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第七十九話 お見舞い

 病院に行き、俺は結局血液不足に陥っていたため、しばらく輸血を受ける羽目になった。


「文人、あれほど部屋で寝ていろと言ったのに。しかもこんなことになるなんて、自分を誰だと思ってるんだ! 一級貴族としてしっかりしてくれ」


 病室に来た父さんは、少し怒った様子でそう言ってきた。そもそも、あんな息子を殺そうと考えているような奴を執事として雇った父さんにもかなり責任があると思うが。


 おそらく、俺が図書館に行きたいだとか言わなくても、部屋で同じような戦闘をしていたとは思うし。


「そこまでにしてあげて。あの人が完全に悪いのだから」


 母さんがそう父さんをなだめる。


「だが、病み上がりでも自分の身を守れるというのはすごいことだ。そこは評価する」


 手のひらくるくるだな。評価してもらえるのは嬉しいことだが。


「じゃあ、輸血が終わった頃にに迎えに来る」

『うん。わかった』


 そう言って、父さんと母さんは病室を出て行った。二人とも、仕事を抜け出して来てくれたようで、そういうところはありがたいと思っている。



  ◇◇◇



 それから数十分が経った頃、病室に来客があった。


「文人さん、元気そうでよかったです。その……卒業式も、途中でいなくなっていて。今日も、召使いに殺されかけたと聞いて……」

「まろん、めっちゃ心配してた」

「もちろん、俺たちも心配してたけどな。でも、文人がそんな素人に負けるわけがないって、わかってたから」


 まろん、飛翔、風音はそれぞれ順番にそう言った。


 心配してくれるのはありがたいし、大丈夫だと信頼してくれるのもありがたい。こうやってお見舞いに来てくれるのも、だ。


「卒業式の後にも来たんだけどさ、その時は面会禁止って言われちゃって。何かあったの? そんな、面会禁止になるくらい」


 俺の病気のことは誰も知らない。だから、飛翔はそう聞いてきた。でも、本当のことは言えない。嘘をつくことにはなるが、しょうがないことだ。


『まあ……ちょっと免疫が弱ってて。もう大丈夫だけど』

「それならよかった。ほんとに」


 まさか俺に、こんなに心配してくれる仲間ができるとは。死ぬ前の俺には考えられなかったことだ。


「そういえばさ、みんな結局どこ行くことになったの?」


 少しの沈黙の後、飛翔がそう聞いてきた。


「俺は、王国剣士団の第十二部隊」


 飛翔はそう続けた。


「僕は王国剣士団の第七部隊」

「私は王国剣士団の第一部隊」


 風音、まろんはそれぞれそう言う。


「二人とも一桁部隊かー、いいなぁ……」


 飛翔はそう呟く。


「しかも、第一って本当にすごい人たちしか入れないんだよな。やっぱ、まろんはすごい」

「飛翔は大袈裟。どんな部隊だって変わらない。王国剣士団に入れるだけで十分すごいんだから」


 飛翔の発言にまろんはそう返す。


 確かに第一部隊に実力者が集まっていることは事実。でも、俺たちは当たり前のように入っているが、そもそも王国剣士団に入ること自体が難しい。


 さらに、王国剣士団の中にも中央と地方が分かれていて、俺たちは中央が当たり前なので省いているが、実際はそんな分かれ方をしているので、そこからさらに中央に配属になるというのも難しい。


「そ、そうだけどさ……それで、文人は?」

『俺は辺境。人がいないから部隊も何もない』

「そっか。しばらく会えなくなるね」

『まあ。でも、帰ってきたら連絡するよ』


 会えなくなることに心配する必要はない。どうせ、卒業したら関係も切れる。俺はそう思っている。


「ああ。お互い、頑張ろうな」

「うん」「わかってる」『ああ』


 飛翔が全員に向けてそう言うと、風音、まろん、そして俺はそれぞれ同時にそう返した。


 どうせ俺は一年近く戻ってくることはないだろうし、戻ってきたころにはそんな関わりも無くなっている。三人だけで仲良くやってくれればそれでいい。……かな。


 俺はそんなことを考えながら、病室を出る三人を見送った。


 ――どうせ俺は死ぬんだから。

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