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第四十五話 下剋上戦 本戦3

「第三試合。上級2年、柴崎飛翔。下級2年、中山駿介」


 二人がフィールド内に入る。この試合の相手が中山駿介だということは、さっき握手したアイツは黒田拓貴だということになる。そして第四試合の相手も、そいつということになる。


 そして第三試合は同じ流派同士の対決となった。しかも仲良いらしいし。


 ホアリ流は流派の中で一番多いスピード型。その中でも特にスピードを極める流派。超高速戦になりそうな予感がしていた。


「それでは、始め!」


 先生のその合図で、二人は同時に動き出した。そしてちょうど間くらいのところで剣がぶつかり合い、大きな音を立てた。


 振動がモニターに移すためのカメラにも伝わり、画面が少し揺れた気がした。


 そして二人はそのまま押し合う展開となった。


 押し合った結果、このままじゃダメだと判断したのか、2人はほぼ同時に後ろに引き下がった。


 お互いの位置を確認し、2人が同時に同じ構えをとった。


 その瞬間、2人の剣が白っぽい水色に光った。


 そして2人は一斉に踏み込んで加速し、剣を振った。


 その速度は凄まじく、一筋の光のように見えた。


 その光は中央の辺りでぶつかり、爆音と煙を立てた。

 若干飛翔が押していたような気もするが、煙のおかげでどうなっているかはわからない。


 そして煙がなくなった時、2人はまだ押し合っていた。


 やはり若干飛翔が優位に立っているような気がする。でも、ここから巻き返されることも考えられるくらいの差だった。


「うぉぉぉぉっ!!」


 飛翔はそんな雄叫びを共に、剣をさらに押し込んだ。

 飛翔には練習用の剣でよかったと思うくらい、本気で戦っているような気迫があった。


 そして飛翔はさらに剣を押し込み、斬り払った。


「そこまで! 勝者、柴崎飛翔! よって、下剋上戦第四カードは上級2年の勝利とする!」


 そう審判の先生が言ったところで、俺たちの中にあった緊張感が一気になくなった。


「それに伴い、今年度の下剋上戦は入れ替わり無しとなる」


 先生がそう続けて言ったところで、上級2年から歓声が……上がらなかった。


 当然の結果というところだろうか……? そんな思いが上級2年の人たちにはあるようだった。


「よかったですね、何もなくて」

『……そうだな』


 まろんのその言葉には、何かを心配するような気持ちが混じっているように思えた。


「最終試合……やるんですか? 先生の感じだと、やるみたいですけど」

『ああ。毎年やってるみたいだったから』

「そうなんですね。じゃあ、頑張ってください」

『ああ』


 これで俺が負けるなんてことがあれば……もう、笑うしかない。

 絶対に避けたいところだし、多分ないだろう。俺にはアレもあるわけだし。


「頑張って。文人」

『ありがと』


 まろんと風音に鼓舞されたところで、俺は控え室を出た。


 そして次の試合の待機所に向かうと、そこには飛翔たちがいた。

 何か話しているようで、なぜか出ていくのはやめたほうがいい気がした。


「いい戦いだった。飛翔」

「駿介も。本当は戦いたくなかったけど。こっちの誤算だった」


 グサッ


 言葉の矢が刺さってくる……俺が悪いみたいな……


「そっか……こっちも誤算だった。まさか、あんな変則的な順番で出てくるなんて思ってなかったし」


 あっちもこうなるとは考えていなかったみたいだった。まあ、俺たちがおかしかっただけだとは思うけど。


「お互いに入れ違った感じだな……それもいいけど」

「そうだね。まあ、こっちは負けちゃったけど」


 そう思ってるならよかった。


「こっちにも、こっちのプライドがあるから」

「飛翔はすごいよ。努力でそこまで駆け上がって」

「ありがと。じゃあな」


 盗み聞きみたいになってしまったのは申し訳ない。でも、今回のがうまくいったみたいでよかった。


「あ、文人」

『お、おお……』


 戻ろうとした飛翔とぶつかりそうになった。


「今から?」

『ああ』

「頑張って」

『うん。飛翔、いい試合だった。お疲れ』

「ありがとう。それじゃあ」


 そんな会話をしたところで、飛翔は控え室に戻っていった。


 ちょうど待機所に着いたところで、黒田拓貴も待機所に現れた。


「おう。さっきぶりだな」

『ああ』

「下剋上戦は俺たちの負けだけど、こっちは負けねぇから。本気で来いよ?」

『わかってる』

「三級貴族なめんなよ」

『なめてないって』


 確かに嚙みつきがすごいというか……なんというか……


 まあ、負けるつもりはないし、本気でかかるつもりはない。

(本気でやるということは、言霊を使うということになる)



