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ある朝の一時

翌日、日が昇る前に目覚めた俺はなぜか、左右の腕にしがみついて寝ている二人をどうしようかと悩みぬいた末に、そっと腕を抜くことにした。

しかしながら分からないのだが、なぜこの二人は俺にしがみ付いているのだろうか。

寒かったってのは理由にならないだろう。

などと考えている内に、無事に脱出することができたので二人を起こさないようにそっとその場を離れ、近くの川で顔を洗い、朝の澄んだ空気を肺一杯に吸い込む。

地平線の彼方では太陽が夜の闇を照らし、闇夜は逃げるようにその色を薄めている。

二つの交じり合う地点では青とも紫ともつかないなんとも不思議な色合いをかもし出していて、柄にもなく、そんな不思議な空に見入っていた。


「確か、朝と夜の交じり合った空をマジカルアワーとか言ったな」


何をするでもなく、ただただその空を眺めていた俺は、日が完全に昇りきったところで視線を感じた。

空から目線をずらし二人が寝ていた方へと向けると、いつ起きだしたのか、セラとシュイが俺の方をジっと見つめていた。


「どうした?」


俺が問いかけると、シュイは慌てて目線を逸らし、なんでもないと言って川辺に顔を洗いに行ってしまった。

セラはというと、こちらをジっと見つめたままだが、その手をこっちに伸ばしている。

そんな姿が妙に笑えて、クスっと笑ってからセラの所まで近づいた。

俺がセラの手の届く範囲まで近づくと、セラはそのまま俺に飛びつき、ギューっと力強く抱きしめてくる。

普段はそれだけなのだが、今日は珍しく言葉を発した。


「・・・・・・お兄ちゃん」


これ程までに近い距離に居ても聞き取るのがやっとの声だが、俺はしっかりとその声に含まれた感情を読み取ることができた。

寂しかったのか。

王族ってのも大変なんだろうな・・・。

やんわりとセラの頭を撫でてやると、抱きつく力は弱まった。

それでも離れようとはしない。

俺がどうやってセラんび離れてもらおうかを考えていると、後頭部に衝撃は走った。


「朝っぱらから盛ってんじゃないわよ!」


「ってぇな! 盛ってねぇよ!」


頭を叩いたであろうシュイを睨みながら声を荒げる。

しかし、シュイは平然と受け流しそっちが悪いんでしょう的なオーラをかもし出している。

さて、どう報復してやろうか

などと考えていると、俺に押し付けられていたセラの頭がもぞもぞと動いた。

ちょうどお腹の辺りに頭があるため、動かれると妙にくすぐったいのだが、ぐっと堪える。

何事かとセラを見ると、俺に抱きついたまま状態でシュイのことを見上げていた。

それに気づいたシュイも優しげな声でどうしたの? と尋ねる。

しばらく無言でシュイのことを見つめていたセラがふと口を開いた。


「・・・お姉ちゃん」


シュイが笑顔を浮かべたまま固まった。

そして次の瞬間、俺の視界はぶれて、気がつけば朝日に照らされた青空を眺めていた。


「あ~ん、セラちゃん可愛い~。私末っ子だったから妹欲しかったのよ~♪」


声のするほうへ顔を向けると、シュイがセラ抱きしめつつ頬刷りをしていた。

・・・どうやら理性の装甲は鉄くずと化したようだな。

分からなくもない、俺もお兄ちゃんと呼ばれた瞬間クラっとしたくらいだ。

幸いにも、まどかで慣れていたのと鈴音の逆鱗を思い出して踏みとどまることができた。

そんなほのぼのした光景を見ながら俺は、朝食の準備に取り掛かった。


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