第23話 重なっていく刻印
拾ってきたガラクタを、路地の隅に並べる。
最初は、指で数えられる程度だった。
欠けたバックル。
歪んだ留め金。
意味のわからない模様が刻まれた金属片。
だが、今は違う。
布切れの上に広げると、自然と両端まで埋まる。
錆びた針金の束。
割れた留め具。
装飾だけが剥がれ落ちた金属板。
用途のわからない小さな輪。
誰かが壊して捨てた装備の破片。
同じ場所に落ちていたものは一つもない。
別の路地。
別の裏通り。
別の日の朝。
別の日の夜。
拾っては持ち帰り、
拾っては増やした。
数日分の時間が、そのまま床の上に並んでいる。
どれも金にはならない。
売れば笑われるか、殴られるだけのガラクタだ。
それでも、捨てられなかった。
触れるたびに、頭の奥が微かにざわつく。
首飾り。
指輪。
そして、意味を持たない刻印たち。
一つ一つは無意味だ。
単体では、何の力も持たない。
――だが。
組み合わせた瞬間、わかる。
これは繋がらない。
これは拒絶される。
これは、今の俺には合わない。
そして――これは、はまる。
頭の奥に、ぼんやりとした感覚が生まれる。
文字でも図形でもない。
意味だけの「構造」が浮かぶ。
その瞬間、はっきり理解した。
刻印は、読める。
言語じゃない。
記号でもない。
でも、関係性として理解できる。
それは成果だった。
初めての、はっきりした進歩だった。
数日前の俺にはなかった感覚。
拾うだけの存在から、
「選べる存在」へ変わった証拠。
気づけば、物の配置や、
捨てられ方の規則性まで目に入るようになっていた。
刻印を集めているのか、
刻印に導かれているのか、
もう区別はつかない。
ただ一つ確かなのは――
昨日より、今日のほうが、
俺は確実に生き延びやすくなっているということだった。




