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Ep18;辺境の村のお姉さん【VS妖】

 フフフ、色々と間違っている気はしますが、投稿(*^_^*)

 テスト? 何それ、おいしいの? 


 な感じの今日この頃。


 まぁ、そんな私は置いといて、バトルバトルなEP18をどうぞ(^-^)




 ミノリスの村には、一般人は立ち入り禁止の危険区域が三つある。

 一つは海辺の洞窟。もう一つは古に造られたと言う小さな幽霊屋敷。最後の一つは、死碑(しひ)の森と呼ばれるこの森だ。


 一歩踏み入れば其処はもう魔獣(ケモノ)の巣。

 魔物と魔獣との区別は、基本的にはそこにずっと住んでいるのが魔獣。魔力さえあればどこにでも出現するのが魔物、と言ったところだ。

 ここはそこに住みつく魔獣の巣なのだ。特に居るのは猪や鹿などの獣、その中でも水や土の属性を纏ったもの達が多い、魔獣の巣としては比較的レベルの低い物でありここのものにならば、致命傷になるような傷を負わせることのできる存在は居ない筈だった。


 そう、────筈だったのだ。


「何で、何であんな化け物が……」


 息も絶え絶えに、一人の女性が木の上で深く刻まれた傷の治療を行っている。

 その傷は明らかに、刃物で切り裂かれる事によりできた裂傷。右肩から左わき腹にかけて大きく切り裂かれているその状態は、むしろ生きている事の方が不思議な程だ。


「あの子の、あの子の為にも私は死ねないんだ」


 女性、ミリィ・ミェーチェは頑なに死を拒み、命からがら逃げてきた。突然現れた獣と武器の混じり合ったような化け物から。

 今の所ミリィはこの小高い木の上で身体を治してはいるが、いつあの化け物が血の匂いを嗅ぎつけてやってくるかも解らない今の状況では、精神的にも肉体的にも殆ど休めているとは言えない。

 要するに、彼女は今極限状態なのだ。


「ギルドへの連絡はしたし。後は、アイツから逃げ切れれば……」


 極限状態だからとはいえ、思考が止まる訳ではない。と言うよりもむしろ、今止める訳にはいかないのだ。

 止めれば確実に、次の瞬間ミリィの息の根が止まる。


 そう、思考して思考して、生き延びる術を探さなくては。


 ────ヒュン、ヒュンヒュンヒュン


 風の、流れる音がして、


「嘘……!! 何でアイツが────」


 彼女の意識は断裂した。



 ◆ ◇ ◆



 空間転移で、アキラは死碑の森へと降り立った。

 身につけている物は未だ変わらず、緋色の外套のまま。


「なんだ、この感覚」


 空間が丸ごと自分を押し潰そうとしているかのような、異常な圧力がアキラにかかる。

 それは以前にも浴びた事のあるもの。剣気とも、魔力とも違う禍々しく澱んだ怨念。

 アキラはその感覚に眉を(ひそ)めて、何かに気付いたように呟いた。


「そうか、これはアイツらの気配だ。あの時は必死だったから解らなかったんだ」


 そう、それは憎きモノの気配。

 今を生きる人間としての、嫌悪感。

 悪しきそれへの憎悪が、ふつふつとわき上がる。


「俺が、刈り取ってやるよ」


 言って、アキラは索敵の為に煙状の黒焔を周囲にまき散らす。

 悪しきソレの気配は異常、数個の魔獣の気配を無視して、憎むべき物を探し出す。

 アキラの脳裏からは、もう既にあの子供の姉の事など消え失せている。


 何処までも、何処までも手を伸ばす。

 己が獲物を探し出すまで、嗅覚を、触覚を、聴覚を、視覚を、五つの感覚の内の四つを動員した最高の網で、求める。

 その姿は、どちらがケモノか解らない程に、野生の本能が剥き出しになっている。


「そこか」


 少し遠いが、それくらいは空間転移でどうにかなる。

 瞬時に術式を起動して、標的に己が銃口を向けて、撃鉄を上げる。




 吹きすさぶ突風、鎌の手を持つ人間と同じ大きさの化け物は、唯一この森に侵入してきた柔らかい肉塊を生きたまま捕食する筈だった。

 突如出現した緋色の硬い肉塊に邪魔されなければ。

 緋色のそれに、鎌の化け物は慨視感を感じる。見た、と言うよりは知っていると言った方が適切な程にその記憶はあいまいになっているのだが。


「よぉ、元気かクソ野郎。そんでもって、‘燃え尽きろ’」


 吐き出されるは、汚い言葉。その言葉が孕むのは、完全な敵意。圧倒的な憎悪を以って、その男────アキラは言霊を発した。

 その化け物には理解する事は不可能だが、感覚的に察知する事くらいは出来る。

 言霊は悪意を持って、鎌の化け物の身を焼く黒い焔に移り替わる。


『GIAAA!!』


 苦しみに叫ぶ獣は、瞬時に身体全体に風を纏ってその焔をかき消そうとする。

 本来ならば、それにより火は消える。だが、今回は消え無かった。アキラはそんな事は関係ないとばかりに、言霊を飛ばし続ける。


「燃えろ、燃えろ、燃えろ!!!

 ─────燃え尽きろ────!!」


 彼はその力を理解しない、重ね掛けした言霊により、激しい頭痛にみまわれながらも更に言葉を紡ぎ続ける。

 優しげなその顔を、憤怒の想いに染め上げて。


「‘燃え尽きろ’鎌鼬カマイタチがぁぁあ!!」


 彼が焼き払うのは、日本妖怪鎌鼬。

 本来の力である風の刃を使う事も出来ず、彼の獣は漆黒の焔に喰い尽くされる。

 まるでアキラがその身を喰いちぎられた時の焼き増しをするようにして、存在が消し去られていく。そこに居ると言う事実が、生きていると言う現実が、絶対的な死の権化たる辻のアヤカシが、憤怒の焔にかき消されていく。


 アキラの放つ怒声により、切り裂かれた木とともに地に伏していたミリィは目を覚ました。

 朦朧とするその瞳は、燃え上がる黒焔を確かにとらえた。


「……綺麗」


 気を失っていた事も忘れるほどに、その焔は清らかだった。

 漆黒の焔が、悪しき塊を焼き祓う。

 絶叫の後、未だ炎熱の手を緩めない少年────アキラにミリィは安心を憶えた。


 轟々と燃え盛る黒焔は、やがてその火の手を緩めていく。

 少しづつ消えていく美しき火に、ミリィは目を奪われる。


 本来、黒とは禍々しきものであると言うのに、あの焔はどこか温かい気配がする。

 全身が包まれていく感覚。

 それはまさに、母に抱かれていたあの幼き頃のような心地良さ。


「何、アレ……」


 消えゆく漆黒の中に、何かが見える。

 アキラはそれに近づき、柄らしき物に手を添える。


 ────ピローン♪


 それをアキラが握った瞬間に、周囲に小さな音がする。

 場違いな音に、ミリィは疑問を浮かべるが、それは些細な事。


処刑鎌(デスサイズ)……!!」

 

 アキラの持つ何かの形が、日光により露わになる。

 ミリィの目に、大地より引き抜かれた強大な翡翠色の大鎌が、しっかりと映った。



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