第十四話 進級テスト1(筆記試験)
2月になった。
最近兄ちゃんは卒業の準備に追われていた。
俺たちは進級テストの時期がやってきていた。上級2年か、下級2年かを決めるテストだ。
「えー、進級テストは3つだ。学力と個人の実力、あとグループの実力だ。学力テストと、1対1の模擬戦、あとグループ戦。この3つが行われる予定だ」
先生がそう言った。
「グループ戦って何するんですか」
珍しく風音がそう聞いた。
「グループ戦は迷宮を抜けるっていうやつだな。ミッションを遂行し、ゴールまでいかに早く通り抜けられるかが大事だ」
先生はそう答える。
この世界には迷宮があるんだ……ということは魔物も……
「純性魔物もいるんですか」
今度は飛翔がそう聞いた。
「そりゃ迷宮だからな。まあ、悪性はいないよ」
この世界の魔物には純性と悪性という区分があるみたいだ。名前からして悪性は悪い奴って感じだな……
「悪性がいないことくらい知ってます。居たら大問題でしょ」
その点については飛翔も意外と詳しそうだった。
「そんな当たり前のこと、知らない方も問題よ」
まろんは飛翔にそう言い放った。飛翔はちょっといじける。
まあ、俺はその知らない方の人なんだけどな……
「とにかく、明日からテストだから準備しとけよ」
先生はそう言い、今回のテストのプリントを置いて教室を出て行った。
「対策するにもできないしな……」
飛翔がそう呟いた。
テストは入試と同じ国語、数学、理科(化学・物理)。全部で400点満点。上位のグループは90点は取ってくる。問題が元居た世界とだいぶ違うっていうのもあるけど、全部90はさすがにキツイよな……
「まろんとか迷宮入ったことないの?」
「あるわけないわ。馬鹿なの?」
飛翔とまろんが言い合う。
「迷宮は普通の人が入れるところじゃない。剣士学院の試験か、剣士団の強化かでしか使われないわ」
まろんがそう付け加えた。つまりは1年生はみんな初めての場所ってことか。それなら平等だな……
「どう? 点数取れそう?」
風音がそう聞いた。
「まあまあ……平均くらいかな……」
飛翔がそう答えた。
確か入試の平均点は1教科あたり80点くらいだった。
「風音は?」
「僕は……まあ……まあ……かな。平均よりはいけるよ……多分」
風音は自信なさそうにそう答える。
「まろんと文人は?」
「私は……少なくともあなたよりはいけますわ」
まろんがそう答える。この2人、仲いいんだか悪いんだか……
「文人は?」
『まあ……できないことはない』
良くもなく悪くもない……というイントネーションで言った。
「やっぱ文人はすげーな」
飛翔、俺はそういう意味で言ったんじゃない。
テストの時にできるという人はほとんどいないんだよ……?
そんなこんなでテストの日がやってきた。
「はい、じゃあ国語いくぞー」
国語の問題が配られた。この世界の国語は主に物語の読み取りだ。個人的には漢字と古文と文法がないのは嬉しい。
中には3つの物語があって、全て昔の剣士にまつわる伝説だった。
歴史あるじゃん……
と少し思った。なぜこれを歴史という学問として教えないのか不思議だった。
問題を解き終え、最初に思った、歴史が存在しない理由について少し考えた。
まずこの世界の歴史が剣士とか戦争とかそういうものだけだったと仮定して考える。学問とするには他の科目じゃ押さえられないような内容である必要があるからだ。
歴史が科目として存在した場合、それは一般人(平民)も学ぶこととなる。その結果、剣士を目指す平民が増えるということになると、貴族からしたら嫌なことだろう。
それかな……? それだ。
すぐに答えが出てしまった。
「はい、そこまで」
国語が終わった。
回答が回収されて一気に気が緩んだ。
「どうだった?」
「まあまあかな……」
「普通くらいかしら」
『同じく』
「まあそうだよな」
国語に関しては合ってるとか合ってないとかわかんないから何とも言えない。
続いて数学が始まった。数学は向こうの世界と変わっているところはあまりない。つまり、普通の高校と変わらない内容だ。元々数学は得意だったから特に問題なく終わった。
「はい、そこまでー」
こっちも回答用紙が回収され、休み時間になった。
「え、どうだった?」
数学こそそれが聞きたい。
「いや、結構難しかった」
「私も」
え、ガチかよ。
「飛翔は?」
「いや難しかったよ? ふつーに」
マジかよ……
「文人は?」
『あー……ま、まあまあかな』
この世界の人は教科は理系なのに脳は文系なのか……?
まあ、理系でも数学嫌いな人多いっていうし……
「さすが文人だな」
「文人さんすごいです!」
え、あ、ああ……
「あそこの、3番、3番さ、いくつだった?」
『えっと……16……』
「まじかーっ」
「え、そこ間違えたの飛翔、そこ基本だよ?」
「いやぁ……」
「ほんとです。基本ができていないとなにもできないじゃない」
飛翔はすごい責められる。だんだん可哀想に思えてきた。
『ま、まあ、合ってるとは限らないからさ』
一応フォローしとく。
そして最後の教科、理科が始まった。理科も数学同様向こうの世界と変わらない。まあ、化学と物理が一緒にやられることはない感じはするけど……高校の理科がどんなのかわかんないから比べようがない。
これだけ200点だから結構ちゃんとやらないとまずい。と思ったから復習しといてよかった。
「はい、そこまで」
筆記試験の部、終了。
「うわぁーっ! 終わったーっ!」
飛翔がそう叫んだ。
無事に終わってよかった。
「えーっと、今日はこれで終わりで、まあ、自由に帰ってください。明日から個人実技の模擬戦が始まるんで、各個人で準備しといてください」
先生はそう言って教室から出ていった。
「まじか……明日からか……」
確かにテストの次の日に個人戦があるのはキツイ。でも「いついかなる時でも戦えるようにしておくべき」というのが剣士であるとも思う。
そういう剣士を育てるとこならそんなハードスケジュールでも納得がいく。
「まだ一日あると思う方が妥当だよ」
風音がそう言った。確かにそうだ。
「そっか……そうだな」
飛翔も納得したみたいだった。
「っていうか、模擬戦って誰とやるの?」
飛翔がそう言った。
「先生じゃない? さすがに生徒同士では戦わせないでしょ」
「まあ、それもそうだな」
先生となら能力も使えるな……それがあれば満点も夢じゃないな……
俺はそんなことを考えていた。
「文人は能力のことどう思ってる?」
家に帰る途中、兄ちゃんからそう聞かれた。
『まあ、能力を持つことはすごいことだと思う』
「その能力がどんなものかわかってないものでもか?」
『うん。むしろそっちのほうが』
「そうなの?」
『その方が、なにかあった時に使える』
「そうだけど……文人の能力は何があるかわかんない。簡単に相手を殺せるかもしれない」
『そこは気を付ける。でも、模擬戦とかで負けることがないなら、それはそれでいいかなって』
「負けることはない……と」
『多分ね』
まあそれも能力を最大限使ったときだけど。
「誰も知らないのはリスクと背中合わせなんだよ?」
『そんなの……わかってるよ……心配なのは俺も同じ』
兄ちゃんには自分の心配をしてもらいたいところだ。
「まあ……そうだよな……気を付けろよ」
『ああ。わかってる』
兄ちゃんは心配し過ぎなところがある。心配する気持ちもわかるが。




