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第24話 手を伸ばす者たち
決断は、どちらも静かだった。
貴族の屋敷で、執事は帳簿を閉じる。
炊き出しの報告の端に、短い注記があった。
特筆すべき問題はない。
混乱も、騒ぎも起きていない。
それでも、その少年の名前――いや、番号だけが、視線に引っかかる。
理由を言葉にする必要はなかった。
危険ではない。
だが、偶然とも言い切れない。
「次は、近くで見よう」
護衛は一瞬だけ眉を動かし、頷いた。
保護でも監視でもない。
ただ、距離を詰めるという判断だ。
一方、町の裏側。
盗賊ギルドでは、紙が一枚、机の中央に置かれていた。
特別な内容は書かれていない。
それでも、扱いが変わったことだけは全員が理解している。
放置するには、安定しすぎている。
消すには、理由が薄い。
「近づけ」
それが結論だった。
脅すな。
囲うな。
名を名乗るな。
ただ、気づかせろ。
――“一人ではない”と。
両者の判断は、互いを知らない。
だが、向かう先は同じだった。
路地裏にいる、名もなき少年。
彼はまだ知らない。
自分が守られる側でも、狩られる側でもなく、
選ばれる側になったことを。
町は変わらない。
空腹も、夜も、刻印も。
ただ、次に伸びてくる手は、
これまでとは意味が違っていた。




