第四十三話 下剋上戦 本戦1
翌日、予定通りに組み合わせが発表された。
俺たちのグループと対戦するのは、予想通り、あのグループだった。
そして順番は俺たちが一番最後だった。これは最も入れ替わりに近いからだと思うから、まあ、妥当な順番だろう。
「じゃあ、順番決めますか」
『そうだな。みんなは希望あるか?』
正直どうでもよくなったから、戦いたい奴を戦うのが一番かなと思った。
「俺……できれば、駿介とは戦いたくないかな……」
飛翔がそう言った。確かに同じ流派同士で仲がいいとは戦いたくないだろう。
「僕、スミレ流とやりたい」
風音はそう言った。風音はいつもにも増してやる気っぽかった。これはそうするか……
『まろんは?』
「……できれば、宇小大樹とは戦いたくない」
『わかった』
なんでかは知らないが、まあ、深入りするものでもないだろう。
『うーん……』
俺はその宇小大樹とリーダー対決するとして、風音がもう1人のスミレ流の高野心翔とってことになるか……? そうなると、中山駿介は避けたい飛翔は黒田拓貴とになるか……あとは残ったまろんはその中山駿介と対戦っと……
『一応、理想は、俺と宇小大樹、まろんと中山駿介、風音と高野心翔、飛翔と黒田拓貴。まあ、そこまで上手くいくかはわからないけど』
「そうですね……」
数時間後、風音と飛翔は練習すると言って体育館に向かった。何やら、クラスメイトの誰かとちょっと特訓するらしい。意外と協力の流れになっている人もいるみたいだった。
「どうしますか? 予想……」
『うーん……さっきから同じことしか言ってないな』
「だって、わかんないですし……今の課題ですし……」
『まあ……そうだけど』
身分で決まったりとか、よくあるような情報が全く無いし、ステータスだけじゃ、全く分からない。一応、宇小大樹が最後だということは予想決定にしてあるが。
その時、まろんが急に俺に寄りかかって来た。一瞬何事かと思った。
「文人さん……」
『何だ』
「あのー」
『ん?』
「そのー」
『何?』
「何でもないです」
『なんだよ』
何でもないが一番困ることだ。
『じゃあ、一応予想として、中山、高野、黒田、宇小……かな。個人順位をもとにして』
「そうですね……それが一番ありえそうですね」
個人順位も一応出てはいた。ほぼ点差はないものの、一応順位順に並び変えたらこうなった。
「それなら、私、風音、飛翔、文人さんの順になりますかね」
『おそらく……』
まろんが最初というのも、珍しいことだろう。今回は俺が2試合というのは避けたい。連続はキツイと思う。まあ、しょうがないことはしょうがないんだけど。
そして数分後、風音と飛翔が戻ってきた。
「あー……疲れた」
『どうだった?』
「色々、コツ教えてもらった。流派の特徴とか」
『そうか。それはよかったな』
飛鳥と風音は、教室に入ってきてからすぐに、俺たちと机を挟んだ向かい側の椅子に座った。
「それで、予想できた?」
『ああ。まあ、当たる確率は全然無いけどな』
「難しいよな……なんか」
『一応、それをもとに、まろん、風音、飛翔、俺の順で行こうと思う。誰が来てもいいように準備しておいた方がいい』
「そうだな」「そうですね」「……うん」
そして翌日、ついに下剋上戦が始まった。
下剋上戦は午前2試合、午後2試合行われる。順番としては、午前が竜喜グループと亜里グループ、午後が衛仁グループと俺たちのグループ。
まず最初に行われるのは竜喜たちのグループだ。負けるはずはないと誰もが思っていた為か、観覧スペースにはそんなに多くの人はいなかった。午前にやる4グループは控え室的なところに行かなきゃいけなかったし、もう一級貴族の試合は見飽きたといったところだろうか。
まあ、俺は暇だったからとりあえず見ておこうと思った。ちなみにまろんや風音、飛翔もここにはいない。
「それではこれから、今年度の、下剋上戦を始める」
時々審判で見るような先生がそう言い、第一体育館が静寂に包まれた。
「第一カード、第一試合、上級2年、津田亜羅斗、下級2年、瀧宮倫太朗」
名前が呼ばれ、二人がフィールド内に入る。
瀧宮倫太朗、一応情報は見たことがある。確か、タクバ流の二級貴族だった。
タクバ流は風属性、防御型の流派で、上級2年だと、一枝聖彩の流派だ。
一方、津田亜羅斗は、二級貴族でトーク流。トーク流は炎属性で防御型。
防御型同士の戦いとなった。属性での有利不利もあまり無いと思われる。これは普通なら面白くなりそうな戦いだけど、技量では亜羅斗が勝っていると思うから、亜羅斗が勝つ可能性の方が高そうだった。
まあ、勝たないと、上級2年としてちょっとね……という雰囲気もあるし、下級2年が勝てるはずがないよな……という雰囲気もある。その辺も考慮して、亜羅斗が勝つだろう。
「それでは、始め!」
審判の先生のその合図で、二人は一斉に動き出した。
お互いのスタイルが分かっているから、お互いに一撃で決めようとでも考えたのだろう。
そして二人の剣がぶつかり合い、金属音が響いた。
力の差を見せつけたといったところだろうか。そのまま亜羅斗が押し切り、瀧宮はそのまま押し倒されてしまった。
「そこまで! 勝者、津田亜羅斗!」
試合はすぐに決着が着いた。わかってはいたが、ここまで早いとは思っていなかった。
この調子だと、龍杜は触れずに倒してしまいそうだし、竜喜に至っては試合すらなくなってしまうだろう。
まあ、前者の可能性はほぼゼロに近いだろう。後者は逆に可能性が100パーセントに近いだろう。どうなるかは、見ていればわかることだ。
「第一カード、第二試合。上級2年、藤井柊璃。下級2年、広瀬大輔」
数分の間を開けて、次の試合の出場者が呼ばれる。そしてその二人がフィールド内に入る。
下級2年の広瀬大輔は、さっきの瀧宮と同様に、情報は知っていた。
確か二級貴族で、水属性スピード型のノアル流を使っていた気がする。
ノアル流となれば、柊璃も同じ流派となる。なんか熱い展開になりそうだが、さっきからそうはならない。それが下剋上戦なのかもしれないが。
「それでは、始め!」
審判の先生その合図の瞬間に、こっちも二人同時に動き出した。
さすがスピード型の流派というべきか、第一試合よりも飛び出しの速度は速かったように思えた。
お互いに剣がぶつかり合い、弾き合った。
どちらも弾かれ、防御ができない状況で、次の一撃をどちらがより速く決められた方が、この試合の勝者となる。
先に攻撃体勢に入ったのは柊璃だった。
そして柊璃は広瀬のことを剣で弾き飛ばした。
「そこまで! 勝者、藤井柊璃!」
この勝負もなんとなくは見えていた。ここまで圧勝だったのもあり、観覧スペースにいる人はさらに少なくなっていた。




