家族と呼ばれた日
昨日の今日でまだ、ルドの気持ちは複雑に動いていた。そんな中、いぬ族のノワールに喧嘩を吹っかけられてしまい食堂が騒然とする。
ルドは翌朝、目が覚めて部屋を見渡していると、扉の開く音がした。
「あら、早いのね」
黙ったままのルドにマリンが、お湯の入った桶とタオルを、テーブルの上に置いた。
「この桶で顔を洗って、タオルはこれ使って。着替えは、クローゼットに入ってるわ。食堂は廊下を出て2つ目の部屋よ」
一通りルドに説明をすると、マレンが部屋から出て行った。言われた通りに顔を洗って着替えを済ませると、ルドは朝ごはんを食べるため食堂へと向かった。
「ルドの席は、私の隣よ」
マレンがルドの分の朝ごはんがのったトレーを渡すと、指をさして席に案内をした。ルドが椅子に座ると他の獣人族たちがチラチラとルドを見ていた。
「飯食ったら、鍛錬だぞ!分かったな!」
オッターの声に皆が返事をすると、黒パンと肉入りの野菜スープ、貴重な牛のミルクの飲み物を交互にルドが黙々と食べていた。
「おい、お前!」
ルドがパンをちぎって口に入れようとした時、目の前に座っていたいぬ族のノワールに、声をかけられた。
「俺?」
「そうだよ!てめぇしかいねーだろが!」
口悪く突っかかってくるノワールに、ルドは気にせずミルクを飲んでいると、その態度にイラついたのか、ルドの首襟を掴んだ。
「王の血かなんだか知らねーけど、自分のこともまともに出来ずに、マレンの世話になりやがって何様だてめぇは!」
ノワールは、奥歯をギリっと噛み締めると、ルドが冷めた目で見ていた。
「世話にはなっている。それが、悪いことなのか?」
ルドの冷めきった答えを聞いてノワールが、怒りませにルドの頬を一発殴るとガシャンと食器の割れる音が食堂に響いた。
「ノワール!いい加減に…」
マレンが止めようと椅子から立ち上がった瞬間、二人の間にオッターが割って入って、すかさず拳を振り落とした。ノワールとルドの頭上目掛けて拳骨を落とすと、あまりの痛さに、二人とも頭を押さえている。
「ってえな!オッターふざけんなよ!」
ノワールが吠え散らかすと、オッターがすかさず睨みをきかせると、周りの獣人族の仲間が小さく悲鳴をあげた。
「朝っぱらから、喧嘩ふっかけたお前が悪いだろうが!ノワールそんなに元気がありやまってるなら、明日の朝まで休みなく走ってくるか?」
「だってよ…俺はこいつがマレンに…」
ぶつぶつと、声が小さくなるノワールにため息を漏らすとルドが立ち上がり、食堂を後にしようとしていた。
「ルド、答え方一つで相手が逆上しかねないんだ。口の利き方には、次からは気をつけろ、分かったか?」
後ろを振り返って、軽く頭を下げると黙ったままルドは自室に戻って行った。昨日まで、子供みたいに泣き喚いてたルドが、今日は嫌に棘があって反抗期か?と、オッター自分の眉間を、指でつまんで首を横に振った。
「お前らも、ルドが気に要らないって、ノワールみたいに新人いびりだけはするな!分かったか!」
皆の返事がまばらに聞こえ、食堂の床に座ったままのノワールに、オッターが後片付けが終わったら、走り込みに行けと言われて、ノワールは座ったまま喚いていた。
「ルド、入るぞ」
オッターが、部屋に入るとベッドの端に座ってぼんやり床を見ているルドに、声をかけた。
「お前はどうしたいんだ?何もしないままなのか?」
「…」
「お前の気持ちを、俺は聞いてるんだ」
オッターがしゃがむと、ルドの目線に合わせて、話を聞いた。
「俺は…」
「強くなりたい。強くなって、レイン兄さんみたいな剣士になりたい…」
ルドの瞳からぽたぽたと涙落ちるのを見て、オッターが乱暴に頭をくしゃくしゃと撫でると、ルドが驚いた顔でオッターを見上げた。
「なら、いつまでも泣きべそかいてちゃ、レインに笑われるぞ。リランの許可が降りたら、お前の剣の稽古は、俺が見てやる。やる気が、お前にあるならの話だが」
「いいの?」
「お前は、俺たちの家族だろ?」
「家族…」
「但し、レインみたいに、俺は甘くはない。鍛錬は厳しいと思って、覚悟するんだな」
ルドが慌てて、自分の濡れた頬を手で拭き取ると、オッターが笑って、ルドの部屋を後にした。リランの診察の結果、明後日から、剣の稽古に参加してもいいと言われた。リランがオッターに、くれぐれもルドに無茶させないように――と、無言の笑顔を向けられて、口ごもってるオッターの姿を見て、ルドは久しぶりに二人に笑って見せたのだった。
ルドの複雑な気持ち、自分はどうしたいかも分からず抜け殻状態の中、オッターが自分の気持ちはと問いかけるシーンを小説にしたいなと、物語にしてみました。ルドの成長をこれからも続きますが待ってていただけたら、嬉しいです!ブックマーク登録、リアクション評価など応援よろしくお願いいたします!




