あなたは召喚されました
戦場は静まり返っていた。
コル・ヴァエルロスは廃墟の中に一人立ち尽くしていた。彼の体は闇のエネルギーで脈打ち、黒い瞳は破壊された世界を見渡していた。かつて強大な城、悪魔の支配の中心地は、ただの瓦礫と化していた。血が地面を染め、世界そのものを揺るがした戦いの残骸となっていた。
嵐は過ぎ去った。戦争は終わった。
少なくとも、そう思われた。
突然の空気の変化がコルの視線を揺らめかせた。神聖なエネルギーに揺らめくポータルが開いた。
そこからリサ、エリザベス、そしてジェイコブが歩み出た。彼らの表情は硬直し、戦いへの準備を整え、コルの傍らに立つ覚悟ができていた。しかし、崩れ落ちた地面に足が触れた瞬間、彼らは息を呑んだ。
戦場は空っぽだった。軍勢は消え去り、悪魔の姿はどこにも見当たらなかった。
そしてコルは一人立ち、その存在感はかつてないほど恐ろしかった。
リサの目が見開かれた。「コル?」
彼はゆっくりと彼らの方を向いたが、表情は読み取れなかった。彼は何も言わなかった。
エリザベスはためらいがちに一歩踏み出した。「君…勝ったのか?」
ジェイコブの拳が握りしめられた。あり得ないことだった。悪魔の軍勢、残った6人の騎士、そして悪魔自身――コルが一人で勝てるはずがない。
リサはもう戦場を見ていなかった。コルを見ていた。
何かがおかしい。しかし、彼女は気にしなかった。
彼の周りの空気が違っていた。彼を包み込む闇は、以前とは違っていた。
その時、新たな門が開いた。
フードをかぶった人影が現れ、リサは息を呑んだ。魔女たちだ。
彼女たちは完璧な足並みで前に進み出た。黒いローブをはためかせ、輝く瞳をコルに見据えていた。そして――ためらうことなく――彼らは彼の前に立った。
リサとジェイコブは凍りついた。
エリザベスの心臓が高鳴った。
魔女たちのリーダーが顔を上げた。「ご主人様」と囁いた。「お帰りになったのですね」
リサは一歩下がった。「何…何をしているの?」
コルは答えなかった。ただ、魔女たちが頭を下げ、彼を受け入れるのを見守った。敵としてでも、生き残りとしてでもなく、新たなご主人様として。
エリザベスの手が震えた。「コル、何か言ってくれ」
それでも、彼は黙っていた。
ジェイコブはリサの前に立ち、本能的に剣を抜いた。「下がってろ」
その時――コルがようやく口を開いた。
「そんなことは必要ない」
彼の声は穏やかだった。不自然なほど落ち着いていた。言葉の裏には静かな確信が宿っていた。
リサは全く怖がっていない。
ジェイコブは武器を下ろしなかった。「コル…一体何が起こっているんだ?」
コルの視線が彼へと向けられた。「終わった」
ジェイコブは一歩前に進み出て、剣を握りしめた。「終わった? どういう意味だ?」彼はコルの傍らにまだ立っている魔女たちを指さした。「なぜこんなことをするんだ? なぜお前を師匠と呼ぶんだ?」
エリザベスの息は荒かった。「コル…あなたは…」
彼女は言い終えることができなかった。
心の奥底では、彼女は既に分かっていたからだ。
コルは以前の自分ではなかった。
彼はもはやただのコルではなかった。
ジェイコブの姿勢が変わり、筋肉が緊張した。「もしお前が彼らの一人になったのなら、もし悪魔が…」
コルが動いた。
ジェイコブが反応するよりも早く、コルが目の前に現れ、素手で剣を握りしめた。黒いエネルギーが彼の指の周りで弾け、剣は震えた。
ジェイコブの目は見開かれた。彼は長年コルと共に戦ってきた。彼の強さを以前にも見てきた。
でも、これは?
これは違う。
コルの唇がゆっくりと微笑んだ。「怖がっているんだな」
ジェイコブは剣を抜こうとしたが、剣は動かなかった。
コルは身を乗り出し、声は静まった。「怖がるな」
リサは彼の手を取った。「コル、やめて!」
コルは彼女を一瞥した。
彼女の金色の瞳は大きく見開かれていたが、恐怖からではなかった。
一瞬、彼の視線に何かが揺らめいた。
それから、彼はジェイコブの剣を放した。
リサは落ち着いた声で一歩近づいた。「コル…まだあなたなの?」
コルは彼女を見つめていた。彼女からは恐怖以外の何ものも感じられず、ほんのわずかな痕跡さえ感じられなかった。
しかし、彼は微笑んだ。
「大丈夫だ」と彼は言った。「怖がる必要はない」
リサは彼を信じることができなかった。
しかし、ジェイコブは信じることができなかった。
エリザベスもそうだった。
しかし、コルは彼らに尋問する暇を与えなかった。
彼は魔女たちの方を向いた。「立ち去れ」
リーダーは頭を下げた。「命令通りだ」
数秒後、彼女たちは姿を消した。
リサはまだ彼の手を握っていた。「彼女たちはどこへ――」
コルは彼女の方を向いた。「そろそろ帰る時間だ」
リサ。「どこへ行くんだ?」
コルは彼女の視線を合わせた。「家だ」
ポータルをくぐった時、太陽は昇り始めていた。
オリン、ヴァレン、そしてデインはすでに待っていた。
コルが現れた瞬間、オリンは信じられない思いで目を見開いた。「コル!?」
ヴァレンが前に出た。「生きてるのか?」
デインは安堵のため息をつき、首を振った。「本当に生き延びたのか?」
ほんの一瞬、緊張が解けたように見えた。オリンは震える笑い声を漏らし、感情に潤んだ目を潤ませた。「畜生。あんなに簡単に死なないと思っていたのに。」
コルは微笑んだ。「オリン、会えて嬉しいよ。」
オリンは凍りついた。
コルは何世紀も彼の名前を呼んでいなかった。
ジェイコブとエリザベスは口を開かなかった。
彼らは黙って立ち、他の者たちが祝福するのを見守っていた。
しかし、心の奥底では真実を知っていた。
コルは生き延びた。
しかし、彼は以前の姿ではなかった。
そして、彼がどんな姿になってしまったとしても…
まだ終わっていなかった。
突然。
金色の光が部屋を満たした。
人影が現れた。
神聖な輝きをまとった彼らの存在自体が、人々の注目を集めた。力は波のように彼らから放たれ、部屋にいる全員へと押し寄せた。
リサは本能的に他の者たちの前に立ち、体を強張らせた。
「あなたたちは誰?」と彼女は問いかけた。
その人物の輝く目はコルの兄弟姉妹に釘付けになった。そして、彼らは口を開いた。
「コル・ヴァエルロスだ。」
リサは息を呑んだ。
その人物は続けた。
「七日後、彼は神界の王の前に立たなければならない。」
沈黙。
リサの心臓は激しく鼓動した。「なぜ?」
その人物の表情は読み取れなかった。
「自分が何者になったのか、責任を取るために。」
冷たい恐怖が部屋に漂った。
リサは拳を握りしめた。
「違う。彼は怪物じゃない。彼は…」
「あなたが決めることじゃない」と、その人物は断固とした口調で遮った。
それから、何も言わずに彼らは姿を消した。