神の評議会
コルが輝く扉をくぐった瞬間、空気が一変した。背後の世界は消え去り、まばゆいばかりの白い光に呑み込まれた。彼のブーツは水晶の地面を踏みしめ、銀色の霧が遠くの黒曜石の樹々と黄金の塔の間を漂っていた。神界は静まり返っていた。静かすぎるほどに。
「キラ?」彼は横目で視線を向けながら呼びかけた。
しかし、彼女はもういなかった。
コルはため息をつき、コートの埃を払いながら前に進んだ。「まさか。」
彼は奇妙な世界を、着実な足取りで歩いた。光は温かくはなく、古き良き、神々しく、重苦しいものだった。それはまるで、下されるのを待つ審判のように、彼に重くのしかかっていた。それでも、彼は冷静な決意で進み、地平線を見つめていた。
何かがおかしい。
この街は美しかったが…生命はなかった。高く力強い塔がそびえ立ち、得体の知れない紋章が刻まれた旗が、目に見えない風に翻っていた。しかし、そこに住民の姿はなかった。笑い声も、動きもなかった。静寂と、戦争が既に準備されているという鋭い感覚だけが残っていた。
コルが角を曲がると、黄金の鎧をまとった二人の長身の人影が現れた。それぞれが巨大なハルバードを手に持ち、刃にはエネルギーが響いていた。
「コル・ヴァエルロス」と、一人が言った。「長老たちがお待ちです。」
コルは返事をしなかった。ただついて行った。
彼らはコルを長い橋を渡って、光り輝く神殿へと案内した。神殿の設計は異次元のようだった。浮遊するルーン文字がドームの周りを月のように巡り、光の階段が彼を神殿の扉へと導いていた。内部には三日月形の弧を描くように十の壮大な玉座が並んでいたが、実際に使われているのは七つだけだった。
中央には戦いの女神タガリエルが座し、星の光で鍛えられた鎧をまとい、鋭い目は刃のように鋭かった。その隣には光の神メコリエルが、霊妙な輝きを放って座っていた。彼女の反対側には、炎の神アシュベルが座っていた。炎は優しいペットのように腕を舐め回していた。
さらにその先には、白と黒のコントラストのローブをまとい、鱗を漂わせるディニエルが座っていた。そして、古代の異様なゼマリエル。彼の姿の周りで時が歪んでいるのが目に見えてわかる。その隣には、秘密の神ナサナエルが影に覆われ、その瞳は真に姿を現すことはなかった。
最後に、輝きと安らぎに満ちたダヴィナがいた。彼女の優しい視線は、他の者よりもずっと長くコルの視線と重なった。そしてその視線に…コルは悟った。
彼女はキラだった。
彼は声には出さなかったが、何かが彼に、彼女が彼が知っていることを知っていると告げた。
タガリエルが最初に口を開いた。
「コル・ヴァエルロスよ、あなたは聖なる評議会の前に立っている。悪魔の遺産の担い手よ。」
コルは眉を上げた。 「あなたが私を召喚したのです。ここに来るように頼んだわけではありません。」
アシュベルは鼻を鳴らし、髭に炎が揺らめいた。「それでも、自ら来たとは。それは知恵…それとも傲慢さの表れか。」
メコリエルの声は穏やかだった。「あなたは人間には備わっていない力を持っている。悪魔の核…が今、あなたの中に宿っている。」
コルは緊張した。
ゼマリエルが続いて口を開いた。彼の声は時を超えた響きのように歪んでいた。「あなたがその力を吸収した瞬間…予言は成就した。破滅の王。諸王国に破滅をもたらす運命にある者。」
コルの目は見開かれた。
長い沈黙が部屋を満たした。
コルは拳を握りしめた。「それで? 私の運命?」
タガリエルは玉座からわずかに立ち上がり、神聖なエネルギーが周囲に放射された。 「あなたの存在こそが触媒です。もしあなたが力を手放せば…もしあなたが自ら手放せば、地球は救われるかもしれません。」
「もし私が手放さなければ?」
ダヴィナはようやく口を開いた。柔らかく、ほとんど悲しげな声で。「では、あなたは私たちにやらなければならないことを強いるのですか?」
コルは彼女と目を合わせた。
メコリエルは続けた。「コル・ヴァエルロスよ、あなたには一度だけチャンスがある。悪魔の力を手放せ。運命が巡り巡る前に、その糸を断ち切ろう。」
コルは息を吸い込み、低い声で言った。「もし私がそうしたら…私はどうなるのですか?」
ディニエルは答えた。「その力がなくても、あなたはまだ生きられるかもしれません…もし私たちがそれを許せば。しかし、その力があれば、あなたの存在だけですべての領域のバランスが崩れてしまうのです。」
神々が議論を交わす中、コルの視線は彼らを通り過ぎ、空になった玉座へと移った。
「十席だ」と彼は呟いた。「だが、埋まっているのは七つだけだ。」
ダヴィナの視線が彼に向けられた。「他の神々はもう存在しない。あるいは、もはや意見が合わない。」
その言葉に、彼は身震いした。神々は分裂しているのだろうか?
そしてコルは外の街を思い出した。静寂と緊張。
戦いの女神タガリエルが身を乗り出した。輝く鎧は古代の星々の力で脈動していた。彼女の視線はコルをじっと見つめ、軽蔑と計算が入り混じった。
冷たくも命令口調で彼女は言った。「悪魔の遺産はあなたの中に宿っています。あなたの力はあらゆる領域のバランスを変えました。古き良き時代は遠い昔のことです。悪魔も、あらゆる超自然的な存在も、終わりを迎えました。」
コルは両手を脇に握りしめていたが、沈黙を保っていた。
次に、太陽のようにきらめく光り輝く光の神メコリエルが口を開いた。声は穏やかだったが、その言葉の重みは、これから起こる厳しい現実を背負っていた。
「我々――神々――は循環の守護者であり、宇宙のバランスを保つ者だ。悪魔、狩人、吸血鬼、そして女神でさえ――彼らは皆、今や終焉を迎えるべき時代の遺物だ。もはやかつてのような役割は果たしていない。」
彼らの計画の全容が明らかになるにつれ、コルの心は沈んだ。彼らは悪魔や地球の破滅について語っていただけではない。彼らは、あらゆる超自然的な生命を根絶し、新たな世界を始めることについて話していたのだ。
タガリエルの隣に座っていた時の神ゼマリエルは付け加えた。「今の地球は…終わりを迎えた。この循環を断ち切らなければならない。」
「そして、コル・ヴァエルロスよ」メコリエルは目を細めて言った。「汝こそが、新たな闇の神に選ばれたのだ。」




