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第二十六話 新入生

 翌日、今日から1年生が入学してきた。そして今日から俺と竜喜の護衛任務が始まる。


『今日から……だな』


 俺はひっそり竜喜に話しかけた。俺たちが護衛をすることはまだ誰も知らないからだ。知らない人からすれば、俺たちが話してることは怪し過ぎる行為だ。


「そうだな。っていうか、初絃たちって、どういう感じで来るの? ちゃんと王子として? それとも隠すの?」

『知らない。本人たちに聞けばいい』

「まあ、そうか……」



 そして、初絃(王子)史織(王女)が来た。まあ、見た目で王族だってことはわかりそうだった。1年生もそれはわかっていた。


「うわぁ……」「王子だ……」「王女様……」


 みんなそうささやいた。まあ、そのみんなっていうのは、1年生だけのことだけど。


 そして二人は俺たちの所に来た。


 みんなの視線も俺たちの方に向く。俺たちが上級2年だということは胸のバッジでわかる。


 バッジは進級テストの結果が発表されたあとに渡されたものだ。上級2年が金、下級2年が銀。1年生にバッジはない。


「お久しぶりです! 文人さん」

「お久しぶりです。またお会いできて嬉しいです」


 初絃と史織は俺たちにそう挨拶をした。


「久しぶり。元気そうでよかった。初絃、史織」

『入学おめでとう』


 俺たちはそう返した。


「じゃあ、中行こっか」


 竜喜がそう言って、二人を中に連れて行った。俺も後を追ったが、誰かが俺の名前を呼んだ。厳密に言えば名前ではないが。


「お兄様!」

『瑠花……来たか』

「はい」

『じゃあ、中、入ろう?』

「はい!」


 その時、俺はかなりの視線を集めていることに気づいた。


 王族二人と一級貴族が二人。その全員を呼び捨てで呼び、親しく話す上級2年。そしてその一人を兄と呼ぶ1年生。そりゃ、注目されてもおかしくはなかった。


 ただ、初絃、史織、瑠花、そして竜喜は、そんなの全く気にしていなかった。俺が慣れていないだけかもしれないが。


 俺たちはとりあえず中に入った。そこではクラスの発表がされていた。1年前のあの時を思い出すような光景。少し懐かしく感じた。


 クラス発表によると、初絃が1組、史織が2組、瑠花が3組と、ちょうどよく分かれていた。クラスでの実力差をあまり出さないようにしたのだろう。あとは注目を分散させるためか。


