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第44話 光明

夜が明けきらない霧の中、焼け跡はまだ息をしていた。


煙の匂い。

濡れた灰。

崩れた壁の隙間から、赤い火種が瞬いている。


年少組は、少し足りない。


誰も喋らなかった。


笑い声も、軽口もない。

顔は硬く、視線は地面に落ちている。


俺は焼け焦げた路地を見渡す。

刻印は静まり、身体は鉛みたいに重かった。


ラグスが倒れた死体を一つ蹴り返した。


ごろつきではない。兵士だ。

だが装備はバラバラで、統一感がない。


傭兵。

それも、捨て駒。


「……やっぱりな」


低く呟く。


「戦争の前線じゃねえ。掃除だ。

 後ろをかき回されるのを恐れているんだろうよ」


誰かが息を呑んだ。


「街を削ってる。

 邪魔な層から、順番にな」


燃えた家。

閉じられた出口。

誘導された逃走路。


全部、整理だ。


「盗賊ギルドも、その中に入った」


ラグスの目が細くなる。


「俺らは“消していい側”に回された」


その瞬間、霧の向こうで角笛が鳴った。


遠い。

だが、はっきり戦場の音だ。


敵軍が近い。


難民を押し出し、魔物を誘導し、

混乱した街を削りながら前へ進む。


その裏で――

邪魔な組織を潰す。


俺たちは、その途中に置かれただけだった。


ラグスが振り返る。


「これから厳しくなるぜ」


声は静かだが、逃げ道はなかった。


「もう“仕事”じゃねえ。生存戦争だ」


誰も反論しない。


霧の中で、街がきしむ音がした。


ヴェシュタは、戦場になる。


そして俺たちは――


生き残っただけでは、もう足りない。

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