第四話:スローモーションで宝箱の罠を見破れるのか?
「なぁレオン……俺たち、どうするよ?」
スライム討伐に失敗し、
ギルドにマジで呆れられた俺たちは、
王都の片隅にあるボロ宿屋に戻ってきていた。
「どうするも何も……まず武器がねぇんだよな」
レオンはスライムに剣を溶かされたショックから、未だ立ち直れていない。
正直、俺も**『攻撃ができない勇者』**という事実が重くのしかかっている。
「そもそもスキル『スローモーション』って、俺、戦えねぇんだよな」
「お前、せめて拳で殴るくらいしろよ」
「いや、痛いじゃん?」
「勇者がそれ言うな」
レオンが頭を抱える。
まぁ、俺も不安なのは同じだ。
「……ってわけで、もっと楽なクエストを探そうぜ!」
「その発想がすでにダメなんだよなぁ……」
~第二のクエスト『ダンジョンの宝箱回収』~
「これならできるんじゃね?」
俺たちがギルドで見つけたのは、**「ダンジョン内の宝箱を回収してくるだけ」**という依頼だった。
「戦闘はないし、これなら問題ないだろ?」
「まぁ、戦う必要がないなら……」
俺たちは早速、王都近くの小さなダンジョンへと向かった。
~ダンジョン探索開始!~
「……意外と簡単だな」
ダンジョン内はそこまで広くなく、敵の姿もない。
俺たちは拍子抜けしながら、奥へと進んだ。
「お、あったあった! 宝箱!」
レオンが指さした先に、ゴツい宝箱が置いてある。
表面には、いかにも貴重そうな装飾が施されている。
「よし、開けるか!」
「待て待て待て!!」
レオンが勢いよく開けようとした瞬間、俺は思わず止めた。
「お前、異世界モノの定番イベント知らねぇのか!? こういうのは大体ミミックなんだよ!!」
「ミミック? 何それ」
「偽物の宝箱のことだよ! ほら、開けた瞬間にガブッとやられるやつ!」
「……まさか、そんな漫画みたいなことが」
レオンが疑わしそうにしながら、宝箱をコンコンと叩く。
「ほら、動かないじゃん?」
「……確かに」
「大体、ギルドの依頼でミミックなんて危険なもんが出るわけ――」
パカッ
「あ」
「……開いた」
レオンが慎重に宝箱のフタを開けると、中にはキラキラと光る金貨や宝石が詰まっていた。
「おお、マジでただの宝箱じゃん!」
「俺の疑いすぎだったか?」
俺たちはホッと胸をなでおろした。
「よっしゃ、これ持って帰れば報酬ゲット――」
ガチャン!
突然、宝箱の奥から仕掛けが動く音が響いた。
「……ん?」
次の瞬間――
ゴゴゴゴゴ……!!!
「おい、床が沈んでねぇか!!?」
「うわああああ!! 罠かよ!!!」
床が崩れ、俺たちはそのままダンジョンの下層へと転落していった。
~スローモーション、発動~
「うわあああああ!!!」
落下の瞬間、俺の視界がスローモーションになった。
「……お、これは……!?」
時間がゆっくりになったことで、俺は着地地点をしっかり確認できる。
(……なるほど、あそこに転がればギリギリ着地できる!)
スキルの効果で、俺は落下ダメージを最小限に抑えて着地した。
ドンッ!
「……ふぅ、なんとか無事だ」
「いや普通に死ぬかと思ったんだけど!!!」
レオンが派手に床に突っ込んで、ダメージを負っていた。
「お前、なんでピンピンしてんの!? 俺めちゃくちゃ痛いんだけど!!」
「いや、スローモーションで着地場所見えたから」
「いや、そのスキル便利すぎねぇ!? 俺にもくれ!!」
~ミミック登場~
「まぁでも、死ななかったから良かったよな」
俺たちはあたりを見回した。
そこはどうやらダンジョンの隠し部屋らしく、中央にはまたしても宝箱が置かれていた。
「……またか?」
「いやいや、今度こそ本物だろ」
レオンが恐る恐る宝箱を開けようとした、その時――
パカッ
ガブッ!!!
「ぎゃああああああ!!!」
「お前やっぱりミミックじゃねぇか!!!!」
レオンの腕に牙を生やした宝箱が食らいついた。
「たっ、助けてタクミ!!」
「ちょ、ちょっと待て、どうすりゃいいんだ!?」
「戦え!!」
「無理だって!! 攻撃手段ねぇんだよ!!!」
「くそっ!! ……俺の腕ごと噛みちぎられる前に、なんとか――」
俺はスローモーションを発動させ、ミミックの動きをじっくり観察した。
(……よく見たら、こいつ、内側の舌が弱点っぽくね!?)
「レオン、ミミックの中にあるピンク色の部分を殴れ!!」
「よっしゃ!! ……うおおおお!!!」
ドガァ!!!
レオンがミミックの口の中を全力で殴ると、ミミックはそのまま口をパカッと開けて吹っ飛んだ。
「ぜぇ……ぜぇ……マジで死ぬかと思った……」
「お前、腕大丈夫か?」
「めっちゃ痛い」
俺たちはぐったりしながら、隠し部屋を後にした。
~ギルドにて~
「……つまり、罠にかかって落下して、ミミックに襲われたと?」
「はい」
ギルドの受付嬢は、俺たちの話を聞いて思いっきりため息をついた。
「君たち、本当に勇者と剣士なの?」
「それ、俺たちも聞きたい」
――こうして、俺たちのポンコツ勇者ライフは今日も続くのだった。
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