「第四カード、最終試合。上級2年、水風文人。下級2年、黒田拓貴」


 俺たちはフィールド内に入った。


 そして剣を引き抜き、いつもと同じ構えをした。


「それでは、始め!」


 その合図で黒田は一気に加速し、攻め込んできた。


 俺は動かずにその攻撃を受け止めた。確かに攻撃単体はパワー型の流派らしく強い。でも、そのあとに繋がる攻撃も無く、一瞬にして距離を取っていった。


 俺はそこを狙って攻め込む。


 元々、最初の一発は当てるつもりは無かった。そしてその一発目は避けられた。黒田はそれをいいように勘違いしたのか、俺の攻撃を避けるつもりでいるみたいだった。


 そして二発目、俺はギリギリの所まで攻め込んだ。この一発も、当てるつもりはない。


 その一発もかわせると思ったのか、黒田はかわす体勢に入ったが、ギリギリすぎて動揺してるみたいだった。


 俺はこれはあくまでも見せ物としてやろうと決めていた。最終試合というのもあるし、最終試合についての話し合いが終わった後、井花先生に言われた事項があり、そのおかげでそういう判断になった。


 ――最終試合なんて見せ物だ。試合を楽しませてくれよ? 水風

 ――時間を重ねるごとに本気になっていく。そんなのが面白いんじゃないか?


 そんなことを言われた。


 みんなの前では見せない、裏の顔のようなものを、なぜか俺には見せる。

 どういう意図なのかはわからない。ただ媚びを売っているだけなのかもしれないし、他に別の意図があるのかもしれない。

 どんな理由にせよ、裏の顔を見たことがあるというのは、こっちにとって有益な情報になることがあるかもしれない。だから、嫌な風には思っていない。


 そして次の攻撃を仕掛けることなく、一旦後ろに下がった。相手を煽るような意味もある。


「なめてんのか……お前ぇぇっ!」


 黒田はそんなことを言いながら、剣を黒く光らせた。流派の技を発動させたのだった。


 さすが奥義みたいな意味合いを持っている技なだけあって、強い圧を感じる。でも、一級貴族の家の技に比べれば、大したことじゃない。


 そして俺はその流派の技を剣で受け止めて防ぎ、脇腹に一発入れた。


「うっ……」


 黒田はそんな声を漏らしながら、倒れ込んだ。


「そこまで! 勝者、水風文人!」


 当然のことだった。確かに、流派の技まで出してきて、その威力もかなりものではあった。でも、それは他の上級2年に比べれば、大したものでもなかった。


 下剋上戦の結果は妥当なものかもしれない。まあ、リーダーと戦ったわけじゃないし、上級2年の全員と戦ったわけでもないからわかんないけど。



「文人さん、お疲れ様です」

「文人、お疲れ」

「文人、さすがだった」


 控え室に戻った瞬間、3人からそう言われた。


『あ、ありがとう……』


 攻め込まれるようにそう言われたので、返答がぎこちなくなってしまった。


 ◇◇◇


「下剋上戦、意味無かったな」

「確かにな」


 下剋上戦後、上級2年ではそういう意見が多かった。俺たちにしてみれば、ほとんど何も収穫が無かったわけだし、下級2年に経験を積ませただけ、下級2年のために利益にならないことをしたような、そんな印象が強くなっていた。


 まあ、下級2年でも剣士団に入る人が王国高等剣士学院では多いだろうし、下手に経験がなくて使い物にならないと思われるような人を送り込んで学校の評判を下げるのは俺たちのためにもならないだろう。と、俺は思うが、どうだろう。


 裏の思惑なんかは生徒にはわからないし、そういうものだと思わないといけないものだと思うから、これ以上考えるのはやめておこう。

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