城下街
こっそり魔法を使い城を抜け出したフィオーレは、城下街を歩いてる最中に、お腹を空かせた小さな少年と出会うのだった。
数日ベッドで安静にしていた、フィオーレは民の様子が気になり城の外へと、出てみたい気持ちが強くなっていた。国王が見舞いに来た次の朝、フィオーレが目を覚ますと、城の警備の気配が多くなったことが気になり侍女や、ハルウドに聞いても何も答えてはくれず、侍女たちの噂話をたまたま聞いたフィオーレ。禁書庫に誰かが侵入したと聞いて、その隙を狙って城下街に行けないかと考えていた。
「フィオーレ様、お昼寝の時間でございます」
侍女が部屋の中に入ると銀のトレーを手に持って、水差しと空のコップ、眠りをよくする包み紙に入ったお薬をフィオーレに手渡すと、飲むふりをしたフィオーレはベッドの中に入り目を閉じた。
「お昼寝から起きたら、お庭のお花を詰みに行ってもいいかしら…」
「ハルウド様にお伝えしておきます。今はお休みを」
「…おやすみなさい」
フィオーレの寝息を確認した侍女が、ソッとベッドから離れ部屋の扉を閉まると、フィオーレがパチッと目を覚まして口から薬を取り出した。
「魔法って便利だわ」
小さく笑うと、フィオーレは耳をよくすませて部屋の中や部屋の外の人の足音を聞いていた。フィオーレの耳は目の役割をしていたのだ。
「よし。今なら大丈夫そうだわ」
数日前から動きやすい服を隠してた秘密の場所から、男の子の服を引っ張り出すと、くせっ毛のある髪を後ろに結んで姿や気配を消す魔法を唱えた。
「これで、暫くは大丈夫よね」
ベッド中に、クッションを重ねてブランケットを被せてカモフラージュすると部屋の外を確認しながら扉を開けた。その足で、馬小屋に行き馬に乗って裏手の門へと急いだ。
「この時間は、門番は…いないわ」
身を隠す魔法を解いてフードを下ろすと、馬の手綱を引いて、フィオーレは小さな門から外に出た。そのまま馬を走らせ城下へと向かう中、フィオーレを追う一人の人影が着いてきてることに気付かないまま――
「おーい!そっちの、木材運ぶの手伝え!」
「今日も、街の修繕かよ」
「さあ、皆働いたら賄いだよ!」
民たちの活気ある声に、目が見えないフィオーレはその声だけで、緊迫感や争いがないことを確認すると、馬から降りて、馬の手綱を引きながらゆっくりと、城下街を歩いていた。
「よかった。復興が進んでいて」
ホッとしていると誰かに、ズボンの裾を引っ張られフィオーレは、小さな子供の手だと気付いた。
「あら、こんにちは。どうしたの?」
「あのね、あのね…」
親指を口に入れてズボンを引っ張る小さな男の子のお腹が鳴ったのが聞こえて、男の子の目線に合わせるようにしゃがんで手を差し伸べた。
「お腹が空いてるのね。近くにパン屋さんはあるかしら?」
「うん!僕、分かるよ!」
男の子の声が明るくなり、フィオーレの手を引っ張るようにパン屋さんに連れて行った。
「いらっしゃい!」
カランカランと店の扉を開くと、扉に付いた小さな鈴が鳴り、パンを陳列している女将さんが振り返ってフィオーレと男の子の薄汚い服装を見て、ギョッとしていた。
「お客さん!こんな汚い子を店に入れてもらったら、困るよ!」
怪訝そうな声に男の子が、びっくりして、ビクッと体を震わせ、フィオーレは男の子の手を握り女将さんに伝えた。
「それは、ごめんなさい。でしたら焼きたてのパンを20個ほど包んでください。私たちはお店の外で待っていますので」
「お金は、あるんだろうね」
フィオーレの姿をジロジロと見ている女将さんに笑顔を見せると、絹のロープを首からかけていたフィオーレは、小さな巾着袋を手繰り寄せ袋の中に入っていた、金貨1枚を女将さんに手渡した。
「これで足りますか?」
「今、焼きたてのパンを持っていくから、少し外で、待ってておくれ」
店の外でパンが焼けるのを待っていた。暫く待っていたがお店から出て来ない女将さんに、少年のお腹が寂しそうに泣いていた。
「少し、ここで待ってくれるかしら?」
「僕、お姉ちゃんと、離れたくない」
頭を優しく撫でてくれるフィオーレに、男の子は小さく頷いた。フィオーレが立ち上がると、店の中に入って行った。
「あのーすみません!先程、パンを買ったものなんですが…」
「ちょいと待っておくれ!もうすぐ出来るから!」
フィオーレの鼻を擽る焼きたてのパンのいい匂いがして、椅子に座って少し待ってると女将さんが、厨房から大きな袋を2つ持って店内に戻ってきた。
「パン20個、後、お釣りだよ。それとサービスで日持ちするパンもいくつか入れたからね」
「まあ、女将さんありがとうございます!」
女将さんがフィオーレの手にお釣りを手渡すと、ドサッとテーブルに紙袋の置く音が聞こえた。
「男の子のフリをしても、女の子って気付かれちまうよ。この辺の治安はまだいいが、スラムだけには絶対に、行くんじゃないよ」
「気を付けます!女将さんありがとうございます!」
カランカランと店から出ると、男の子の笑い声が聞こえて女将さんは、笑みを零した。
「神の思し召しがあらんことを…」
フィオーレが袋を男の子に手渡すと、焼きたてのふかふかのパンをとても喜んで、口に頬張る姿が、目が見えなくても、その雰囲気で感じ取っていた。
「お父様やお母様は?」
「僕のとーちゃんは、居ないよ。かーちゃんは病気で家で寝てるんだ」
「そう…なら、このパンをお母様に届けましょうか?」
「本当!?いいの?」
「ええ、他にお腹を空かせたお友達が居るなら、皆でパンを届けましょ。」
「うん!」
女将さんの忠告が、後にフィオーレの身を危険に晒すとはまだ知らないまま、スラム街へと向かうのだった。
フィオーレ編は次の1話で終わりになります(最終回ではありません。)ルドのお話に戻りますので、お楽しみにお待ちくださいm(_ _)m 作者の執筆活動の原動力となる、高評価、リアクションスタンプ、ブックマーク登録が力となっています。読者の皆様からの応援よろしくお願いします!




