命の尊さ
血を克服できないまま、ルドは何と向き合うのかを考える日々を送る中、リランの手伝いをすることに。果たして、ルドは血を克服出来るのか?
ルドは部屋で先生から課題や家庭教師による、部屋での授業、合間に精神統一をしたり、自分のしたことを反省する日々を過ごしていた。
「ルド、あんまりご飯食べてないみたいよ」
マレンがオッターに報告すると、椅子に座りながらため息を漏らす。
「感情のコントロールが、あいつには難しい課題なんだうな。血がトリガーになると、任務にも出せない…」
机に肘を置いて指を組むと、難しい顔でオッターは考えていた。コンコンと、執務の扉を叩く音がし、中に入って来たのがリランだった。
「報告に来たよ。シュプリは怪我はなし、精神的ショックだけですんだのと、ノワールは肋が数本折れて、暫くうちで、診るよ」
「そうか…」
「暫く僕に、ルド様を預けてくれないかな?」
「自室で謹慎中だ。許可はできない」
「でも、根本的な答えがなくて悩んでるんでしょ?なら、僕の治療方法や、怪我人の補佐を手伝わせながら、血の克服としては、役に立つと思うけどな」
マレンが紅茶を入れたカップをソーサーに置くと、リランが、ソファーに座り魔法を使うと、ミルクと砂糖が宙を舞い、カップの中に落ちてティースプーンが、クルクルと回る。
「どうする?」
「ルドを任せていいか?」
「そうこなくっちゃ、さて忙しくなるぞ」
「あの…師匠笑い方が、怖い…」
「んっ?マレン居たの?」
カップに口をつけて、淹れたての紅茶を飲むリランに、オッターの方を見て大丈夫なのかと、視線を送ったがオッターが小さく首を横に振った。
「さて、善は急げ。王のお部屋に向かいますよ、マレン」
マレンを連れて、ルドの部屋に向かい謹慎中の間、リランの治療の手伝いをすることになり、マレンが一通りの説明をルドに話した。
「さあ、今日からここで怪我人の治療を手伝ってもらうからね。ルド君って呼ばせてね」
レインが、救護室、入院室、処置室、薬剤室、仮眠室、そして最後の部屋の扉が開かれた。
「ここはね、重篤な患者の部屋なんだ」
レインが扉を開けると、薬の匂い、口元に何か付けてる機械音、全身包帯だらけで血が滲んで呻き声をあげながら幾つもの、管がつけられている患者がベッドで横たわっていた。
「ルド君には、そうだな…この患者の手伝いをしてもらうから」
レインが振り返ると、ルドの顔色は既に真っ青に変わり体が小刻みに震えていた。
「た、助けて…」
患者の1人がルドの手に触れた瞬間、ルドは外に飛び出すと、外に置いていたゴミ箱の中に顔を突っ込んで吐く姿にマレンが追いかけると、ルドの背中をさすっていた。
「ルド君、吐いてる暇はないよー。患者も命懸けで戦ってるからね」
リランが小さくルドに笑うと、マレンが立ち上がるとリランに口を挟んだ。
「師匠、ルドにはこの患者の手伝いは、無理があります」
「マレン、誰に口を聞いてるの?」
リランがマレンに笑顔を向けているが、冷たい空気が廊下を包むとマレンは押し黙った。ルドが立ち上がりふらつく足で、マレンの肩を掴むとリランに答えた。
「俺、やります…やらせてください」
「さずか、ルド君!これくらいで根をあげるほどの精神力ならオッターの修行の意味がないもんね」
ロープの袖を口元に当てて笑うリラン。マレンと一緒に行動してね言うと、廊下を後にした。
「顔色悪い癖に、無理して」
マレンが、ルドの額の汗をハンカチで拭いた。
「やらなきゃ、俺はまた…」
拳を握る手がルドの、気持ちが滲み出ていてマレンがため息を漏らした。
「初めっから上手く出来るとは思わないこと。無理と思ったらその場から離れて、外の空気を吸うこと。患者に不安を与えるようなことはしないことを、約束して」
マレンが、白衣を手にルドに差し出すと白衣を受け取ったルドが頷いた。それから数日、ルドは患者と向き合う日が続いたが、やはり血や呻き声を聞くと体が硬直し、嘔吐をしたり暴走まではいかずとも血を見て体から、異常な程の闘気が漏れ出しては、治療の手伝いを中断していた。
「水よ。飲める?」
「ありがとう…」
外のベンチに座って風がルドの頬を通り過ぎる。コップを覗き込むように、ルドは遠くを見つめた。
「やっぱ、俺の弱点って血と患者たちの痛みの声なんだ…その声を聞くと、体が固まって自分じゃ抑えきれない感情が溢れ出してしまう…」
弱音をマレンに吐き出すと、そっとルドの手に触れた。
「誰だって、怖いこと、苦手なこと、出来ないこと、逃げ出したいことは山ほどあるわ。私だって治療魔法の修行で、師匠の治療の手伝いに幾度、床に転がる死体の山、血まみれの患者の悲痛な叫びを聞いて、何度飛び出したか…」
マレンの言葉に、ルドが顔をゆっくりと上げた。
「けど、命の重さに私たちの心情は切り捨てない限り救える命も少なくなる。目の前の患者の声を聞きなさいって師匠に言われの。それから、自分なりに患者と向き合うようになって、今でも怖いし逃げ出したくなる時もあるわ。けど、逃げた所で患者は生きるか死ぬかしかないの…」
マレンの言葉に、ルドがマレンの手を握り返しベンチから立ち上がるとコップの中の水を一気に飲み干した。
「すぐには、慣れないけど、マレンみたいに、患者の声を聞いて向き合ってみるから…マレン一緒に手伝ってくれる?」
「ええ、いいわよ。けど、やるからには厳しくいくからね」
「何か、オッターみたいな言い方」
「違いないわ」
二人が顔見合せて笑う姿を執務室の窓の外から見下ろしてみていたリランとオッター。もう心配することもないなと、2人を見守るように見ていたのでした。
一気に寒さが厳しくなり、布団から出たくない朝が来ました。さてさて、お話も21話となりましたが、次回もお楽しみに!ブックマーク登録、☆高評価、スタンプ評価など読者様からの応援よろしくお願いします!




