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仲間


夜が明けきらないラドネスの街は、まだ薄い霧に包まれていた。


昨夜の広場の出来事は、表の街では何も起きなかったことになっている。

捕まった男たちは消え、血の跡も洗われ、石畳は静かだった。


ハディは黙って歩いていた。


その前をカイレンが歩く。


城下町の中心から少し外れた古い地区だ。

建物は石造りだが、どこか荒れている。


倉庫。

古い商館。

半分閉まった店。


カイレンが言う。


「ここだ」


指したのは、看板の外れた酒場だった。


入口の扉は歪み、窓は板で塞がれている。

どう見ても営業している店ではない。


カイレンは何も言わず扉を押す。


ギィ、と鈍い音。


中は暗い。


酒場の形はしているが、客席は片付けられ、代わりに机と棚が並んでいた。

地図。

書類。

武器。


奥で数人が顔を上げる。


一人が眉を上げた。


「戻ったか」


女だった。


短く切った黒髪とそばかす。

煽情的な服装。

よく日に焼けている。

腕を組み、壁にもたれている。


「で?」


女はハディを見る。


「それが例の助っ人?」


カイレンはうなずく。


「そうだ」


女は近づいてきた。


ハディを上から下まで眺める。


「……子供じゃない」


カイレンは肩をすくめる。


「送ってきたのはあいつだ」


女の表情が少し変わる。


「あいつ?」


カイレンは懐から紙を出した。


封はもう開いている。


女はそれを受け取り、ざっと目を通した。


そしてため息をつく。


「なるほどね」


紙の端に書かれていた名前は――


ラグス。


女はハディを見た。


「事情は聞いてる?」


ハディは首を横に振る。


女はしばらく黙った。

それから笑う。


「聞いてないのか」


カイレンが言う。


「いつものことだ」


奥の机から別の男が声をかける。


「ラグスのやり方だな

 使えそうなのは、まず放り込む」


女は肩をすくめた。


「まあいい

 ここはラドネス裏ギルドの支部だ」


机を軽く叩く。


「人手不足」


棚を指す。


「問題山積み。うまくいってる場所じゃない」


最後にハディを指す。


「だから、今日から働いてもらう」


ハディは黙って立っている。


女はニヤリと笑った。


「心配しなくていい

 昨日の件より危ない仕事は、たぶんない」


その時だった。


奥の壁の向こうから――


ゴン


鈍い音。


誰かが振り向く。


また音がする。


ゴン。


床の下からだった。


カイレンの眉が動く。


「……またか」


女が舌打ちする。


「昨日は止まってたはずだろ」


奥の男が言う。


「地下だ」


ハディの首飾りが、わずかに震えた。


誰にも見えない小さな光が、刻印の奥で揺れる。


ハディはゆっくり床を見る。


石板の下。


その奥で――


何かの気配が動いていた。

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