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第六十八話 卒業試験5

 第三試合が終わり、第四試合の飛翔と聖彩がフィールド上に出てきた。


「間に合った……か……」


 後ろでそう呟いたのはまろんだった。

 まろんは控え室から観客席に戻って来たようだった。


「お疲れ、まろん」

「ありがとう、風音」


 風音は真っ先に声を掛ける。


 風音とまろんは負けた人同士だから、簡単に話しかけられるのだろう。

 でも、俺は……


 どう声を掛けていいのかわからない。

 でも、声を掛けた方がいいのは当然だ。


『お疲れ、まろん』

「は、はい。お疲れ様です」


 ど、どうしよう。


『惜しかった……な』

「……」


 黙らないでくれ、お願いだから。

 やっぱり、俺が言っちゃダメな言葉だったか……?


「……そうですよね。文人さんにそう言っていただけると、嬉しいです。完敗っていう気分で……もう敵わないって思って……でも、文人さんがそう言うなら、敵わない相手じゃないですよね! 二級貴族は」


 よかった……怒らせてなかった……


『ああ。すごく惜しかった。亜里相手にあの戦いができるなら、入れ替わりもそんなに大変じゃない……と思う。入れ替わりを見たことがない俺が言うのもあれだけど』

「ありがとうございます。……お世辞とか……じゃないですよね?」

『本心だ。お世辞なんかじゃない』


 あれは惜しかったと思う。本当に。あと少しだった。



「第四試合、柴崎飛翔対、一枝聖彩。それでは、始め!」


 まろんとの話が終わると、ちょうどよく第四試合が始まった。


 飛翔は勢いよく地面を蹴り、構える聖彩に迫って行った。


 すごい速さで飛翔が攻撃を仕掛けるが、聖彩はそれを全て防いでいく。


 それからも飛翔は連撃を仕掛けて行くが、聖彩は巧みに防ぎ切る。


 段々と飛翔の速度が遅くなっていく。これが連撃の反動か。


 そこを狙えば、簡単に勝てそうな気もするが……聖彩はまだ攻めない。まだその時じゃない……ということか? どこまで待つ気なんだ。


 そう思った瞬間、聖彩の腕が動いて飛翔の脇腹を捉えた。


「あっ……」


 飛翔はあまりの勢いに、剣を放して後ろに尻餅をつくように倒れ込んだ。


「そこまで! 勝者、一枝聖彩!」


 さすがだった。としか言いようがない。


 飛翔の速度は申し分なかった。でも、それ以上に聖彩の技術、経験、実力がすごかった。これこそもう、完敗だったと思う。


 聖彩は剣を鞘にしまって飛翔に近寄り、手を刺し伸ばした。


「中々の速度だった。対戦ありがとう」


 聖彩にそう言われ、飛翔は一瞬フリーズする。


「……こちらこそ、ありがとう」


 飛翔はその手を掴んで立ち上がりながらそう言った。


 聖彩は二級貴族で、飛翔は平民。それを考えると、飛翔はよくやったと言えるか。


「惜しかったなぁ……でも、強い」


 風音はそう呟いた。


「これで、私たちの中で残ったのは文人さんだけになりましたね……」


 まろんが続けてそう呟く。


 考えてみれば確かにそうだ。みんな惜しいところまでは行っているが、あと一歩及ばない。風音を倒しておいて言うのはあれだが。


「文人さんなら大丈夫だと思いますけど、頑張ってください」

『あ、うん』


 変なプレッシャーを掛けないでくれ。負けるつもりは更々ないが。



 そんな話をしている間に、フィールド上には希來と竜喜がいて、第五試合が始まった。


 竜喜は希來を圧倒し、ものすごい速さで決着を付けた。


 もちろん、竜喜の勝利だった。



 午前中に詰め込むように一回戦と二回戦が行われた。


 その結果、次の準々決勝は、

 水風文人vs時山亜里

 宮瀬龍杜vs一枝聖彩

 となり、

 人数の関係で、竜喜はシード枠となった。


 その前に、休憩に入った。



 休憩に入ると、気を使ってなのか、まろんたちは俺の事を一人にしてくれた。だが、たかが学校の模擬戦。そこまで緊張もしていないし、あえて意識して集中する必要もない。


 それにしても、準々決勝は順当に勝ち上がったという形だった。


 進級時の四位までの四人と、二級貴族最強家の令嬢。上手く行き過ぎているとも言うが、これが真の実力なのだろう。



 それから俺は、休憩時間を昼食以外には何もせずに過ごした。時間を無駄にしている気もするが、することがないならしょうがない。


 そして、第一体育館に戻って準備を始めた。

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