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第六十話 ペアミッション12

  ◇◇◇


 俺とまろんは、扉を開いて中に入った。


 重い音が響き、目の前にはとても大きな空間が広がっていた。


『うわぁ……』


 俺は思わずそう声を漏らしてしまった。


 だがそれ以上に驚くものが、その奥にいた。


「な、何なんですか……? あれ……」


 まろんは恐らくそれを見てそう呟いた。


 その奥にいたものは、厳密に何かはわからない。でも、なんとなく死神のような見た目をしていた。

 黒いローブを被り、顔はよく見えない。大きな鎌を持ち、浮遊している。


『死神……か……?』

「死神……!?」


 まろんは驚いたようにそう言った。


『だから言ったろ……ぶっ壊れてるって……』


 死神は名の通り死の神。これがデフォルトだなんてどう考えてもおかしい。


 今までは『訳アリクラスだから』、『平民がいるから』という可能性もあると思っていたが、これを見ると、完全に俺を狙ってきている可能性が高くなった。


 この学年で唯一の女性三級貴族であるまろんを狙う可能性もあるが、これを企てた奴らにまろんを狙うメリットがあるとは思えない。


 まろんを潰すメリットがあるのは、貴族の決戦の相手だけ。それほどの地位にある人間が、ミッションをいじれるとは思えない。そうなれば、俺を狙っていると考えるべきだと思う。


 俺を潰すメリットは、一級貴族の次男スペアを潰すことができる。それは、一級貴族入りを目指す奴らにとって、ものすごい利益があるように思える。


 加えて、誤魔化すことも簡単だし、他の犠牲もダメージにはならない。


 まろんが死んだとしても、三級貴族じゃ何も言う事はできない。むしろ、足を引っ張ったとまで言われるかもしれない。俺はそう思ったことは無いが、そう捉える人もいるだろう。


 貴族ですらない飛翔や風音では、ただの力不足と捉える他ない。家族もそれを疑ったりはしないだろう。


 訳アリクラスだということ自体、都合がいいことだった。


『それにしても……殺す気しかないな……』


 思わずそう呟いてしまった。まあ、事実なのだから仕方ないことだろう。


「文人さん……どうしますか……?」

『仮に死神なら、鎌を振られたら終わりな気がする』

「そうなんですか……?」

『多分……』


 兄ちゃんの部屋にあった魔物辞典に、死神のページがあった。そこには、一振りで命を刈り取るとあった。つまり、振られたら終わりということだった。


 だからと言って、振らせないというのはどうしたらいいのだろうか……

 死神の大きさからして、武器を突きつけ合って抑えるのは無謀。

 今できるのは――言霊だけか。


『まろん、俺がどうにか抑えて少しずつ攻撃する。その間にどうにか弱点とか打開策を探してくれ』


 ちょっと無茶ぶりかもしれないが、今はそうするしかなかった。


「わかりました。なんとか、やってみます。文人さん、気を付けてください」

『わかってる』


 死神は恐らく俺たちの方を見ている。だが、まだ鎌を振る気配はない。


 今のうちにやるしかないか。


 俺は剣を引き抜き、死神に戦う意思を示す。

 そのまま向かって行くと思わせて俺は咳払いし、死神に向かって「……止まれ」と言霊を放った。

 すると、その効果通り死神は動きを止めた。死神はそれにすごく驚いていて、動揺していた。


 ただ、俺にもダメージが帰ってきていた。そのダメージはかなりのもので、死神の強さを物語っていた。


 そんな中でも、なんとか攻撃しようと俺は一歩踏み込み、死神に迫って行った。


 そして目の前で跳び上がり、一気に五連撃を仕掛け、言霊のおかげで全てをヒットさせた。

 でも全く手ごたえが無い。それもそうか。死神なんて骸骨で中身なんてない。服を斬っただけとも言える。

 結果的に無意味な五連撃となってしまった。


 俺はそんなことを考えながらも、言霊の効果が切れる前に急いで死神と距離を取った。


『はぁ……はぁ……はぁ……』


 息が上がって苦しい。言霊の反動がかなりある。このことからも、死神はそう簡単に倒せそうにはないと再度感じる。わかってはいたけど、苦しすぎる。


「文人さん……」

『大丈夫。大丈夫だから……げほっ……』


 俺は血を吐いた。これはもう大丈夫ではなさそうだった。


「……治れ」


 一応言霊で出血は止めておく。でも大丈夫じゃないことに変わりはない。


「やっぱり、私も戦います。見ているだけなんて、できません」

『まろん……』

「ついていきますから。文人さんに」


 まろんはそう言った。


 この状況を考えるに、二人でやることで負担を減らせるという可能性はある。でも、鎌を防げないと死ぬ。そんなギャンブルみたいな戦法、していいものなのか……


 いや、やるしかないのか。


 上手くいったとしても、倒せる保証はない。そもそも可能性が低い。でも、やらなきゃ可能性は無いに等しい。だから、賭けてみる価値はある。


『まろん、生きて帰れる保証はない。でも、とりあえずやってみよう』

「わかりました」


 俺は立ち上がり、まろんにそう言った。

 まろんはそれに答え、剣を鞘から引き抜いた。


『鎌は俺が受け止めて弾く。その間に攻め込んでくれ』

「わかりました」


 何も考えずに突っ込んでいくのは無謀かもしれないけど、考えたって変わらない。それなら、突っ込んでいって、そこで起きたことに対応した方がいい気がしていた。何かあった時に、逃げることができるくらいの力はあるとも思うし。


『行くぞ』

「はい」


 まろんに声を掛け、俺は死神に向かって行った。


「……武器強化」


 俺はそう呟き、武器に鎌とぶつかり合っても壊れないくらいの強化をする。


 死神は俺の動きに合わせて鎌を振り上げたように見えた。まだ後ろにいるまろんには、目も向けていないように見える。まあ、そんなことはないだろうけど、鎌は一つ。俺が引き付けられれば、まろんが攻撃する隙ができるはず。


 俺はそう考え、さらに加速して死神に攻撃を仕掛けた。


 死神は鎌を真っ直ぐ振り下ろしてきた。俺はその鎌を剣を横に向けて受け止めようとする。


 上からの攻撃を防ぐのでは無理がある。でもなんとか、防いでいる。奇跡みたいだ。


 その間にまろんが跳び上がり、死神に攻撃を加える。


 普通に攻撃しても無駄だと考えたのか、まろんはチサルト流の『閃光』を発動させていた。そのため、まろんの剣先はものすごく速く、視界の端に映っただけだったが、残像程度にしか見えなかった。


『っ……』


 その間にも死神の鎌の重さがかかり続け、もう限界に近かった。


 その時、急に鎌の力が弱まり、鎌が横にスライドしていった。

 よく見てみると、死神がまろんに反撃を仕掛けていた。


 死神は鎌の柄の部分をまろんにぶつけ、まろんはそれを避けることが出来ずに、そのまま吹っ飛ばされてしまった。


 俺は受け止めるためにかけていた力のおかげで、バランスを崩しかけたがすぐに体勢を整える。

 そして、さらにまろんに追撃をかけようとする死神とまろんの間に入り、追撃を受け止める。

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