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第十二話 団体戦1

「文人さん、おはようございます」


 いつも通りまろんが挨拶してくれる。


『おはようまろん』


 俺もいつも通りそう挨拶を返す。


「文人おはよう」

「おはよー」


『おはよ』


 こっちもいつも通りだ。


 でも今日は、いつも通りの日ではなかった。



「いた。お前……」


 教室に誰か来た。声がした方を見てみると、そこには久遠竜喜、宮瀬龍杜、他そのグループメンバーらしき人がいた。


「だ……誰? あの人」


 飛翔がこっそり聞いてきた。こういう時にこの能力が役に立つ。


『同じ一級貴族の久遠と宮瀬。あと多分そのグループメンバー』

「そうなんだ……ありがとう」



「来いよお前」


 竜喜は俺を指さした。嫌な予感しかしない。とりあえずそいつの前に立った。


「よくもあの時……」

『それが実力ってもんだろ?』


 こいつらと話すときはあの秘策をやっている。


「くっ……」

「恥をかかせる真似は許せねぇ。急に出てきた奴になんてもっとだ」


 2人そろって負けたくせに……負け犬が。


『実力がなきゃやってけない。そんなことわかってんだろ』


 喧嘩になってしまった。周りに人が集まりすぎると困る……



『じゃあ、グループで対戦するか?』

「え?」

『ムカついてるんだろ? 俺がどちらにも勝ったこと。訳アリクラスのくせに最下位じゃないこと』

「……」

『だったら勝負すればいい。それなら納得いくだろ?』

「……わかった。ただし条件つきでやろう」

『どんな条件だ?』

「こっちが勝ったら、全員退学してもらう。そっちが勝ったら、そっちの要求を聞く」


 退学か……俺だけならまだしも、他も巻き込むわけにはな……


「こっちが勝ったら、こうやって関わってこないでくれますか?」


 まろんがそう言った。


「そっちが勝ったらな。まあ、そんなことないと思うけど」

「やってみないと分からないですよ」

「どうだか」

「文人さん、私たち、やりますよ」


 他の2人の方も見る。二人ともうなずいた。


『みんな……じゃあ、こっちが勝ったら下に見たり、そういう態度をやめること。そっちが勝ったら自主退学する』

「じゃあ……」

「審判やろっか?」

『せ、先生……』

「いいよ。今日の放課後。第一体育館に集合。観覧は自由。戦闘妨害行為禁止。1対1で戦い、2点ずつで同点になった場合は代表による最終戦を実施する。これでどうだ」

「わかりました」


 俺もとりあえずうなずいておいた。


 俺たちの条件として退学を求めなかったのは俺(水風家の息子)が久遠家と宮瀬家の息子を退学させたとなれば色々とめんどくさいことになりかねない気がしたから。

 それにもう関わってこないなら別にいてもいなくても変わらない。



 そして教室からあいつらがいなくなった。



「急にグループ戦とかいうからさ……びっくりしたよ」


 飛翔がそう言った。急に巻き込んでほんと申し訳ない……しかも退学をかけてるなんて……


『ごめん』


「……っていうか、能力使ってたね」

『バレない秘策があった』

「へぇ……」


「でも、なんで急にグループ戦なの?」


 今度は風音がそう聞いてきた。


『急に仕掛けてきて何も考えてない訳ないと思った。なら誰も考えないようなことをって思った。グループ戦でやろうなんて誰も考えてなかっただろうし』

「確かに……」


『まろん、あの時はありがとう』

「いえ。あそこで出られるのは私だけでしたから」

『そうか……』



 そして放課後になった。

 昼休みのうちにアナウンスがされて、第一体育館には学年関係なくたくさんの人が集まっていた。


「すげー……」

「数少ない一級貴族の3人が戦うとなればこんだけの人が集まってもおかしくない……1年生とはいえ、一級貴族は一級貴族……すごいですから……」


