苦しめて、拘束するその風に遮られようと、それでも抗うは賢きか愚かしきか。

 身体の傷が増える度に、アキラの目に灯る光が弱くなって行くのが、人形には手に取るように解った。


「ほぅ、抵抗(レジスト)するのか。だがそれは硬き衣を持つ鬼をも切り裂く風の刃で編まれた拘束具。ヒトに破れる訳が────」


 余裕を持って放たれたヒトの形を模したものの言葉は半ばで、絶大な高音に遮られた。


 それは硝子(ガラス)が叩き割られた時のような、耳障りな高き騒音(ノイズ)

 頭へと直接響き渡るような高音に、口を閉じた人形。見開かれた、その硝子(ガラス)玉で形作られた眼球の表面に映るのは、両腕を左右に大きく広げて拘束の風を完全に振り解いたアキラの姿。


「な…に……!?」


 意味の無いな疑問の声。

 投げかけるでもなく、風が消え音が消えた部屋に、その声は溶けていく。

 視線の先、鬼をも縛る風の刃を打ち負かしたアキラ。


 アキラは膝立ちのままではいけないと思ったのか、フラフラになりながらも立ちあがる。


 もう既に意識を保つ事もギリギリな身体で、それでもなお立ちあがるアキラの放つ気合いは鬼気迫る様子。

 その姿はまさしく、鬼。


 死にぞこない。そんな言葉の似合いそうな様のアキラの気合い。

 弱弱しい筈のアキラは、一歩。前に踏み込んだ。


 それに合わせるようにして、ズルリ。

 人形はソファを足で、後ろへと押し下げた。


「ふ、不可能じゃ……! 不合理じゃぞ侵入者! 君は人間、私はそれよりもなお高き霊格を持つ者っ。その霊格の落差を無視する事などっ、そんの事など出来る筈が────」


 何故、何故。

 そんな言葉が宙を舞い、その末に帰結した結果は、不明。

 人形には理解が出来ない。

 アキラの持つ気合いが。

 それに気怖されている自分の現状が。


「……ハァッ……ハァッ……、五月蠅(うるせ)ぇよ……、(さえず)る…な、よ……ザコが……!」


 それはどんな意趣返しか、アキラが発したのは人形が初めに放った(あざけ)りの言葉。

 言葉の調子も、立ち位置も違えば、放った相手も全く違う。

 

 それでも、放たれた言葉に、返す言葉は有りはしない。

 思いついては消えていく反論の言の葉。


「な、何で……」


 パクパクと口を開閉する人形。

 その気配は当初の威圧的なモノとは違い、小さく儚い小動物のようなものへと変化している。


 足を引きずり、右手を人形へと伸ばす息も絶え絶えなアキラ。

 そお気配は明らかにヒトの物ではなく、生命の格が違うものでさえも恐怖させるケモノのようなモノへと変貌している。


 アキラは、突き出した右手に莫大な魔力を練りこみ、呪文も無しに言葉を放つ。


「‘燃えろ’」


 次の瞬間、黒い焔が噴き上がる。


 それは容赦なく、無慈悲に。


 それは敬愛と、慈悲を込めて。


 清廉な人形を焼き尽くし、蹂躙した。



 ◆ ◇ ◆



 暗き部屋で、ただ一つ輝く水晶球を覗きこむ幼子が一人。


「客人、そうか。ニーニャの言っておった魔王の資格も勇者の資質も持たぬ者、か。さて、ここからどう抜け出す?」


 覗き込んだ水晶球には、傷だらけで捕まえられた少年。アキラと人形の姿、そしてその周囲の物が上方から映し出されている。


「何をしている無資格者。その程度の拘束、破れなくてどうするのだ」


 水晶球の中のアキラは、風の刃に切り刻まれながらも悪あがきをする。

 じたばたと暴れれば暴れるほど、その身は傷つき血を噴き出す。


「この程度か? ならばニーニャには仕置きが必要か?」


 数秒間傷つけられても悪あがきをやめないアキラに、半ば呆れ気味に言葉を吐く何者か。

 次の瞬間、響き渡る硝子の割れる音。


「何だと……? 魔力も使わず、腕力でか? そんな事、有り得はしない」


 呆れながらも水晶球を眺める何者かの目が驚愕に見開かれる。

 其れは、魔術の理論を斜めから完全にぶった切るような理不尽な出来事。


 本来、人間はおろか肉体の硬度等の強靭さにおいては軽く四倍はある鬼族の者たちでさえ拘束し続ける中級拘束魔術『捕縛(フリュ・トゥルビヨン)刃風(ラム・ヴァン)』を肉体の力だけで破るなど、それこそ生態系の頂点に君臨する竜種や吸血種の力がなければ不可能なのだ。


