表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/117

第二十三話 王子・王女

「他、何かある人は?」


 ……


「じゃあ、今年の会議は終わりにしよう」



 王がそう言ったから、みんなが一斉に立ち上がり、帰り支度を始めた。


「あ、そうだ」


 その声で、みんなの手が一旦止まる。


「久遠の長男、水風の次男、ちょっと残ってもらえるか?」


 王はそう言った。一瞬思考が停止した。


 まじかよ……


「わかりました」


 竜喜はそう言った。それにつられて俺も『わかりました』と了承した。


 そして王も含めて全員が出ていったあと、俺と竜喜は王の護衛の人に連れられて、王の部屋に案内されることになった。


 竜喜と並んで歩くのはなんか気まずかった。



「なあ」


 竜喜が急に話しかけてきて、体がビクッと驚いてしまった。


「そんなびっくりすることないだろ……」

『あ……うん……』

「お前、結構、強いんだな」

『うん……あ……うん』

「ん?」

『いや……なんか急に話しかけてきたなーって』

「まあ……」

『学校ではあんな態度なのにさ……何で急に?』

「言っとくけど、俺として、強い奴にはそんな態度は取らないよ? まあ、龍杜は知らないけど」

『そうなの?』

「ああ」


『でも、なんで?』

「俺たちってさ、いつかは、剣士団に入る訳じゃん?」

『うん』

「それでさ、危険な現場に行ったりもするわけじゃん?」

『そうだね』


 知らんけど。


「そういう現場で、仲いい奴が死んで、それで狂っちゃったりとかさ、そういうの、嫌なんだよ」

『うん』

「それで、そういうのが無いとは言えないけど、簡単に死なない、俺が助けなくてもいい、そういう強さを持ってる人だけ、仲良くする。他は、わざと突き放す」


『そうだったんだ……』

「これで、わかってくれたか?」

『まあ……うん』

「最初、お前は意識が戻ったばっかで、強いとは思ってなかった」

『まあ、そうだよな』

「でも、違った」

『うん』


 そこまで話したところで、王の部屋に到着した。俺たちはその部屋の中に入った。



「失礼しまーす……」

「おお、よく来たね」

「はい。何の御用で……?」

「頼みたいことがあってな、とりあえず座ってくれ」


 俺たちは王に促され、部屋にあったソファーに腰かけた。


「それで……?」

「いやぁ……私の子供達が来年、王国高等剣士学院に入学するんだよ」

「ほう」

「それで、君たちに護衛を頼みたいと思ってな」

「でも、ここには、プロの護衛もいるわけだし……」

「学院の雰囲気を壊すわけにもいかないからな」

「そうですか……」

「引き受けてくれるかい?」

「どうする……? 文人」

『俺は、どっちでも』

「じゃあ、引き受けさせて頂きます」

「そうか。感謝する。だが、生活に支障がない程度に頼むよ? 成績を落とされてもあれだから」

「わかりました」『わかりました』


 そして王はドア付近にいた護衛に合図した。するとドアが開き、二人の子供が入ってきた。


 一人は紺色の髪の男子。もう一人は、茶髪の女の子だった。


「長男の初絃ういとと、長女の史織しおりだ。どちらも年は15だ。ちなみに初絃の方が兄だよ」

「はぁ……」


「ほら、自己紹介を」

「初絃」

「その妹の史織と申します」


 初絃は反抗期真っ只中って感じだった。史織は普通に姫って感じだった。


「先輩として頼む。実際、身分は一級貴族と王族は対して変わらない。厳しく見てやってくれ」

「わ、わかりました」




 ということで、俺たちがこの二人の面倒を見ることになった。


「よろしくお願いします」


 史織は少し微笑んで、そう挨拶してきた。


『よろしく。水風文人です』

「久遠竜喜です。よろしく」


 俺たちも自己紹介をした。


「すみません。初絃、いつもこんな感じなので」

「全然大丈夫」



 そして俺たちはフィールドに向かった。史織によると、初絃は強いことを確認しないと滅多に話さないのだという。



「強いのは?」

『……こいつが主席だ』

「じゃあ、勝負」



 そういう短い会話を挟み、初絃と竜喜が戦うこととなった。


 戦いはそう長くは続かなかった。なぜなら、初絃はそほど強くはなかった。


 初絃が剣を向けて、向かってくる。竜喜はそれを剣で受け止め、初絃の剣を弾き飛ばした。


「え……」


 初絃は思わず声を漏らした。初絃からしたら、すごく強くて、高度な技術に見えたのだろう。でも、竜喜がすごいというよりは、初絃が大分弱かったっていうのがあると思った。


「すげー……」


 初絃は竜喜のことを認めたんだと思う。


「これから、よろしくお願いします」


 初絃は竜喜に丁寧に挨拶した。


「初絃が竜喜さんなら、文人さん、私のこと、よろしくお願いしますね」


 史織はそう言った。


『え……あ……よろしく』


 急に話しかけられたから、反応が変な風にになってしまった。それでも史織は、にこっと笑ってみせる。すごくいい子だ。出来すぎてるくらいに。


「私は、史織って呼んでもらっていいので、私は、文人さんって呼ばせてもらってもいいですか……?」

『ああ。もちろんだよ。こっちこそ、呼び捨てでいいの?』

「はい! 先輩なので」


 なんかほんとにいい子だな……



 それに対して竜喜と初絃は、なんかすごいことになっていた。


「色々教えてください!」

「別に教えることなんて何も……」

「いや、でも!」

「俺が教えられることがあるのなら、学校なんて必要なくなるんだよ?」

「えぇ……」


 兄弟かよ……


 なんか見てて面白かった。なにが面白かったかはわかんないけど。




 そして俺たちは、今日はそれで帰った。護衛をするのは入学してからだから、まだ時間がある。


「いいなぁ……文人」

『え?』

「だってさ、史織ちゃん、可愛いじゃん」

『まあ……可愛いけど……』

「なんだよその反応」

『俺、そういうの、疎いし……』

「さっき顔赤くなってたぞ」

『え!? やばい……』

「あはははは! じゃあな、文人」

『じゃあ……』


 俺は竜喜と別れた。


 今日は竜喜のイメージがガラッと変わった。実はいい奴で、自分を守るためにあえて突き放していた。なんか、それがわかったら、仲良くもできそうな気がした。一緒に護衛なんかも任されたわけだし。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