中継
「その代わり、働いてもらう」
軽い調子だが拒否は許されない響き。
男は顎で装置を指した。
「こいつは“節点”だ。地下に張り巡らされた刻印網の中継点にすぎない」
短く言い切る。
「さっきお前がやったのは――死んでいた回路の再接続だ」
ハディの手元で、光が一定のリズムで脈打つ。
男は続ける。
「今、起動したのは一部の経路だけだ。水路と外周防壁の監視線……それと、深部への道が開く」
言葉と同時に、装置の奥で低い振動が強まる。
ゴン、と重い音。
どこか遠くで何かが噛み合う。
男が一歩近づく。
「合図が飛んだな」
口調が少しだけ低くなる。
「他の連中にもバレただろう」
短く舌打ち。
「時間がねえ」
手早く腰の道具を外し、床の石板を蹴る。
隠し扉がわずかに開く。
「下に行くぞ。主回路に繋がるルートだ」
振り返る。
視線は真っ直ぐハディへ。
「お前がいれば開く」
確信を持っている様子だ。
ハディの首飾りが強く震える。
装置の光と共鳴し、見えない線が階下へ伸びる。
進むべき道が、はっきりと分かる。
男が先に降りる。
「来い。途中で止めるなよ。お互いに損だ」
足音が遠ざかる。
代わりに重く、規則的な振動。
生きているような音。
ハディは一瞬だけ装置に触れ、流れを整える。
脈動が安定する。
それを確認して、梯子へ足をかけた。
地下はさらに深い。
そして、何かがすでに――動き出している。