 それを、アキラはやってのけた。


「なんと言う……不安因子(イレギュラー)

 これでは勇者も魔王も関係ない。小奴、霊格そのものが違うではないか」


 息を呑む音と共に、何者かは頭痛を堪えるかのようにして。眉間をもんでいる。


 霊格とは、すなわちその生命体、もしくはその種族の持つ概念的位の事だ。

 現実世界において、その頂点に君臨するとされているのは人間やゴリラなどの霊長類。こちらで言うとすれば頂点に【神】と呼ばれる者達その下に最強のニ種族。吸血種と竜種がおかれている。そこから下は多くの種がせめぎ合っているため今は省く事とする。


 アキラの行った行動がまぎれもない真実だとするならば、最低でも彼の霊格は最強種に並ぶことが可能であることとなる。

 人間にも竜を狩ったり、吸血鬼を死に追いやる者は居る。だがそれは大抵、英雄やら勇者等になりうる才能を持ったモノなど、限定されてくる。


 特殊な千理眼の術を用いて其れを見きることのできるのは今はこの者くらいのものなのだが、それを持ってしても、アキラにその資質は認められなかった。

 アキラは英雄や勇者と言った者の伝説として語り継がれるようなきらびやかな結果を生み出す物ではない。

 それはそう言うことへとつながるのだ。


 強大な力を持ち、その上勇者には成り得ない。

 ならば後の選択肢は、大抵負の側面へと流れ込んでいく。


「だが、魔王の資格も持っては居ない、か」


 見た所アキラの行動には、言い知れない【悪】を感じさせる気配はなかった。

 術を使ってクッションを置いてでは良く分からない。


「ならば自身の目で確かめるべき、か」


 そう言うと、幼き者は聞き取れぬほどの高速で、呪文を詠唱した。


「────長距離移動、隠れ家6番の私室へ」


 呟く声の、数秒後。

 幼子は漆黒の焔の燃え盛る場所へと、移っていた。



 ◆ ◇ ◆



 それは何もかも差別しない、平等な海のようなモノだ。

 全てを包み込み、焼き尽くす漆黒の焔。


 それが今冒すのは、私にいつもつき従う精霊。影の上位精霊、私が付けた名はリヤン。幾年月を経ても信じあえるよう私が考えた、絆と言う意味の名だ。

 彼女は私が吸血鬼となった時よりの従者なのだ。時を経た精霊は強くなる。だからこそ人形へと憑いてもらい、彼がどのような者なのかを契約により得た感覚同調の術で私に直接彼女自身の考えを教える事になっていた。

