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刻印都市

朝の光が酒場の隙間から差し込んでいた。


古びた酒場――いや、今は

ラドネス裏ギルド支部の拠点。


床の石板の下で鳴った音は、その後すぐ止まった。


誰も慌てない。


代わりに、全員が一度ハディを見る。


「……やっぱりか」


カイレンが小さくつぶやいた。


黒髪の女が椅子を引き、机の上に地図を広げる。


「説明しとくか」


彼女は言った。


「この街はちょっと普通じゃないぐらい古い歴史がある」


ハディは黙って立っている。


女は自分の大きな胸を軽く叩いた。


「私はネリア。ここの支部のまとめ役」


そして周りを指す。


「人数は少ないけど、一応『例の』ギルドの支部だ。あんたの上のアホの同僚だね」


机の周りには五人ほど。


武器を手入れしている男。

書類を書いている青年。

壁に寄りかかっている弓使い。


ネリアは地図を叩く。


「まずラドネスの話」


机の地図は街の構造だった。


中央に城。

その周りに城下町。


だが、もう一枚の紙がある。


地下の図。


カイレンが説明を引き取る。


「この街の下には、古い刻印回路がある」


ハディは顔を上げた。


カイレンは続ける。


「かなり昔の都市刻印だ」


ネリアが指で線をなぞる。


「水路」


別の線。


「防壁」


さらに円。


「街の基礎」


刻印は単なる能力ではない。


構造物にも使われる。


ラドネスはその典型だった。


ネリアが言う。


「問題はこれ」


地図の一部を叩く。


「壊れた部分は修復できなくてね

 大部分はもう動いてない」


だが。


カイレンが床を指す。


「一部だけ生きてる」


奥の男が口を挟む。


「そして、たまに暴れる」


ネリアは腕を組む。


「さっきの音もそれさ」


ハディの首飾りが、わずかに震えた。


ネリアの目が細くなる。


「……やっぱり反応してる?」


カイレンはうなずく。


「昨日からだ」


ネリアは椅子にもたれる。


「なるほどね」


そして笑った。


「だからラグスが送ってきたのか」


机の上の紙を叩く。


そこには短い文が書かれていた。


使え。

面白い物が見えるはずだ。


署名。


ラグス


ネリアは肩をすくめる。


「相変わらず説明不足」


奥の弓使いが笑う。


カイレンがハディを見る。


「もう一つ説明しておく」


彼は静かに言った。


「この街の地下刻印は、いくつかの連中がずっと狙ってる」


指を三本立てる。


「商人」


一本折る。


「修道院の連中」


もう一本。


「領主と貴族の一部」


最後の一本。


ネリアが付け足す。


「つまり、奪い合い」


奥の男が言う。


「うちは守る側」


カイレンが言う。


「正確には

 壊れないように見張る」


ネリアはハディを見る。


「で」


机を指で叩く。


「ここからが本題。

 地下刻印は普通の人間には見えない。

 刻印使いでも、ほとんどは無理」


カイレンが静かに言う。


「だが、古代刻印に適応した連中は別だ。

 お前は一部が見えているはずだ」


ハディは何も言わない。


ネリアは笑う。


「だから助っ人」


机を叩く。


「地下を調べる。

 刻印の暴走を止める

 ついでに中枢の情報とお宝、『刻まれた』装備も大量にあるだろう」


「それが今の仕事」


そして少し考えてから言う。


「ついでに、狙ってる連中も追い払う」


奥の男が笑った。


「つまり面倒全部だな」


ネリアは肩をすくめる。


「人手がないからね」


その時だった。


床の下で――


また音。


ゴン


今度は少し強い。


ハディの刻印が一瞬だけ光る。


ネリアがゆっくり立ち上がった。


「……ちょうどいい」


カイレンが剣を取る。


「説明は終わりだ」


ネリアが床の石板を足で叩いた。


「地下の入口はここ」


そしてハディを見る。


「助っ人」


にやりと笑う。


「まずは見せてもらおうか」


「何が見えるのかを」

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