 俺たちは帰りにここで待ち合わせすることにして、そこで別れた。俺と竜喜は上級2年のクラスに、初絃と史織と瑠花は1年生のクラスにそれぞれ向かった。



 そして上級2年のクラスに入ると、いきなり質問攻めに遭った。


「なんでお前ら、王子たちと……」

「なんであんなに王女と仲いいんだ……?」

「もう一人の女の子、何者だ」


 とまあ、質問の内容は主にその三つだった。


「俺たちは、王に頼まれた。あの二人の護衛を」


 竜喜がそう説明した。


「まじかよ……」「すご……」


「それで、あの女の子は?」


 そう聞いてきたのは衛仁だった。


 竜喜は俺に目で合図した。「お前が言え」と。


『あの……瑠花は、俺の、妹で……』


「「い、妹!?」」


 みんなが声をそろえてそう言った。


「文人さん、妹さんなんて居たんですか……?」


 まろんまでそう言った。


『まあな……居たらしい』


 らしい。としか言えない。


「確かに水風家は誰がいるかの情報が少ない。長男しかバレてなかったし……みんなその時になってみないとわからないっていうのもあったけど……」


 と亜里が言った。確かに俺も瑠花も、そういう社会との接点があまりなかったと思える。


 亜里のこの話から、兄ちゃんや竜喜、龍杜は小さい時から知られていたみたいだった。

 それが理由かはわからないが、このクラスには『りゅうき』という名前が二人いる。久遠竜喜と小林龍生だ。


「可愛い妹がいたなんて、兄ちゃんがいることは言ってくれたのに」


 飛翔がそう言った。


『それはやむを得なかったからだ』


 どうにか隠れてた的なことは隠そうと思った。なんとなく、将来、この中の誰かが一級貴族を狙わないとは限らないと思ったからだ。


「隠し子、だろ? 文人」


 竜喜がそう言った。言ってもいいことなのか、これ。


「か、隠し子!?」


 何人かがそう反応した。


『やめろ竜喜。勘違いされる』

「だって、そうじゃん?」

『俺たちがそう呼んでるだけで……』

「まあ、そうだけどさ、いずれみんな知ることだし」

『でも……』


「どういう意味なの? そっちだけで話しててもわからない」


 そう言ったのは倉本継だった。竜喜の話から、二級貴族の子供にはわからないことだとは思う。


「まあ、今は、秘密な?」


 竜喜はそう言った。それが一番いい。秘密の存在ということで隠せる。


『竜喜、何で勝手なことを……』

「別にいいじゃん。どうせみんな知ることになる」


 まあそうだけれども……



 そしてその日は簡単にHRを済ませて帰宅、ということになった。



 上級2年が一番最初に終わり、俺と竜喜は初絃と史織を待つことになった。まあ、俺はどっちにしろ瑠花を待つことになる。


「お、来た」


 竜喜がそう言い、初絃と史織、そして瑠花が来た。


「すみません、待たせてしまって……」

「大丈夫。上級2年はすることないだけだから」

「そうですか……」


 竜喜と初絃がそう話をする。


「文人さん、あの……もしよろしければですけど、お手合わせ願えませんか?」


 史織はそう言ってきた。急に何を言い出すのかと思った。


『そ、それはちょっと……』


 上級2年が入学したばかりの1年生と勝負をするのはちょっとな……と思った。しかも一級貴族と王族だし。


「そうですよ、いきなりなんて……」


 瑠花がそう言った。おっと……? 何かが始まる予感だ……


「なんなんですか? あなた」

「水風瑠花。水風文人の妹よ」

「あら。私のことはご存じ?」

「まあ、なんとなくは」

「なら、私に言い返してくるなんていい度胸ね」


 お互いに口調というか、性格が崩壊していっている気が……


「妹ならば当然のことです」


 俺が殺されるみたいな状況かよ……


「なら、あなたがお相手をして下さるのですか?」

「何でそういうことになるんですか」


 おいおい……


『ちょ、ちょっと待てって。言い合いすることじゃないし、こんなとこですることでもない』


 とにかく二人を静止した。


「すみません、お兄様」「文人さん、すみません」


 俺には謝ったが、お互いに謝る気はないみたいだった。


『お互いにイメージを下げるだけだ。王族、一級貴族、どちらも。他の人にも迷惑をかけることになる。今後気を付けた方がいいよ』


 俺は二人にそう言った。


『史織、勝負はまた今度な。どうせ勝負することになる』


 属性合宿で。


「わかりました……すみません」


 史織は申し訳なさそうにそう言った。


『瑠花もありがとな。でも、やりすぎるなよ』

「はい。お兄様」


 瑠花はちょっと不服そうだった。


 そしてそれを遠巻きに竜喜と初絃、そして上級2年の面々が見ていたことに今になって気付いた。


 まあ、見られたからどうこうって話じゃないけど、なんかなぁ……


 そんなことを思っていると、距離を取ってた竜喜たちが近寄ってきた。


「まあ、帰るか。とりあえず」

『そうだな』


 とりあえず今日は無事に帰ることができた。


 家に帰ってから、瑠花が史織と言い合いをしたことを誰かに報告するなんてことはしなかった。俺もそこまで心が狭いわけじゃない。次何かあったら別だけど。とりあえず今は何も言わないでおこう。

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