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第九話 属性合宿1

 そして、属性合宿当日になった。


 俺と兄ちゃんは国立の合宿施設にやってきた。一級貴族はここが会場になっている。


 一級貴族は全員が王国高等剣士学院の生徒だ。さすが国で一番の剣士学院なだけある。


 とはいえ一級貴族は8つの家しかないわけで、そのなかで2年間に生まれる子供の数といえばそこまで多くはない。実際に6人しかいない。



 今回の講師と思われる人が現れた。


「皆さんこんにちは。今回担当させていただく小羽こはねと申します。よろしくお願いします」


 小羽家……一級貴族の一つ。


「皆さんも自己紹介をお願いします」


 小羽さんがそう言った。そして端から順番に自己紹介をしていった。


「1年の久遠です」

「同じく宮瀬です」


 久遠竜喜と宮瀬龍杜が簡単に自己紹介をした。


「下級2年、花宮です」

「同じく真宮です」


 こいつらが兄ちゃんをいじめてた奴ら……


 そして俺の番になった。


「1年、水風文人です」


 俺は能力を使ったが、全員に聞こえるように操作し、口をいかにも声を出しているかのように動かすことによって、それがわからないようにした。

 これは兄ちゃんと考えた秘策だった。


「上級2年、水風波瑠人です」


 兄ちゃんも自己紹介を終え、全員の名前が一応わかった。

 みんな知ってるからなのか、そんなに個人情報を明かしたくないのか、みんな苗字だけしか言わなかった。

 俺と兄ちゃんは苗字が同じなので下の名前まで言わないと色々めんどくさいことになる。例えば水風兄、水風弟、とか。そうなるくらいなら下の名前の方がいい。



「では、まず皆さんの実力を見せてもらう。じゃあ、波瑠人と花宮、真宮と久遠、宮瀬と文人で模擬戦をしてもらう。怪我はさせない程度に頑張ってくれ」


 そして模擬戦をする流れになった。確かに一番実力を測るのにちょうどいいかもしれないけど、模擬戦は結構怖い。特にあんなこと言われた相手なら。


「じゃあまず、宮瀬と文人。準備してくれ」


 集合場所がバトルフィールドだったのはすぐに模擬戦をするためだったっていうことか……



 そして俺と宮瀬龍杜は位置についた。

 お互いに剣を抜く。設定はもちろん練習用だけど。


「始め!」


 お互いに走り出す。


 龍杜は剣に電気を纏わせていた。これが宮瀬家の技、『雷』なのか……

 俺も水風家の技を発動させる。


 俺は龍杜の剣を弾き、龍杜の腹に当てる……寸前で止めた。


「そこまで!」


 この模擬戦も一瞬で終わった。


 この勝利は逆に久遠竜喜たちに色々悪い影響を与えそうな気がした。例えばさらに暴言とかが酷くなったりとか……

 俺はどうしてもそういう思考になってしまう。



 そのあと2試合模擬戦が行われた。何事もなく、兄ちゃんと真宮が勝利した。



「実力は見せてもらった。合宿とはいえ、基本自分でやってもらうことになるので、まあ、休む人は休んで、自分で色々やってください。最終日にくじ引きで対戦相手を決めて模擬戦をやります。それまで自分で頑張ってください」


 完全自主トレか……



 そしてその日は解散になった。



「文人はどうする?」

『うーん……兄ちゃんは?』

「まあ、ぼちぼちやろっかな。でもさ、この合宿って一級貴族には意味がほぼないんだよね。だってこれ以上の実力強化なんてさ、小っちゃいころからやってる一級貴族にとっては無謀なことなんだよね」

『そうかもね……』


 俺も何していいかわかんないからそんな意味ないかも。


「大体みんな部屋に籠る。この期間は自主トレなんていつもの程度しかやらない。無駄な負荷をかけても意味ないことはわかってる」

『疲れがたまってもあれだしね』

「そうだな」


 俺たちは宿舎棟の決められてた部屋に入った。

 部屋の数の都合上、2人で一部屋になった。でもちょうどペアができてたっぽいし部屋も結構広い。


「文人、試合やらない? 本気で」


 急に兄ちゃんはそう言ってきた。


『べ、別にいいけど、本気で?』

「うん。午後、やらない?」

『わかった』


 なぜか兄ちゃんと模擬戦をすることになった。まあ、やることもなかったからいいんだけど……



 そして昼ご飯を食べて俺と兄ちゃんはバトルフィールドに向かった。


 幸い、そこには誰もいなかった。


「文人、剣は練習用で、でも、本気で来い! 能力も使っていい」


 兄ちゃんはそう言った。


 本気でそう思って言ってきてるのか……?


 兄ちゃんの目を見る。兄ちゃんは本気みたいだ。


 そしてお互いに剣を鞘から出して構える。


「始め!」


 兄ちゃんの合図でスタートした。


 これ、俺、不利じゃね……? とか思ってる間に兄ちゃんは一気に間を詰めてきて、そのまま斬られかけた。でもなんとかかわせた。


 そして反撃を始める。


「加速」


 俺は言霊を使い、スピードを上げて斬りこんだ。


 さすが上級2年と言うべきか、この速さでもかわされてしまった。距離が足りなかっただけかもしれないけど。


「やるな、文人」

『兄ちゃんも』


 一旦距離を取ってからお互いに走り出す。


 そしてちょうどフィールドの真ん中ぐらいで剣と剣がぶつかり合った。

 その衝撃によって、建物自体が揺れた気がした。


 そしてさらに4連撃。


 それも全て相打ちになった。


 ちょっと後ろに下がる。


 今までの模擬戦より息が上がっている気がする。やっぱ兄ちゃんは違うな……


「はぁぁぁぁっ!!」


 兄ちゃんはもう次の攻撃に移っていた。

 剣の色が黒く変わっている。ということは……


 俺は兄ちゃんと同じ技で対抗した。


『やぁぁぁぁっ!』


 影斬り。

 水風家で長年継承されている技。


 技と技がぶつかり合ってさっきよりもすごい衝撃が走る。


 お互いに剣を押し合う。


 そして剣の位置が少しずれて剣が兄ちゃんの方に行く。


 お互い当たらなかったものの、勢いを抑えきれず地面に転がった。


 はぁ……はぁ……



「文人、大丈夫か?」


 兄ちゃんは俺を起き上がらせる。


「結構本気でやったんだけどな……文人強いな」

『ありがと』


 確かに結構いい試合してた気がする。


 能力の力ってすげー、と改めて感じた。


「もしかして、文人の能力さ、結構やばい能力なのかもね」

『え?』

「あ、あとで話そ」

『わかった』


 秘密にしてる能力のことをこんな誰が聞いてるかわかんないところで話すのはよくないな。誰もいないとはいえ。



 そして俺と兄ちゃんは部屋に戻った。


 部屋にはお風呂もついていて、ホテルみたいな設備がそろっていた。部屋の広さは普通のホテルじゃないけど。


 兄ちゃんと俺は順番に風呂に入って一息ついたところでさっきの話の続きをし始めた。

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