上昇の始まり
ユニオン山の麓の空気は薄く冷たく、不自然な静けさを漂わせていた。頭上の空は果てしなく広がり、山頂は渦巻く雲の中に消えていた。
コルは一歩踏み出し、これからの旅の重みを感じた。魔女たちが警告していた――ここは普通の山ではない。
二日。
全速力で登っても、頂上までには二日かかる。
息を吐き出すと、冷たい空気に吐息が透けて見えた。そして、ためらうことなく登り始めた。
最初の数時間は何も起こらなかった。地形は険しく、急勾配のためペースを落とさざるを得なかった。ゴツゴツとした岩が地面から突き出ており、登るにつれて寒さが増していった。
その時、足元の地面が揺れ始めた。
コルはすぐに身構えた。前方の道を見渡したが、何もなかった。
その時、岩に亀裂が入った。
巨大な物体が立ち上がり始めた。
石で鍛え上げられた怪物は、高さ20フィート(約6メートル)以上。その体はギザギザの岩の塊で、溶けた炎の脈のように、輝く亀裂が体に沿って走っていた。
その目――もし目と呼べるならば――が、鮮やかに息を呑んだ。
深く、地を揺るがすような唸り声が山中に響き渡った。
コルは息を吐いた。「もちろんだ。」
岩の怪物が突進し、巨大な腕を雪崩のように振り下ろした。
コルは難なく身をかわしたが、その衝撃でかつて彼が立っていた地面は砕け散った。
彼は近くの岩棚に着地し、怪物がこちらを向くのを見守った。怪物はゆっくりと動いていたが、一歩ごとに山全体が震え上がった。
コルは指の関節を鳴らした。「早く終わらせよう。」
怪物は咆哮を上げ、突進してきた。コルは一瞬にして姿を消し、再び怪物の上に姿を現した。
ブラックサンダーが彼の拳から湧き上がった。
一撃で、彼は怪物の頭部に拳を突き刺した。衝撃は空中に衝撃波を巻き起こし、体中の輝く亀裂が破裂した。
怪物は凍りついた。
そして――生命のない石の山へと崩れ落ちた。
コルは静かに着地し、埃を払い落とした。
「ああ…簡単だった。」
彼は元の道に戻った。山はまだ彼を許していなかった。
正午までに、コルは中間地点に到達した。凍てつく風と不安定な足場のため、登山はますます危険になっていた。
その時、彼は思いがけない音を聞いた。
声。
子供の声。
「…馬鹿な山だ…」
コルは立ち止まり、目を細めた。
その時――動き。
岩の陰から小さな人影が現れ、岩棚をよじ登ろうと奮闘していた。
小さな女の子。
彼女は7、8歳くらいに見え、ぼろぼろの服を着ていて、寒さに耐えられるかのようだった。髪は乱れ、頬は氷のような空気で赤らんでいた。
彼女はぶつぶつと呟きながら立ち上がろうとしたが、滑って顔から地面に倒れ込んでしまった。
コルは瞬きをした。
少女はうめき声をあげ、仰向けに転がった。「うわあ…この山は最悪だわ。」
コルは腕を組んだ。「冗談でしょ…」
少女は飛び上がり、大きく見開いた目で彼を見つめた。
しばらくの間、二人はただ見つめ合った。
それから、彼女は彼を指差した。「あなたは誰?」
コルは片眉を上げた。「私があなたに聞くべきだった。」
少女は口を尖らせた。「失礼だ。」
コルはため息をついた。馬鹿げている。
彼は立ち去ろうとした。
「おい!どこへ行くんだ!?」
コルは止まらなかった。「ベビーシッターよりもっと大事なことがあるの。」
少女は息を切らし、慌てて立ち上がった。コルの後を追って走り、必死に追いついた。
「ちょっと待って!あなたも山に登るんでしょう?」
コルは彼女をちらりと見た。「当然よ。」
「いいね!じゃあ、ついていくわ!」
コルは立ち止まった。「だめ。」
少女はニヤリと笑った。「もう遅い。もう決めたわ。」
コルは目を閉じ、鼻から息を吐いた。なぜこんなことが起こっているのだろう?
彼は彼女の方を向いた。「まだ子供なのに、一体ここで何をしているんだ?」
少女は踵を揺らした。「登ってるの。」
コルは彼女をじっと見つめた。「冗談でしょ。」
「違う。」
「…どうして?」
少女は瞬きをした。「わからない。」
コルは顔に手を滑らせた。当然だ。
少女は首を傾げた。「かなり強いんだね?」
コルは彼女を無視して、登り続けた。
彼女は後を追った。
少しの沈黙の後、彼女は再び口を開いた。
「それで…お名前は?」
コルはため息をついた。「コル。」
少女はニヤリと笑った。「よかった!キラよ。」
彼女は頷いた。「お会いできて光栄です!」
コルはそのまま歩き続けた。
キラは明るく微笑みながら、コルの横を小走りで走った。「それで、コル…巨大な鳥と戦ったことはあるの?」
コルは眉をひそめた。「何だって?」
その時、耳をつんざくような甲高い声が上から響いた。
コルはゆっくりと顔を上げた。
巨大な翼を持つ獣が、爪を伸ばして空から急降下してきた。
キラはニヤリと笑った。 「ああ、よかった、来たぞ!」
コルはため息をついた。
これは長い登りになりそうだ。