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第二十七話 模擬戦1

 俺と竜喜は、朝、王家二人を教室まで無事に送り届けること。帰り、無事に専属護衛に引き渡すこと、それが主な仕事で、特に苦労はなかった。まあ、行事とかがあれば別だが、特にこれといって行事はない。



「今日は、全員で模擬戦をしてもらおうと思っている」


 井花先生はそう言った。


「トーナメントですか?」

「いや違う。くじ引きで相手を決めて一戦。時間があればもう一戦やるかもしれないが、そんな時間は無いと思ってる」


 藤田希來と井花先生がそんな会話をした。


 属性合宿でやったのと変わらない感じだ。俺や竜喜、龍杜はこの方式でやったことがあるが、他はどうだろう。相手が急に決まると準備ができない、とか思うのか?


 急に相手が決まった時、臨機応変に戦術を組み立てることができる能力は、かなり必要な能力かとも思える。上級2年ともなればなおさらだ。



 そして俺たちは第一体育館に集まった。


 今回のルールは、真剣を使ってはいけないことと、有効打を先に一撃入れた方が勝ち。というものだった。


「第一試合、」


 井花先生はくじ引きの箱に手を突っ込んだ。そして出した二つの紙には……


「竹国空樹、岡崎裕太」


 選ばれたのはその二人だった。


 違うグループ同士の戦いだった。個人の成績だと空樹が9位で裕太が12位だ。まあ、これは戦闘の実力に伴ってるとは限らないから何とも言えないところだ。


「じゃあ、よーい、始め!」


 井花先生の合図で模擬戦の一試合目が始まった。


 始まった瞬間、裕太が飛び出していった。スピード型の流派なのだろう。


「ナナカゼ流……? さすが……速い……」


 隣にいたまろんがそう呟いた。時々まろんも超記憶力を持っているのではないかと考えてしまうほど、的確に流派の解説をする。


『ナナカゼ流って?』

「風属性、スピード型。とにかく速さで攻める。その速さで威力を上げる。そんな流派です」

『へぇ……』


 その流派の解説通り、裕太はすごい速さで空樹に向かっていき、一撃を狙う。でも空樹もそんな簡単に負けるわけにはいかないから、その剣を外側に弾く。そんなのが何回か続き、体育館に剣がぶつかり合う音が響いた。


「あっちはパワー型ですか……」


 まろんはまたそう呟いた。

 1年前と比べると、大分いろんな人の戦闘を見て、学んだ。まろんからそんな印象を受けた。1年前のまろんだったら、二級貴族の実力に圧倒されていた。でも今は違う。そんなことを感じた。


『パワー型ねぇ……』

「炎属性、ヨルハ流……すごい戦いになりそうです」

『すごい戦い?』

「スピード型とパワー型、どういう戦い方をするかによって、どちらにも勝ち目がある……そんな感じです」

『へぇ……』


 なんかすごい戦いになりそうだった。


 そしてお互いに少し焦っていたのか、どちらも流派の技を発動させたようだった。空樹の剣が赤色に、裕太の剣が緑がかった青色に光った。


 そして裕太が向かって行って剣を空樹に突き刺した。練習用の剣だったから体を貫通することはなかったが、空樹は顔をしかめた。


 それと同時に、空樹の剣が体勢が低かった裕太の背中に撃ち込まれた。裕太は地面に押しつぶされるように倒れた。


 お互いに倒れたのだった。


「そこまで! この試合、引き分け!」


 井花先生はそうジャッジした。これはどう見ても引き分けでよかった試合なのだが……


「先生、それはないでしょ……」

「引き分けなんて……」

「「こいつと……?」」


 二人は井花先生にそう抗議した。


「今のは引き分けだろ。文句あんのか?」


 井花先生は少し怒ってそう言った。


 井花先生が少しキレたから、二人はもう何も言わなかった。



「いきなり流派の技が出るとは思ってませんでした」


 まろんはそう言った。


『なんか、すごかったね』


 スピード型の流派を扱う人の戦いはなんか勢いがあって見てて面白い。という超素人な感想を思い浮かべたところで、次の試合のカードが発表された。



「第二試合は…………宮瀬龍杜、藤田希來」


 ここで龍杜が当たった。相手の藤田希來は個人順位8位。龍杜からすれば大した相手ではないだろう。龍杜も余裕そうだった。逆に希來は自信を失い、半ば戦意喪失状態だった。


「これは……やばいな」


 飛翔がそう言った。戦いにならない、そんな感じになりそうだった。



 第二試合はその予想通りになった。龍杜の速さに圧倒され、希來はなすすべなく終わった。これは組み合わせが悪かったとしか言いようがない。そんな結果となった。


 他の人達からすれば、一級貴族の力を見せつけられた、といったところだろうか。先生たちはこういうのを利用するんだろうな……ということまで考えてしまった。


「圧倒されちゃいましたね……見ている側も」

『そっか……』

「文人さんはそうでもないかもしれませんが、結構すごかったですよ?」

『すごくないとは言ってない』

「そうですか」


 まろんとそういう会話をした。なんか今日のまろん、ちょっと変……? 勘違いかもしれないが。



「第三試合、吉坂陽、日和まろん」


 井花先生がそう言った。進級テストの順位の6・7位、そして一点差だった二人だ。これは面白くなりそうだ。


 まろんはスピード型。陽はどんなスタイルだろうか。それによって、勝ち目があるかないかが決まってくる。

 まろんもそんなことはわかっているはずだし、まろんの方が技や流派を見極めることが得意だと思う。



「それでは、始め!」


 井花先生の合図で二人は同時に、一斉に向かって行った。


 二人の剣がぶつかり合って、二人はどちらも攻撃を受け流したように見えた。


 どちらもスピード型なのか……? と思うほどのスピードだった。


 そして次の一撃。陽の剣が紫色に光っていた。


「いきなり流派の技を……!?」


 隣で飛翔がそう呟いた。


 流派のことはあまり詳しくないが、流派特有の技があって、それを出そうとすると、剣がその流派の属性の色に光る。


 前に聞いた属性の中から紫っぽいのは……毒……か?



 そしてそれに少し遅れてまろんも流派の技を発動させた。まろんの剣は黄色に光っている。



 一方俺は、『帰ったら兄ちゃんに貰った流派のまとめ本読んでみるか……覚えられるかはわかんないけど』と、そんなことを思っていた。



 そして陽とまろんの剣がぶつかり合った。速度もあって、すごい音と、かなりの衝撃が走った。あと、地面がえぐれたことによって、すごい土煙が立った。


 煙が無くなった時、どちらも地面に膝を付いていた。


「そこまで。この試合、引き分け」


 井花先生がそう言って、試合が終わった。


 これには異論はなかった。本人たちがそれで納得したからだ。それに、なんか本気で怒ると怖いタイプだとみんな理解しているのもある。

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