第二十二話 貴族会議
「文人、今日空いてるか?」
父さんにそう言われた。まあ、休みだし、空いてないことはないけど……
「空いてたら貴族会議参加してほしい」
『……予定はないけど……貴族会議って?』
「文字通り。貴族の会議だよ。まあ……いるだけでいいから」
『えぇ……』
「波留人は準備で忙しいからな」
『わ、わかった』
しょうがなく了承した。いるだけでいいなら、断る理由もない。
そして連れてこられた場所はお城だった。
『すご……』
「王の城だからな」
『いるんだ……王様……』
「まあな。王は裏で色々指示したりしてるから、ほとんど表には出てこない。そう思うのも無理はない」
『へぇ……』
確かに学校の名前が王国高等剣士学院なら、ここが王国で、王様がいるっていうのは何となくはわかっていたが……実際に感じるのは初めてだもんな……
そして俺たちはお城の中に入っていき、会議室に案内された。
そこにはもう数人の人が来ていた。父さんと仲良さそうに挨拶を交わしたから、恐らく一級貴族だと思う。
そのあと、続々と人が入って来て、その中に竜喜もいた。
最後に、一人の人が入ってきた。護衛的な人が二人付いていた。この人が王様なのか……?
「よく集まってくれた。ありがとう。例年のように貴族会議を始めようか」
その人がそう言って、席に着いた。
「王、いつものようになさるのですか?」
護衛の一人がそう言った。
「そうだ。堅苦しいのは苦手でな」
「ですが……」
「今更文句を?」
「……すみません」
今から何をするって言うんだ……?
「まず、えーっと、坂野家。王国剣士団、いつもありがと」
「別に、仕事だから……まあ、今年は犠牲者も少なかったし、良かった年だと思うよ」
「そっか、それはよかった」
まさかのタメ口で話し始めるとは……さっきのはこういうことだったのか……
「まあ、都加左がちゃんと指示してくれたおかげだから」
「お互い様だな」
坂野家の当主、名前は知らない。特徴としては、髪が赤っぽい色をしていることだろうか……? 結構明るい性格っぽかった。坂野家は王国剣士団を率いているみたいだった。
「次は……相原家。司法の方はどうだ?」
「何事もなく……まあ、通常通りかな」
「そっか。その調子で来年も頼む」
「わかってる」
相原家の当主か……? こっちも名前は知らない。こっちは司法の面を担当しているようだった。性格は冷静な感じで、特徴は髪色が青っぽいところと、性格相応の目つき。いかにも司法担当って雰囲気がした。
「次は……久遠家。調査団の方はどうだ?」
「今年も去年を上回る結果となった。注意した方がよさそうだ」
「そうか……坂野、来年はさらにそこも注意しよう」
「わかってる」
調査団……? どんなものかは知らないが、王国剣士団が動くくらいだし、重要であることはなんとなくわかった。
「あと、久遠家の長男、主席だそうだな」
「ああ」
「その子か?」
「うん」
視線が竜喜に集まった。
「さすがだ。これからも頑張ってくれたまえ」
「はい」
王は竜喜を褒めた。なんでそんなところまで知ってるのかはわからないが。
久遠家の当主、竜喜の父親は、坂野家当主と、相原家当主の間位の性格で、調査団を率いているようだった。特徴である髪の色は竜喜と同じように、水色だった。
「次、花宮家。えっと……警察の方はどうだ?」
「事件数に変化はあまりない。ただ、所属する者の質が落ちてきているような気がする」
「そうか……宮瀬、どうなってる?」
「志望者は結構いて、成績や実績で割り振ってるはずだから、これ以上上げるのは無理だと思う」
「じゃあ、警察の教育システムの強化が課題だな」
「そうだな……小羽、相談乗ってくれるか?」
「もちろんだ」
結構どの家の当主も友好的にやっているようだった。それぞれ助け合えるところは助け合って……的な感じで。
花宮家は属性合宿で一緒になったあの人も来ていた。下の名前はわからないが。
親と子はやっぱり似てるんだなぁ……と実感した。
「あと、花宮のところも、主席だってな」
「ま、まあ……」
「下級2年だって結構すごいと思え」
「まあ……そうなんだろうな」
下級2年の主席は花宮家のあの人だったのか……注目されないから知らなかったな……
「次、真宮家。検察の方はどうだ?」
「まあ、誤審議もなく、普通に終わった」
「じゃあ、その調子でな」
「ああ」
真宮家は検察の担当なのか……真宮って、属性合宿でいた人だよな……? その人は来ていないみたいだった。よく見ると龍杜もいない。まあ、各家二人なら、外れて当然か……
こっちも見た目は親子でよく似ていた。
「真宮のところは、次席か……」
「ま、まあ……」
「1・2をとれてるのはいいことだ」
「でもな……」
「上級2年だけが全てじゃない」
「まあ……な」
やはり、上級2年じゃないと実力を示せないっていうのはあるみたいだった。よかった……上級2年になれて……
「次、宮瀬家、就職管理、うまくいってるか?」
「まあ、概ねって感じ」
「そっか」
宮瀬家は就職管理をしてるのか……ハローワーク的な感じか……?
「宮瀬のとこの次男、次席か」
「ああ。無事に上級2年になってよかったよ」
「なるとこはゴールじゃないからな」
「わかってるよ」
王はやっぱり、それぞれの子供の情報はほとんど知ってるみたいだった。
「えーっと、小羽家、教育……どうだ?」
「どうだと言われましても……」
「だよな……まあ、引き続き来年も頼む」
「はいよ」
小羽家、恐らく属性合宿の講師やってた人のところだ。髪色は綺麗な白だ。性格も穏やかそうで、同学年だったら、仲良くなりそうな感じだった。
「最後、水風家。行政だな」
「行政は水風家というより、都加左たちでやってるじゃん? ただの補佐だし……」
「まあ、そうかもな……でも、いつもありがとな」
「ああ……」
父さんも王と仲良くやっているようだった。あと王は都加左というみたいだった。
「あと、水風のところは、上が上級2年の主席、下は3位か……すごいな……だって下の方はずっと意識不明だったんだろ?」
「まあ……よく頑張ってくれてるよ」
「そうだな。今日は長男じゃないんだな」
「あ、ああ。次男の文人。3位だった方だ。長男は準備で忙しくてな」
「そうか。君の頑張りを期待してるよ」
『は、はい……!』
急に話かけられてびっくりした。でも、能力を隠す裏技は忘れてなかった。王は、なんか優しそうな人だった。
「辺境になったのか……掛け合ってあげてもいいが……?」
「実力で行かないと、本人も納得しないと思う」
「それもそうだな」




