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Ep10;愛憎の言霊



「ハァァァアアア!!」

「オォォオオオ!!」


 周囲の空気を巻き込みながら風を切る鉄の塊、そしてそれを受けるもう一つの鉄の塊。触れあう瞬間には、甲高い金属音。

 渾身の力を以って振りぬかれる戦斧ハルバートを、俺はその両手で持ったドデカイ大剣クレイモアで受ける。やっぱし、アイリさんの怪力は半端じゃない。数回受けただけなのに、腕がしびれてきている。


 異界に来てからもう一週間がたった。

 俺は、王宮の中に有る修練場で毎日の手合わせを行っていた。お相手はアイリさんだ。いつぞやの試合から、ずっとこれが続いている。彼女にも公務が有るだろうに、大丈夫なのだろうか?

 なんて事を考える余裕を彼女が与えてくれるはずもなく、今は全力で稽古を付けてもらっている。彼女の得物は、いつぞやの戦斧ハルバート。俺はと言うと、先日行ったギルドのクエストで多少稼いできたので、自腹で買ってみた刀身が二メートル程の大剣クレイモアを使ってみたりしている。いや、毎日素振りもしてるし、少しは使えるかなーって思って、ね。


 結果は歴然、完全に俺が押されている。これは稽古だし、俺の能力と、魔術は使わない事にしている。使うと稽古と言うより、死合いになりそうだし……。


「体さばきが甘い! それでは衝撃を殺せないだろう! 何故双剣で出来る事が大剣で出来ない!」

「ハイ!」


 気付けば、彼女と俺は完全に師弟関係だ。そんでもってこの、稽古中はどSだ。女王様だ。王様は二人で高め合え、って言ってこの稽古を許可してくれたけど、これじゃあ彼女の稽古になっているのかどうか……

あるじはこの時だけは、完全にあ奴に頭が上がらんの』

 俺の思考に割り込んでくるサラに、『そうだな』と心の中で返事をして、これが最後のチャンスだと言うように、大きな隙を作ったアイリさんに対し俺は大きく横なぎの一閃を放つ。


「これで……! どうだぁぁぁあああ……!!」


 振り切った一閃は、ここでの最初の試合に比べれは、かなりの速さで彼女に迫る。

 その瞬間、耳をつんざく程の超高音が修練場を包み込む。

 俺の手には手ごたえが無く、そればかりか得物である大剣さえもその手には無い。

 何故か、それは手甲をした彼女の右腕の裏拳で、完全にたたき落とされていたからだ。どれだけの反射神経センス、どれだけの怪力パワーだってんだ。規格外にも程がある。


 その後、彼女は稽古は終了だ。とばかりに、パンパンと手をたたき一言。


「今日の稽古は、これで終わりです。きちんと身体を休めて下さいね」


 笑顔で言うその顔は、パァァという擬音がつきそうなほどに輝いている。まるで向日葵ひまわりである。


「あっ、あと、神官たちが貴方にあとで召喚場に来て欲しいと言っていましたよ。ナギル神がどうとか……、ヨウカイがどうとか言っていましたが、ヨウカイって何なんでしょうね……」

「解った、少し休んでから行くよ」


 ここは基本的な宗教に、キリスト教みたいなものが有り、そこに自然崇拝みたいな感じが混じっている、なんとか教ってのが有るらしく。

 その宗教ではは異世界にも神がいる、と言う認識があるらしい。俺が聖騎士であるアイリさんに「異端」として切りかかられたりしないのは、そこら辺が関係してるらしい。


 まぁ、大体はサラとリンによる入れ知恵だがな。


 俺はアイリさんに返事をして、その場にごろんと寝っ転がる。

 今は朝の七時程。さっきまでの稽古は、朝稽古だったと言う事だ。


 俺は熱くなった身体を冷やすために、着こんでいた赤い外套を脱ぐ。

 これにはサラが宿っていただけでなく、衝撃吸収、耐刃性、耐火性にと万能機能が施されていた。シルさんアンタ気前良すぎっ!! 有りがたいわ~。

 そんな事は今の所関係なく、考えるべきは神官たちの事。


 神官と言うと、俺は初日の嫌な思い出が浮かんでくるのだが、それは考えない事にしよう。


 和ぎる神、妖怪、そのワードにここに来る前のことが思い出される。結局、背後を取られてから何かでやり返す事も出来なかった神を名乗る変な奴。

 俺と真夕美に襲いかかってきた火や風を纏う妖怪達。あいつ等の事が、何故今俺の耳に入ってくるのだろうか。

 そんな事に想いを馳せていると、アイリさんが俺に話しかけてきた。


「アキラ殿、その、もしよかったらなのですが、用事が終わったらで良いので、またここに来ていただけないでしょうか?」

「へ……?」


 それは、どう言う意味だ? もしや俺がふがいないから、もう一回稽古とか? 貴女、オニデスカ?

 マイナス方向に考えていると、サラとリンが俺に一言『鈍感』と言ってきた。何、どゆこと?


あるじ、ハイ、と言うのじゃ』

『そうですよ、それ以外の発言は、私達が許しません……!』

「……ハイ」


 なして、貴女達は怒っているのですか?

 なんと言うか、般若面が二つ見えるんですけど。


 汗を垂らしながら俺が言うと、アイリさんは嬉しそうにこう言った。


「ありがとうございます! 私、待ってますね!」


 何だろう、この喜々とした空気は……、俺、この空気経験したことが有る気が……

 

『『フンッ……』』


 そして二人の精霊は、何故か怒っているのでした。


「訳が解らん……」






 数十分して、召喚場の前。

 俺は十分に身体を休めて、決意のもとにここに居る。


 叩きつけられるのは、希望か絶望か、俺に渡される情報は、一体どんなものなのだろうか。

 覚悟のもと、召喚場の扉を叩く。

 その時、聞こえてきたのは、聞き覚えのある声だった。


『おっ、噂の彼のお出ましかな☆』


 憎たらしい猫なで声。

 そこには見覚えのある少女が一人と、白装束の男が一人、堂々と立っていた。









 再登場!

 次回、気になるあの人の姿が解ります(*^^)v


 ではでは、また次回。ノシ

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