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第十七話 進級テスト4(グループ戦―準備―)

 翌日、予定通り地図が配られた。


「読みにくね……? これ」


 飛翔がそう言った。


 地図に書いてある道はすごいグネグネしていて、すごく分かりにくかった。本番はとても使い物になりそうにない感じもした。


「とにかく、これを使うしかないってことですね……」

『まろん、地図は得意か?』

「いえ。全然です。よく方向音痴って言われます。自分では、あまり思ってないですけど」

『あー……それは本物の方向音痴だな……』

「そうですか」

「まろんもできないことだし、今回やばいかもな。文人は得意?」

『得意ってほどでもない。人並みくらいには』

「あー……でも、文人の人並みってちょっとずれてるんだよな……」


 俺、いつ、何が人並みだって言った?


「とにかく読んでみたら……?」


 風音がそう言った。

 ぱっと見じゃわかんないもんな。


 そして机に地図を広げた。


「グネグネしてるけど、分かれ道がいっぱいあるわけではないみたいね」

「まろんが言う通りだ。でも、一歩間違えたら終わりって感じだな」


 まろん、飛翔がそれぞれそう言った。



「これってレベルどれくらいかな……だって魔物って、強いんでしょ」


 風音はそう言った。


「わかんない。お父様の話だと、対魔物と対人間では全然違うって……」

「まじかよ」


 まろんの情報に反応するのはいつも飛翔だ。なんでそうなるのかはわからない。


「でも、純性と悪性では違うところも多いらしいし、お父様がどっちの事を言ってるのかはわからないから、あんま鵜吞みにしない方がいいかも」

「そっか……」


「文人は?」

『ん?』

「どう思う?」

『うーん……一つの間違いが命取り。速さも大事だけど、慎重に行った方がいいと思う』

「そうだよな……」


 そして俺たちはルートを考え始めた。

 ルートだけでもかなり複雑な上に、ミッションがあるから、それはそれで大変そう。ミッションもポイントは書いてあるけど、どんなのかはわからない。


「どうしよっか」

『予測できないなら、どうするべきか……ってこと?』

「そう」

『まあ、最大限の予測と最大限の準備、これしかないんじゃない?』

「そうですよね、文人さん」

『ここは協力してさ、みんなで乗り越えよう』

「うん」「わかってる」「わかってます」


 そして会議を終えた。



 帰る時、兄ちゃんと少しこの話をした。


「迷宮か、明日」

『うん』

「迷宮番号いくつだ」

『え? そんなの……わかんないけど……』

「マップの上に書いてあっただろ」

『マップ持ってるの俺じゃない』

「そうなんだ……M3(エムスリー)だったら気をつけろよ」

『なんで?』

「M3は他のとこが行くとことは全然違う。他はBから始まるとこなんだけど、M始まりはまともに調査されてなかったりする。だから、普通に危ない」

『なんでそんなとこが……』

「あいつらにとって、訳アリクラスは重荷でしかない。印象を下げる。だから、ここで殺す。事故として」

『そんなのって……』

「文人もさ、テストで気付いてるんじゃないの?」

『まあ、なんとなく……』


『……表向きは貴族が支配しているが、それを利用して身分に関係なく、頂点に立とうとしている人がいる』

「まあ……そうだな。最高峰の一級貴族に勝つことで、自分を強く見せて、自由をさらに奪う。それは俺たちもだ。実際、ここの教師は三級貴族が多い。一級・二級貴族が親に言えば、とっととそいつの首は飛ぶ。でも何されるかわからないから何もできない。恐怖で支配されてるんだ」

『でも、それは貴族制度こそがそういう感じじゃないの?』

「いや、今はそうじゃない。昔のなごりがあって、未だにやってるとこもあるけど、それは久遠家と宮瀬家くらいだから。ただ下の方のなごりは消えなくてね……」

『そうなんだ』

「うん。今の貴族制度は強さの序列だよ。権力の序列かって言われたら、ちょっと違う」

『そう……なんだ……』


 考えてた貴族制度とはやっぱ変わってきてるのかな……


「まあ……考え方は家によって違うからさ、一概に言えることでもないけど」

『へぇ……』


 俺は悪い年に生まれてしまったようだった。

 未だに権力を振りかざす感じの思考を持ってる人がちょうどどっちもいる年に生まれて、こうやって学校で出会ってしまった。能力とかで運結構よかったなって思ってたけど、意外と運悪いかもな……(結論、普通)


「強さの序列だったら、無くなる必要はない。でも、権力の序列だったら、要らないとは思うけどな。まあ、水風家がもともとそんなに権力を持ってなかったって言うのもあると思うけどな」


 水風家の歴史か……ちょっと興味あるかもな……


「まあ、明日頑張れよ」

『うん。兄ちゃんも』

「ああ」


 兄ちゃんは明日、迷宮のやつの運営に回るらしい。まあ、上級2年が訳アリクラスのを担当することはないだろうから、こうやって話を聞いたわけだが……


 なんかいい情報がもらえたと思う。




 翌日

 グループ戦当日がやってきた。


「頑張ろうな」

「うん」「わかってる」『ああ』


『あ、まろん、マップちょっと見せて』

「はい」


 そしてマップを受け取った。

 昨日兄ちゃんが言っていたM3マップなのかどうなのか、それを調べようと思った。


 そのマップの左上に書いてあった文字は『M3』だった。


『やば……』

「どうしたんですか?」

『いや……兄ちゃんから聞いた話で……やっぱなんでもない』

「なんですか」

『ここだけの話なんだけど、』

「はい」

『あの二人には言わないでほしいんだけど、』

「はい」

『このM3っていう迷宮は、他のと比べて、調査が進んでなくて、危ないとかっていう……』

「えっ!」

『しーっ』

「すみません」

『とにかく、なにがあるかわかんないからさ、気を付けといて。俺もいざとなったら、どうにかできるかもしれないから』

「わ、わかりました。でも、言った方がよくないですか……? こんなこと」

『不安にさせてもあれだからさ』

「わかりました」


 まろんに根回しはできた。これでなんかあっても時間稼ぎくらいはできるだろう。



 そしてグループ戦が始まる。グループ戦はそれぞれのグループが別々の迷宮に行って、そこでいくつかのミッションをこなし、出てくるまでのタイムを競う。迷宮の広さやレベルはほぼ同じ……らしいんだけどなぁ……


 普通よりは大きいモニターに数字が表示される。

 そして先生か生徒かわからないが、誰かのアナウンスが流れる。


「これからグループ戦を始めます。皆さんには決められた迷宮に入ってもらいます。そしてその中で、特定のミッションを行い、出口にたどり着くまでの速さを競います。ミッションはリーダーに配布したスマートフォンに通知します。そのスマートフォンにマップも表示できるので、それで現在位置の把握をしてください」


 ほぉ……そんな便利なことをさせてくれるのか……結構甘いな……

 いや、恐らく、中に入ればスマホを確認する暇なんてないだろう。

 これは入ることを拒否されないための対策というか、保険というか……そういうものだろう。


「それでは、スマートフォンを配布してください」


 俺は担当の先生か生徒かわからない人から結構乱暴にスマホをもらった。


 訳アリクラス……嫌われてるな……当たり前か。



「それでは行きます。3・2・1・スタート!」


 その合図で俺たちは迷宮の中に入っていった。

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