王の力
あと少し、あと少しで兄さんを⋯
※ショッキングな描写が入ります。苦手な方はお読みになるのをお控えください。
「レイン兄さん!!」
焼け崩れ落ちた家からは、数日過ぎても、燻る白い煙がまだ立ち上がっていた。森の中を走り回りレインの名前を呼ぶが返事はない。当たりを探し回るが見つからなかった。何処で公開処刑があるのか分からず、ルドは当たりを探していた。
「靴跡?それも、一人や二人の数じゃない」
その後を追うようにルドが、人の国へと入って行った。
「オッター!!」
バンッと、扉を乱暴に開けるうさぎ族のマレン。会議中の部屋に慌てて入った。
「マレン、大事な会議中だぞ?」
オッターが怪訝そうな顔でマレンを見上げると、手に持っていた手紙を、チーター族のオッターに手渡した。それに目を通すとオッターが慌てた様子でガタンッと椅子から立ち上がった。
「今すぐ、イシュタルへ向かうぞ!」
その緊迫した状況に、獣人族が馬小屋へ集まると、オッターが馬に跨り、人間の国イシュタルへと向かった。人間の国に足を踏み入れたルドは、深くフードを被ると辺りを見渡すが、人の姿に、体がすくんでいた。
(こんな所で怖気ずている場合じゃない。レイン兄さんを見つけないと⋯)
ルドが街中を探していると、馬の蹄と車輪の音が聞こえ、ルドの目の前を通り過ぎようとする鉄格子の荷馬車の中に血まみれのレインが目に写ると、ルドは思わず声が出そうになった。
「獣人族だ!汚らわしい!」
「そうだ!早く処刑されてしまえ!」
道端の石を掴むと、何人もの人間がレインに向けて石を投げる姿にルドの中で怒りが蓄積されていった。
(人間は、なんで獣人族を目の敵にするんだ!!)
馬車は広い広場の前で止まり、目の前で噴水が立ち上がっていた。そして、教会の鐘が正午を告げる合図が、鳴り響くと広場の真ん中まで、人間の騎士が乱暴にレインを引きずる姿に、ルドは唇をグッと、噛み締めた。
「獣人族の生き残りを捕え、判決が決まった!この広場で、本日公開処刑を行う!獣人族の王族に関わりのある重罪人は、全て処刑に値する!我々に危害を加えると見なし、その首を切り落とした後、晒し首にする!」
「早く、打首にしろ!」
「恐ろしい顔!」
「穢れた獣人族!早く、罪を認めろ!」
ルドは両手で耳を塞いだ。騎士がレインの首を前に突き出すと、別の騎士が斧を振り上げたまま合図を待つその姿を見たルドは、人の群衆の中をかいぐぐろうとした。
「刑の執行!」
騎士の合図と協会の鐘の音が、けたたましく鳴り響き、人の歓声や怒号が飛び交う中、ルドは手を伸ばしレインの名前を叫んでいた。
「やめろ!!レイン兄さんっ!!!」
その声に気づいた、レインが俯いた顔を少し上げルドを見つけると、穏やかな笑顔を見た次の瞬間、ルドの耳に不快な音が聞こえ、景色が歪んで見えた。
『ザシュッ!!!』
首が、ゴロンとルドの足元に転がると、生暖かい嫌な風が広場を吹き抜け、人たちが何故かルドを見て、叫んでいる声が、微かに聞こえていた。ルドは膝から崩れ落ちるように、レインの首を拾い上げると、レインの顔を見たルドの心の糸が、プツリと切れる音がした。首から下げていた赤いネックレスの宝石が、ピシッとひび割れる音と、ルドの首元が赤く光ると猛烈な爆風で、人を軽々と吹き飛ばした。その赤い光が、空に立ち上がると、ルドの姿が、少年の姿はなく、紅の獅子の姿に変わり、髪色や瞳は燃えるような赤い血のように染まり、爪や牙が鋭く光っていた。ルドの瞳から、血のような涙を静かに流すと、その悲しみと怒りを吠え唸り散らすと、騎士たちが手で耳を塞いでも鼓膜が敗れるほどの遠吠えに、次々と気絶し倒れていた。
「レイン兄さんが、お前に何をしたんだ?」
逃げようとする騎士の一人の髪を鷲掴みにし質問をするが、ルドの威圧に耐えれずガタガタと震えて答えない騎士の、心の臓を貫き殺すと、次の騎士、次の騎士へと質問をした。
「やばいっす!あの赤い光は!」
探知能力の、モグラ族のタンクが、先に向かって地中の中に潜り、広場の状況を、オッターに念話で伝えると舌打ちをし後ろにいる皆に叫んだ。
「タンクから伝令。全員、獣人化になって、広場へ急ぐぞ!」
タンクが先に到着している広場に向かうと、ルドの変わりように獣人の仲間たちですら、息を飲むような姿を見て本能的に、震えるものもいた。騎士の首を掴んだままルドが後ろを振り返ると、暴走状態のルドは、敵味方関係なく、オッターたちに突っ込んできた。
「俺と、ホルンでルドを押さえる!押さえたら、治療班は、麻酔薬で眠らせろ!後方は、増援部隊が来ないよう任せるぞ!」
後ろをオッターが振り向くとホルンに指示を出した。
「俺が、ルドを押さえながら隙を作るからホルンは、腹を殴れ!分かったか!」
「オッターでもさ、王の子を殴ったらおいらの、首飛ばないか?」
「今は、それ所じゃないだろ!」
ぶつぶつと、ホルンの言葉にオッターが、舌打ちをして声を荒らげた。ホルンは、オッターの怒鳴り声にビクッと体を硬直させて、拳を強く握ると、渾身の一撃が、ルドのお腹に命中し、そのまま崩れ落ちるように、地面に倒れた。
「マレン!麻酔薬!」
「任せて!」
「おい!オッター!!増援部隊が来るぞ! 」
「煙幕で拡散しながら、撤退!」
オッターの迅速な指示で二手に別れながら特殊な煙幕が、炊かれた。片手でルドの体を持ち上げると、オッターたちは森の方向に、馬を走らせた。地面に転がるレインの首をマレンが、瞳を滲ませながら布で手早く包むと、馬に乗り森へと急ぐのだった。
ルドの想像を絶する場面をどう表現するか、編集に編集をし悩みました。ルドの心の支えが居なくなってしまったルドはこれからどう、立ち上がるのかを小説にしていけたらと思っていますので、ブックマーク登録、評価などよろしくお願いします!




