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第11話 それでも今は腹が減っている
どこかでわかっていた。
こんな暮らしが長く続けられるはずはない。
盗み、逃げ、隠れ、飢え、寒さに震えながら夜を越す日々。
誰かに捕まれば終わりだ。
いや、捕まらなくても、ある日力尽きて倒れるだけかもしれない。
少年は、その結論を心のどこかで丁寧に丸め、奥底へ押し込めていた。
――考えたって変わらない。
――悩んだって腹はふくれない。
そう思っていた。
いや、そう思い込むしかなかった。
胸の奥が小さく重くなり、ため息とも吐息ともつかないものが漏れる。
「……でも」
ぐう、と腹が鳴った。
現実はとても分かりやすく、そしてとても残酷だった。
生きるには食べなければならない。
食べるには奪うしかなかった。
明日の計画など立てられない。
来週の姿など想像もできない。
一年後? 笑ってしまう。
それでも今日の、いや今の飢えは誤魔化せない。
少年は立ち上がる。
薄汚れたマントの裾を払い、心を決めるわけでもなく、ためらうわけでもなく――ただ、足が勝手に動く。
まず、食い物だ。
その一歩は小さく弱々しい。
けれど確実に、また盗みへと向かっていた。




