第三十二話 属性合宿2
「なんでアイツとなんて……」
龍杜は竜喜に向かってそう言った。
「俺は、俺の考えに基づいて人間関係を作っている。去年の俺は、アイツの強さを知らなかった。弱いと思ってた。そうだろ? 15年間も意識がなかったんだから」
「ああ。でも、急に何で……一緒の護衛だからとか、そういうのか?」
「違うね」
「強いから、それだけだよ」
「でも……」
「俺は強い奴だけと関係を築く。弱い奴は突き放す。それが俺の考えだ」
「いや……」
「お前とは考えが合わないようだな」
「その……」
「好きにすればいい。お前が思うように」
龍杜は全く言い返すことができなかった。そして竜喜は部屋を出ていってしまった。
「何だよそれ……」
◇◇◇
「……」
「……」
史織と瑠花の空間には不穏な空気が流れていた。
「今回だけは仲良くしましょう」
「……わかりました。今回だけなら。ただし、勝負になれば仲良くなんていたしませんので」
「わかってますわ」
2人はそんな会話を交わしていた。そんなこと、文人が知ることはなかった。
◇◇◇
「スピードって、どう鍛えるんですか」
『うーん……単発のスピードはな……』
「そうですよね……」
『なんかさ、魔法を爆発させたりして上がんないかな、スピード』
「ほぉ……魔法を爆発……」
『やったことないけど』
「誰もやろうとしませんよ、そんなこと」
多分、危ないんだろうな、とは思った。
まず、爆発自体が危ないとは思う。やらない方がいいとも思った。言ってからだけど。
「多分、非現実的だと」
『だよな』
「とりあえず、やってみます。スピードを上げて、隙を無くす、」
『わかった』
「相手、お願いしてもいいですか」
『もちろん』
そして俺たちは何度も連撃の練習をした。初絃が連撃を仕掛け、俺が受け止める、それを繰り返した。
何度か繰り返し、少しずつスピードが上がっていく。そしてそのスピードに伴って威力もなんとなく上がってる気がする。
スピードに乗せて攻撃をできれば結構な威力を出せることがわかった。初絃は2撃目以降がスピードに乗れていなかったのかもしれない。流れが悪かった、とも言うべきか……?
「はぁ……はぁ……はぁ……」
『一旦休憩しよう』
「はい」
そして俺たちはフィールドから離れて座り込んだ。
「どうですか」
『うん。スピードは上がってきてるとは思う。隙も少なくなった』
「そうですか! 良かったです」
初絃は素直に喜んでいたように思えた。
「文人さん!」「お兄様!」
史織と瑠花が俺のことを呼んだ。
『おう』
「来ていたんですね。初絃も」
「うん。文人さんに教えてもらってた」
「いいなぁ……」
『そういえば史織の戦闘は見たことなかったな……』
「あの、それなら、勝負、してもらえませんか?」
『ああ……わかった』
そして俺と史織が対決する運びとなった。
「お、文人じゃん。1年生一同も」
竜喜も来た。なんか、ほぼ全員そろってしまった。
『今から史織と練習試合することになった』
「ほぉ……」
『審判頼む』
「わかった」
竜喜に審判を頼み、俺と史織はフィールドの端と端に向かい合った。
「よーい、始め!」
竜喜の合図でお互いに走り出した。
そして剣が届く距離まで近づいたところで、史織は剣を大きく振った。俺はそれを後ろに跳んで避けた。何となくモーションからこの攻撃が来ることは分かっていた。
史織が攻撃の反動か何かで隙ができたところに、俺は史織に急接近した。
史織は近づいた瞬間に地面に刺さっていた剣を持ち上げた。俺はその剣を踏み台にして上に飛び上がった。
そして左手で史織の肩を押して、前によろけさせようとした。史織は俺の思い通り、前にバランスを崩して倒れかけていた。
俺は、着地と同時に史織の影に剣を叩きつけた。
――影斬り
そして史織は前に倒れ込んだ。
「そこまで! 勝者、水風文人!」
竜喜の声で試合が終わった。
史織は意外とパワータイプだった。それが率直な感想だった。
俺は史織に近寄った。
「強い……ですね……さすがです」
史織はそう言った。
『ごめん。ちょっとやり過ぎたかも』
史織に手を差し伸べながら、俺はそう言った。
「全然大丈夫です」
史織はそう言ったが、本当の事はわからない。
「お兄様……さすがです」
『ありがとう、瑠花』
そういえば瑠花が俺の試合を見るのは初めてだったかもしれない。
『瑠花、初めてだったよね? 俺の試合見るの』
「はい。そういえば、そうですね。でも、お兄様のスタイルは似てました。あの人に。だから、初めてなのに、見たことのある気がしてました」
あの人っていうのは、兄ちゃんのことか……? それとも、父さん……? それとも、他の誰かか……? そう思ったが、聞きそびれてしまった。
史織と瑠花と初絃は一旦部屋に戻ると言って、行ってしまった。
フィールドスペースには、俺と竜喜だけになった。
『そういえばさ、龍杜は?』
「アイツとは考えが合わなかった」
『喧嘩?』
「まあ、そうなる」
『俺からすれば、竜喜の考えが意外だった。龍杜もそうだったのかもよ』
「でも、文人は理解を示してくれた」
理解を示した覚えはないが。
『そんな、すぐに理解できるものでもないと思う』
「……だから、いったん距離を置いた。いつか、あっちから来てくれるまで待つことにした」
『へぇ……竜喜が迷ってないならいいや』
「そこまで優柔不断ではない」
『まあ、そっか』
そう言って俺は、フィールドスペースから立ち去った。




