第十八話 進級テスト5(グループ戦1)
俺たちはとりあえず中に入った。
そしてそのあとすぐ、ミッションの知らせが届いた。
「『竜の卵を1つ、ゴブリンの肉片を3切れ持ってくること』か……」
「しかもゴブリンは別個体じゃなきゃいけないんでしょ……?」
竜の卵ってそう簡単にあるものなのか……? っていうか、大きいのか……? 持ってこれない大きさではないはず……
「まあ、とりあえず、進んでみよう。何か出るかもしれないし」
『そうだな』
『なんか、この類のやつの情報持ってない?』
「大きい竜は、竜の里にしかいないはずです。なので、大きさはそんなに大きくはないはずです。それか、本部の竜の卵を仕込んであるか……だと思います」
まろんがそう言った。
「多分、環境のこととかを考えて全部仕込みだとは思いますけど」
「さすがまろん」
「ゴブリンの肉片は仕込みだったら結構大変かもしれないです」
「なんで?」
「主が気付いて出てくるかもしれないです」
「え……もし、出てきたら、どうしたら……」
「倒すか逃げるか。倒しても文句は言われないと思います」
倒すしかなくなるときってどんな時だよ……
俺たちはとりあえず進んだ。
そしてゴブリンを途中で見かけた。襲ってくる様子もなかったからそのまま後を付けていくと、台座みたいになってるところがあった。
「あれって……」
「本部の竜の卵ですね」
「まろん、見た目まで覚えてるの?」
「いや、普通の竜の卵は色が全体的に黄色いんです。あれは白に緑の斑点、普通じゃない竜の卵は本部の竜の卵です。そこまで記憶力は良くありません」
まろんはキレ気味に、でもひそひそとそう言った。
兄ちゃんだったら覚えてるんだろうな……そんなこととかも思った。
そしてゴブリンたちがその台座の前で何か話している。ゴブリンの言語はわからないから何を話しているのかさっぱりわからない。
『どうする?』
「まあ、ちょっと様子見ますか」
『そうだな』
そしてしばらくゴブリンを観察していると、1匹のゴブリンが俺たちに近づいてきた。
実際見てみると、ゴブリンは俺たちがしゃがんだ高さと変わらないくらいの身長だった。
「×××××××××××?」
なんて言ってるのかさっぱりわからない。
「な、なんて言ってるの? まろん」
「飛翔バカなの? そんなのわかる人この世界にいるわけないでしょ!」
もしかしたらいるかもしれないよ? 俺の能力みたいに。
ゴブリンは俺の袖を引っ張った。俺は引っ張られるがまま、台座のところに連れて行かれた。
「ちょ、文人!?」
飛翔、風音、まろんもついてくる。
そしてゴブリンは台座の上の卵を指差した。
卵をよく見てみると、周りに少し破片が散らばっていた。心なしか少しひびが入っているようにも思える。
もしかして……
『生まれるかも』
「え?」
『卵、生まれるかも』
「なんでそんなのがここに……?」
『知らないよそんなの』
「なんか、ちっちゃくないですか」
『え?』「え?」「な?」
3人が同時にまろんの言葉に反応した。
「いや、そのー、本部の竜だとしても、卵のサイズ、こんな持ち運べるようなサイズじゃない気がして」
『あー……ありえるか……まだ生まれる可能性がないから、ここにってことか……』
一応生まれそうな卵をこんなダンジョンに放置するほど馬鹿ではなくて良かった。卵はちょっとのことじゃびくともしないようにできてるはずだから、多分大丈夫と思ったんだろうな……
「とにかく、どうする?」
『生まれたなら、生まれたで、連れて帰ればいい』
そして俺はスマホのカメラを作動させた。とりあえず証拠として撮っておくのが有効だと考えたからだ。
「何してんの?」
『証拠』
「あー……」
そして卵からヒナがかえった。
「うわぁ……」
飛翔は思わず声を漏らした。
ゴブリンたちも喜んでいるように見えた。
「クゥ……」
子竜は小さくそう鳴いた。そして少し飛び上がり、俺の顔のあたりまで飛んで、落ちた。俺はなんとかその子竜を受け止めた。
子竜はまた飛び上がった。そして俺の髪を噛んだ。
『痛っ……』
そして子竜はまた墜落していく。それをキャッチすると、また子竜は飛び上がり、俺の頭に乗った。
「乗った……」
「乗りましたね」
「すげぇ……」
ちょっと重い。そんな頭になんか乗せることなんてないからすごく重く感じる。
『ど、どうなってるんだ……? これ、』
「まあ、いいんじゃない? なんか、文人の上って安心感ある」
飛翔は何を言っているんだ? まあ、言いたいことはわからなくもないが……
「と、とにかく、一つ目クリアってことだよね」
「そうですね」
『そうだな』
そして俺はゆっくりしゃがみ込んだ。
『みんなありがとな』
ゴブリンたちにそう言った。ゴブリンたちはすぐにその場から逃げていった。『帰った』の方が正しいかもしれないが。
そして俺はゆっくり立ち上がった。
「じゃあ、行くか。次のとこ」
そしてゴブリンの肉片を探した。さっきのゴブリンに肉片をもらうのはちょっと悲しすぎる。仕込みアイテムであることを願って俺たちは探し回った。
小さい猫みたいな小動物が結構な速さで小道から出てくるのを風音が発見した。もしかしたら、主とやらから逃げてきたのかもと思い、そっちの方に向かった。
「ほんとにいるのか? 主」
「いるんじゃない?」
「あくまでも、憶測だから」
そんなことを言い合いながら、その小道を進んだ。
小道を進んだ先に、かなり大型の狼みたいな奴がいるのを発見した。
「なにあれ……」
「わからない」
まろんにもわからない魔物のようだった。




