第一話:勇者、チュートリアルで詰む
新連載です!
「ん……?」
目が覚めたら、俺は草原に転がっていた。
「……あれ? ここどこ?」
確か俺、昨日までブラック企業で働いていたはずだ。クソみたいな上司に理不尽な仕事を押し付けられ、終電ギリギリで帰宅、風呂も入らずに爆睡した記憶がある。
なのに、今の俺の服装は……
「ローブ? てか、ダサッ!?」
布感丸出しの白いローブに、謎の革ベルト。まるでゲームの初期装備みたいだ。そして、周りを見渡せば広がる青空と大自然。どう考えても日本じゃない。
「……まさか、異世界転生?」
すると――
「おおっ! 目覚めたな、勇者よ!」
突如、どこからか現れたのは銀髪のイケメンだった。鋼の鎧を身にまとい、大剣を背負い、見るからに強そうな雰囲気を醸し出している。
「待っていたぞ! さあ、我と共に魔王を討つのだ!」
「……え?」
「大丈夫、貴様は勇者だ! きっとこの世界を救う力を持っている!」
「いやいやいやいや、初対面のやつに世界救えって言われても困るんだが!?」
おかしい、異世界転生ってもっとこう、女神が出てきて「チートスキルを授けます」的な展開があるんじゃないのか?
「ともかく、まずはステータスを確認するがいい!」
「お、おう……?」
俺はなんとなく手をかざすと、脳内に情報が浮かび上がった。
【勇者・俺】
レベル:1
HP:10
MP:5
攻撃力:2
防御力:1
スキル:なし
「……弱ッ!!?」
思わず自分でツッコんでしまった。
「これ、どう見ても村のモブ以下じゃね!? てか、スキルなしってどういうことだよ!?」
「な、何かの間違いでは……? もう一度確認してみよ!」
「何度見ても変わらねえよ!! これ、完全にハズレ勇者じゃねえか!!」
イケメン剣士は頭を抱えている。いや、俺が抱えたいわ。
「ど、どうする……!? まさか勇者が雑魚とは……!」
「そっちが勝手に召喚しといて今さらかよ!!」
「し、しかし! 勇者である以上、貴様には魔王討伐の使命が――」
「無理だろこれ! 俺、スライムにすら勝てる気しないんだけど!?」
「な、ならば私が鍛えてやる!」
「おっ、マジで? なら、頼むわ」
「よし! では早速、スライムを相手に戦ってみよ!」
「おおっ、RPGの基本だな!」
俺は草むらを探し、さっそくスライムを発見した。プルプルと震える青いゼリー状の生物。よし、これなら……!
「うおおおおお!! 必殺!!」
――バシュッ!!
俺の拳がスライムに突き刺さる! が――
スライムはダメージを受けていない。
「……は?」
スライムはまったくの無傷だった。そして次の瞬間、俺の足元でぴょんっと跳ね――
スライムの体当たり!
勇者は即死した。
「ちょっとおおおお!? チュートリアルで詰むとかある!?」
こうして、俺の勇者ライフは幕を開けた。が、すでに心が折れそうである。
「面白い!」「続き読みたい!」など思った方は、ぜひブックマーク、レビュー、感想、下の評価を5つ星よろしくお願いします!
していただいたら作者のモチベーションも上がりますので、更新が早くなるかもしれません!
ぜひよろしくお願いします!