第三十一話 属性合宿1
「前からお知らせしておいた通り、明日から、属性合宿となります。場所は去年と同じなので、把握しておくように。そして、上級2年として、頑張ってくるように」
「はい」
明日から属性合宿らしい。去年は兄ちゃんがいたから良かったけど……今はそんなこと気にしてる暇はないか。
「じゃあな、文人!」
「文人、お互い頑張ろう」
「文人さん、頑張ってくださいね」
『うん。みんなも、頑張って』
俺たち4人は、去年と同じ会話をかわし、別れた。別れた場所は去年とは違うが。
「文人さん、お疲れ様です」
『史織、お疲れ』
「竜喜さん! 文人さん! お待たせしました!」
「初絃、そんなに急がなくても大丈夫だよ」
「そうですか……」
そして俺たちは校門の方に向かった。ちなみに留花には先に行っててもらっている。
そして俺と竜喜は王宮護衛に引き継いだ。
『瑠花、待たせてごめん』
「大丈夫です」
『明日から、属性合宿だな』
「はい」
『あと、属性決めもあったか』
「はい」
『どうだった?』
「流派は水風でした。恐らく、お兄様と同じです」
『そっか……じゃあ、属性合宿、一緒だね』
「そうなんですか?」
『ああ。属性合宿は全学年一緒だからね』
「そうなんですね。お兄様と一緒にいられるのですか?」
『部屋は違うと思うけどな……』
「それはそうですけど」
『練習の時は一緒にやってもいい』
「ほんとですか!? ありがとうございます!」
瑠花はニコニコしていた。
『……ねえ、』
「はい……?」
『なんで、そんなにさ、慕うっていうか……そのー』
「それは、私が、お兄様のこと…………いや、なんでもないです」
『え?』
「お兄様だからです!!」
なんか怒って(?)いた。
『えぇ……』
「うー……」
瑠花は涙目になっていた。
『ちょ……』
そして瑠花は俺にしがみついてきた。
『ちょっと……? 瑠花?』
「しばらくこのままでいさせてください」
えぇ……
車の中でハグしてる、そんな状況に近い。このまましばらくだなんて……ちょっと無理がある。
翌日
ちなみにあの後は特に何事もなかった。
俺たちは属性合宿の場所に集まっていた。去年と同じ場所だ。
今年の参加者は6人。一級貴族4人と王族2人。王族も行き場がなかったようだった。
そして去年と同じ、小羽さんが今年も担当みたいだった。
「皆さんこんにちは。今回担当させていただく小羽と申します。よろしくお願いします」
小羽さんは去年もしたような挨拶をする。
「皆さんも自己紹介をお願いします」
小羽さんがそう言った。そして昨年同様、端から順番に自己紹介をしていった。
「上級2年、久遠です」
「同じく、宮瀬です」
竜喜、龍杜がそれぞれ去年と同じように名乗っていく。違う点といえば、上級2年というところだろうか。
「1年、初絃です」
「同じく史織と申します」
王族は苗字がないらしい。なんか名前で名乗ってるのに違和感がある。
「上級2年、水風文人です」
「1年、水風瑠花です」
俺たちは去年と同様、下の名前まで名乗ることとなった。
「では、まず皆さんの実力を見せてもらう。じゃあ、久遠と宮瀬、文人と初絃、史織と瑠花で模擬戦をしてもらう。怪我はさせない程度に頑張ってくれ」
ここまでは全く去年と同じ展開となった。
史織と瑠花の戦いが始まった。お互いに譲らない戦いとなり、時間制限で引き分けとなった。
「次、文人と初絃」
そして俺と初絃が向き合った。
「お願いします」
『ああ』
戦いが始まった。
初絃はすぐに向かってきた。俺はそれをかわして初絃を後ろから剣で叩いた。
「そこまで!」
かわすことができればスピード型には勝てる。ということが分かった。ただ、かわすことはかなり難しかった。それもついこの前までの話。何が転機になったかはわからないが、何かがあって、何か吹っ切れた気がする。
「強いっすね、さすがです」
『ありがと、初絃』
そして竜喜と龍杜は竜喜が勝利した。
「実力は見せてもらった。合宿とはいえ、基本自分でやってもらうことになるので、まあ、休む人は休んで、自分で色々やってください。最終日にくじ引きで対戦相手を決めて模擬戦をやります。それまで自分で頑張ってください」
去年と同様、完全自主トレとなった。今年はどうしようか……
俺たちは、とりあえず部屋割り通りの部屋に別れた。
俺は初絃と同じ部屋になった。あとは、史織と瑠花、竜喜と龍杜だった。
「よろしくお願いします」
『よろしくな』
「あのー、大丈夫ですかね、史織たち」
『どうだろ』
瑠花、史織のことめっちゃ睨んでたしな……なんか起こってもおかしくはない。
「なんていうか、史織、ああ見えて、ちょっとずれてるんですよね、たまに」
『へぇ……』
初絃は人見知りが激しいが。
「あの、質問攻めですみませんが、俺に足りないことって何ですか」
『足りないこと……さっきは早々に終わらせちゃったから、ちゃんと見れてないな……ごめん』
「じゃあ、もう一度、対戦してもらえませんか?」
『……わかった』
なぜか了解してしまった。同室になってしまったことだし、俺もすることは思いついてなかったわけだし、ちょうどよかった。
そして俺たちはさっきまでいたフィールドのところに戻ってきた。
「じゃあ、行きます」
『おう』
初絃はさっきと同じように向かってきた。今思うとスピードはクラスメイトたちとそんなに変わらない気がする。
俺は初絃の攻撃を剣で受け止めた。威力的には簡単に弾けたから……何もわからん。強いか弱いかは。
そして初絃は連撃を仕掛けてきた。
連撃の一撃一撃は結構な威力ではある。さすがに単発には及ばないが。
「どうですか?」
『うーん……連撃の一撃と一撃の間にちょっと隙がある。一撃目で決まんなかったらそこを突かれる可能性はある』
「ほぉ……」
『まあ、1年生でそこまで速くできる人も、間を突ける人もいないと思うから……』
「いえ、教えてください!」
そこまで言われちゃったらなぁ……
『わかった。でも、本気でやれよ』
「わかってます」
『あ、あともう一個』
「なんですか?」
『一撃一撃の威力、もっと出せると思う。なんか、弱い気がする』
「そうですよね……それは前からわかってます。だから、連撃に寄って行ったんですけどね」
『そっか……じゃあ、速度に振った方がいいのかな……そこは、初絃が選びな』
「俺は…………俺は、スピードで行きたいです」
『わかった』