 だがそれも虚しく、彼女の感覚を通して私に伝わったのは一つだけ。


 ただただ、彼の者の霊格が人間をの持てる次元の物ではないと言う一つの事。

 その後、彼女から送られてくる感覚が途切れたことから、彼女の憑いていた人形が最低でも修復不可能な状況に陥っている事が解る。


「リヤン! 完全同化だ!!」


 人形が修復不可能でも、幾百の年月を重ねた最上位の影の精霊である彼女がやられる事などありはしない。

 大丈夫。そう、大丈夫だ。


『はい、マスター』


 ほら、いつも通りの受け答えだ。


「アキラ、と言ったか。勘違いしているようだから解らせてやろう。私がこの屋敷に住まう吸血鬼、キリアだ」


 呆然自失としている傷だらけの少年に、睨みを利かせて脅してやる。

 私達の魔術は俗に精霊魔術と呼ばれる類のもの。


 その中でも俗称で完全同化と呼ばれるこの魔術は、術者の能力を限界以上に引き上げると言う規格外な最上級魔術に分類されるモノだ。

 これにより各種能力値が上昇すれば、私の使う千里眼系の魔術も見抜く能力が上昇する。


 その代わりに、限界ぎりぎりで意識を保っているだろう彼は意識を失うだろうが、それはいい。

 まずは彼の霊格の謎、そしてその精神世界の状況と言ったモノを確かめさせてもらおう。


「契約せし我が名において命ずる、暗き彼の地より来りし者、影の精霊よ。


 汝、我が心と共に()れ。


 汝、我が身を(よろ)え。


 汝、我が爪牙となれ。


 其は、混沌より生まれし光の対極。究極なる陰の意志。


 我、汝を欲せん」


 一息に紡ぎだす高位呪文。一言口にする度に、私の身体(カラダ)に、私の精神(ココロ)に、リヤンが溶け込んで行く。

 今でもほんの少しは暗い筈の視界は、吸血鬼の能力の底上げによって完全に可視可能になる。

 身体の周りを、暗い魔力が蠢きだす。其れは一つは鎧のように、一つは牙のように形を成していく。身体全身に魔力が行き渡った時、私は元の姿よりも荒々しい、吸血鬼そのものと言った様相のモノになる。


 私達が完全同化、と呼ぶこの高位魔術。

 その名は、


精霊化(エレメンタル)、【影鎧爪装(オンブル・アルミュール)】」


 彼は一瞬私を見て、糸の切れた人形のように崩れ去る。


『まずは精神世界から探りを入れましょう。マスター』

「そうじゃな、なれば【夢渡り(レーヴ・ミグラテール)】」


 そう、まずはココロの有り様から、この少年。アキラの事情を探ってみよう。



 どこかも解らぬ部屋の中、数人の少年少女が机に向かい、教団の上に一人の少女と一つの黒い影が立つ。


「キリアと!」

『リヤンの!』


『「新出魔術教室!!」』


 ポンッポンッと言う小気味良い音に乗せて、ハートマークが宙を舞う。


『さぁ、マスター。今回作者がなんとなくノリでやってみたこの企画ですが、マスターとしては、どう思います?』


「うむ、我の出番が増えて万々歳じゃ」


『そうですか。まぁそれは置いといて早速本題に入りましょう』


「む、そうじゃな。今回の講義内容はなんじゃったか?」


『今回は、マスターと私が完全同化と呼ぶ、精霊化(エレメンタル)の魔術についてです』


「あぁ、そうじゃったな。それでは精霊化の魔術について、これから抗議を始めるが、皆よいか?」


 はーい、と言う声が各所から上がる。ここの生徒はみな良い子たちのようだ。


「精霊化とは、自身の霊体に霊格が一段階上の精霊を溶け込ませ、自身が意志を持ち実体を持つ精霊となる魔術じゃ」


 説明を始めるなり、赤いフレームの眼鏡を付けて黒板に図をかいていくキリア。

 その絵は大分、拙い。


「ここまでで質問のあるものは? クリス、なんじゃ」


「えと、何でキリア師匠の絵はそんなに汚ブッ────」


 クリスと呼ばれた青年の言葉が出しきられる前に、何らかの方法によって彼は気絶させられた。

 皆の頬がぴくぴくと引きつる。


「ここまでで質問のあるものは?」


 再び質問、今回は挙手をする者は居ない。ここの生徒はみな良い子たちのようだ。


「では次じゃ、精霊と同化すると言う事は、口では簡単に言えても実行するのは生半可なモノではない。意志を持たぬ最下位の精霊ならばまだしも、意志を持つ上位精霊では霊格の低い我々の方が精神を乗っ取られるからじゃ。

 そこで今回の我々には、それが起きないように前準備がしてあった。なんじゃと思う?」


 一息に出された言葉と質問。

 気絶している筈のクリス青年が一言。


「……主従、契約」


 それだけ言うと、クリス青年は泡を吹いて机に突っ伏した。

 今度こそクリス青年は力尽きただろう。


「その通りじゃ、クリス。主もやろうと思えばできるではないか。今回の成績は上げてやろう。

 さぁ皆の者、今のクリスの言葉で解ったと思うが、この魔術において術者が精霊と主従契約をする事は絶対となる。この点においては、我とリヤンは百年単位での長い主従の契約期間が有るため難なく条件はクリアしておるのじゃ。

 精霊化(エレメンタル)の魔術の概要は解ったかの? この魔術には、まだ応用として部分精霊化、物質精霊化と言ったモノもあるのじゃが、今回の授業はここまでじゃ」


 きりーつ、れーい。

 

 ありがとうございましたー。



 ~ ~ ~ ~ ~ ~



 いかがでしたでしょうか、今回は本文が大体真面目な感じなんであとがきでこんな企画をやってみました。

 またやるかも知れませんし、やらないかもしれません(適当で済みません


 ではでは、またの機会にノシ


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