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静かなる逆鱗

俺がウィッチの里に着いたとき、そこは先ほどの心温まる穏やかな空気はなく、あちこちが壊され怪我をした守備隊ガーディアンがそこかしこに倒れているという状態だった。


「リアリレッタ! いったい何があった!」


その中で見知った顔を見つけ駆け寄る。

リアリレッタは腹部に槍で突かれたらしく、そこから血が流れ出ていた。


「っつ・・・・・・カドネ、か」


「何があったんだ?」


突かれた場所の服を裂き、怪我の具合を見ながら何があったのかを聞き出す。


「マウケラスの奴隷商が、得体の知れない化物を連れて・・・・・・っ」


傷はそれほど深くはなく、止血さえしておけば命に別状は無いだろうと判断した俺は自分の服を破いてそれを包帯代わりに使った。


「事情は分かった、シュイとラルもそいつらが連れて行ったんだな?」


「あぁ、すまない守りきれなかった」


本当にすまなそうに謝ってくるリアリレッタの頭にポンと手を置いて立ち上がる。


「気にすんな、それよりもその化物について教えてくれ」


「・・・・・・化物は、黒い体をした八足のクモみたいなやつだった。ただ、尻尾が長く鋭かった上に馬と同じ大きさをしていたのが10体はいた」


リアリレッタの説明でとっさに浮かんだのはサソリだった。

砂漠にひそむ猛毒をもつ昆虫で、正直気持ち悪いやつだ。


「皮膚は鋼のように硬く、魔法も殆どダメージを与えられなかった」


「そうか・・・・・・」


少し厄介だなと思いながらも、勝てない相手ではなさそうだなと思考をめぐらせていた。

そのとき、森の方から草を掻き分ける音と助けてという叫び声が聞こえ、その瞬間声のするほうへ駆け出した。

そこには、地面に押し倒されて服を破かれたウィッチの女性一人とそれに馬乗りになる卑下た男一人、女性を押さえつける男二人の姿があった。

瞬時に状況を理解した俺は、馬乗りになる男を全力で蹴り飛ばした。

見事に首に決まった蹴りにゴキリという鈍い音を響かせながら吹っ飛んで倒れる。

何が起こったかわからない状況の二人の男も問答無用で殴り飛ばした。


「貴様ら、今何しようとしてた!!」


最初に蹴り飛ばした男は動く気配を見せず、後から殴られた男の一人も顔面が陥没している。

したがって辛うじて意識の残っていた男を片手で掴み上げて睨み付けた。


「ひぃ!」


あまりの恐怖に引きつった声を上げる男の首に手を掛ける。


「他に、連れて行った女性たちはどこだ?」


徐々に首に掛けた手に力を入れながら男に問いかける。


「こ、ここから東南に向かったところにある棄てられた砦に・・・・・・」


「そうか」


首に掛けた手をそのまま持ち上げ男を中吊り状態にして、空いている右手を男の急所へ伸ばし、握りつぶす。

男はそのまま泡を吹いて意識を失ったのでそこいらに適当に投げ捨てた。


「下衆にはお似合いの結末だ」


そう呟いてから、先ほどの女性へと向き直り笑顔を向ける。


「大丈夫だった?」


「あ・・・・・・はい」


恥ずかしそうに胸元を隠す姿に、俺は視線を逸らしながら目についた俺の服を女性に渡す。


「随分とえげつないことをする物だな」


わき腹の怪我を押さえながら歩いてきたであろうリアリレッタがそう言った。


「それは好きにしてくれ、俺はシュイたちを助けに行く」


動かない男どもを見ずに言いながら、服装を男着に着替える。

この世界には無いGパンとTシャツという、こっちに来た時の格好だ。


「勝手で申し訳ないが、村の皆を救ってくれ」


頭を下げるリアリレッタを見ながら、宗近を腰に括りつける。


「あいつらは俺の逆鱗に触れた。そして、手を出してはいけない者に手を出した」


話しの内容がイマイチ理解できなかったリアリレッタは顔を上げた。


「それが、理由だ」


「なんのだ?」


眉をしかめ、真直ぐにカドネの顔を見てくるリアリレッタに感情の無い声で返す。


「俺が、これから人を殺すためのだ」


カドネがその言葉を口にすると同時に、流水のように静で、それでいて底の知れない怒りが感じられた。


「ここは、シュイの言わば故郷だ。誰一人掛けることなく助け出す」


言うやいなや、カドネは地面を蹴った。

日本武術の縮地法しゅくちほうと気功術の弓身弾影きゅうしんだんえいを用いた超速移動である。

弓身弾影は、弓のように身をしならせ、全身のバネを使って一気に距離を駆け抜ける瞬間移動のようにしか見えないという究極の肉体技だ。

それとは別に、縮地法は長い距離を少ない歩数で進む技術である。

それらを組み合わせることで、とてつもない速さで移動することができる。

以前一キロメートルで時間を計ったとき、二〇秒を切れたことを考えれば先回りできるだろう。

門音の目には恐ろしいまでの殺意が篭っていた。


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