門音の災難、トラウマよ再び
俺たちはあれから、何事もなくウィッチの里目前まで来ることができた。
昨日、日が沈む頃にウィッチの里に程近いこの村につくことができた。
時間も時間だということでウィッチの里には明日向かうということで宿を取り、一夜を明かした。
朝食を食べ終え、さて行こうかと俺が声を掛けると、シュイが準備があるからと俺を手招きで呼びつけて部屋に戻った。確かに、これから森に入るのだから準備は必要だろう。しかし、しかしだ
「なぜ俺が女装なぞしなきゃならんのだ!」
そう、俺は現在進行形で服を脱がされそうになっていた。
「仕方ないでしょう、ウィッチの里には女の人しか入れないんだから」
宿の一室で体のあちこちを触られ、満足げに頷いているシュイを恨めしげに睨んでやると、プイっとそっぽを向かれてしまった。
どうやら俺の体の採寸をしていたらしいが(魔法で)、色々とむず痒かった。
「物申すぞ! 俺はここで待ってればいいだけの話だろう、ウィッチの里まで近いんだろ」
「それは・・・」
俺の問い詰めにシュイは何か言いにくそうにもじもじとしていた。
「それは、何だよ、何かあるのかよ」
シュイは諦めたようで、あーもう!とか愚痴りながら訳を話した。
「初めてなのよ、ウィッチの里に来るのが! だから不安なの!」
だからと言って用意に女装を容認できるわけもない。
「ふざけんな! そんなこと俺の知ったことじゃない!」
なおも抵抗を続けるが、後ろでしっかりと俺の両手を押さえるセラを振りほどくことができないのだ。
セラは俺を抱えた状態で屋根の上に飛び乗れたり、自身の二倍はあろうかという大剣を振り回せる怪力の持ち主だ。
そんな奴を振りほどこうって言うのがそもそも無理な話だ。
結局俺は物理的に力負けをして女装させられる羽目になった。
格好については語りたくない。
「・・・・・・なんというか、理不尽よ!」
「お前の方が理不尽だ!」
着替えが終わり、化粧を施した辺りでシュイが切れた。
「どーして男のあんたの方が女の私より綺麗なわけ!」
「・・・・・・綺麗とか言うな」
シュイの言葉に軽くトラウマを思い出した俺は体を震わせた。
あれは、今思い出しても恐ろしい・・・・・・。
「ちょ、ちょっと、どうしたのよ突然」
「ん、いや、ちょっとな、思い出したくない思い出が・・・・・・」
「・・・・・・何だか知らないけどさっさと行くわよ!」
誰が引きとめたんだよ、という突っ込みは辛うじて喉の奥にしまいこむことができた。
シュイはさっさと宿を出て行ってしまい、ラルもミャオ以外に特に持つ物はない為先に部屋を出ている。
俺は、普段は首の後ろで束ねっぱなしにしている髪を解き、ニ三度頭を振って髪を散らしてから荷物を持ち、二人の後を追った。
俺は特に自分の容姿がどうとか気に掛けたことは無いが、双子の妹である鈴音が絶世の美少女であることからそれなりに整ってはいるのだと思っていた。
鈴音は女性にしては身長は高く、声質もやや低めと、小さい頃は良く男の子と間違われていた。
逆に俺はというと、男にしては少し背が低く、声質も高めと、中学生になってからも私服姿だと女の子に間違われることが多数あった。
それもこれも、服を選ぶのが毎度のことながら鈴音で、どうにも女の子が着るボーイッシュな服ばかりだったせいと、髪を切ると泣き出す母親のせいだ。
うちの母親は無類の長髪フェチで、双子である俺らの、自分に似た艶やかな髪を撫でてはうっとりしていた。
今でこそ、俺の髪も肩口くらいまでしかない(それでも男にしては十分長い)から見分けは着くものの、中学を卒業するまでは俺と鈴音は見分けがつかないほどそっくりだった。
いや、今でも髪の長さ以外は殆ど同じだ。
俺の体は女性ホルモンが多いのか、華奢で色白、喉仏もパッと見では分からないだろう。
声だって、アルト寄りのテノールでハスキーボイスとして女性でも通用する。
何が言いたいかというと、女装した俺は絶世の美少女たる鈴音と瓜二つと言うことで、それは何を表すかというと
「あの、俺と付き合ってもらえませんか?」
「さようなら!」
告白のラッシュということだ。
宿を出てから、俺を見て完璧に固まったシュイを正気に戻した辺りで、村にいる男どもが俺にアタックを開始し始めたのだ。
それから村の出口まで行く間に7人から告白された。
そして今、出口で8人目の告白をぶっちぎって森を目指して爆走していた。
「くそ、俺は男だっつうの!」
「・・・・・・慰めも言葉も無いわ」
隣を並走するシュイが哀れみの視線を向けている。
「もう二度と女装なんてしないからな!!」
一年前のトラウマとデジャブした状況に俺は涙を零しながら走り続けた。
はい、っということで門音を女装させて見ましたがいかがでしたでしょうか?
何だかんだといいながらこっちは話しのネタが尽きないんですよね。
門音くん弄りやすいし 笑っ
次はやっとウィッチの里突入です。