 こんな大規模になるとは予想もしてなかった。それは向こうも同じみたいだった。



『じゃあ、全員が自分のベストをつくしてやろう』

「うん」

『行くぞーっ!』

「「「おーっ!」」」


 俺たちはとりあえず気合いを入れた。これがどんな意味があるのかは分からない。


「これから、1組Aグループ対5組Aグループの団体戦を始めます。ルールは1対1を4戦。同点になったら代表者による再戦を行う。それでは第一試合、対象者は前へ」


 そしてこっちからはまず風音が出た。


「第一試合、津田つだ亜羅斗あらと対神代風音、始め!」


 風音の相手は津田亜羅斗という少年だった。竜喜が選んだメンバーなだけあって初動の反応速度は結構速かった。


 風音も負けじと剣を振る。でも全て亜羅斗に防がれてしまう。


「さすが二級貴族……」


 まろんがそう呟いた。


 まろんからすればそうなんだろう。二級貴族も強くないわけじゃない。人によっては小さい頃から剣の練習をしてる人だっている――らしい。


 風音はどんどん技を撃ち込んでいく。


「アサルト流っぽいスタイル……完全に習得できてる……すごい……」


 またまろんがそう呟いた。


『アサルト流って、どんな特徴が……?』

「アサルト流は光属性の連撃技を得意とする流派です」

『流派で勝敗が決まったりするの……?』

「相性としてはあります。でもひっくり返すことも可能ですから」

『まあそうだよな』

「でもこの感じだと厳しそうです」

『全部防がれてるし……』

「炎属性、トーク流……防御型の流派で、耐えて相手が疲れたところで攻撃する。相手はそんな流派です」

『そうなんだ……』


 そして風音が斬りこんだところをかわされ、後ろから斬られてしまった。


「くっ……」


 言ってたことがそのまま起きてしまった。別に能力を使った覚えはないが……


「そこまで! 勝者、津田亜羅斗!」


 負けたか……



「ごめん。みんな」


 戻ってきた風音の第一声はそれだった。


「大丈夫。俺が取り返す!」


 飛翔は励ます意味も込めて元気にそう言った。


 飛翔は威勢のいいこと言ってるけどそう簡単に勝てる相手じゃない。それは言わないでおくけど。



「次は……もう一人の方ですかね」

『多分な』


 まろんが言ってる『もう一人の方』とは、竜喜と龍杜以外のもう一人のことだろう。

 俺たちの予想は、最初に二級貴族の2人、後ろに一級貴族の2人、最終戦になったら竜喜が出てくるという予想だ。



「第二試合、対象者は前へ」


 次は飛翔が出る。向こうは予想通りもう一人の方が出てきた。


「第二試合、藤井ふじい柊璃しゅり対柴崎飛翔、それでは、始め!」


 お互いにぶつかっていった。どちらも変わらないくらいの速さ。


『まろん、こっちの流派の特徴は……?』

「ホアリ流もノアル流もどちらもスピード型……属性の相性も悪いです」

『そっか……』

「さっきも言いましたけど、」

『ひっくり返すのもできる。だよな?』

「はいっ!」


 ここは勝ってもらわないと困る。まだ負けじゃないけど、出来れば2試合もしたくない。


 どちらもすごい速度で攻撃をしていき、それをお互いにかわし続けている。


 同じことばっかりやってお互いにどうするか考えてる。そんな感じもした。


「結構やるな……平民のくせに」

「……だから貴族は……結局は同じように流派で一からやってるっていうのに。自分の方が強いって思ってる。その概念……へし曲げてやるよ」


 飛翔は結構強気に出た。これで負けたらこの先色々と困るやつだな……


「ふっ……やってみろよ」

「じゃあ、やってやるよ」


 完全に乗せられてる……


 そして二人はそれぞれ構えた。流派が違うから構えも少し違う。


 それぞれの剣の刃の部分が飛翔の剣が水色、柊璃の剣が青色に光った。


 そして二人はお互いに斬りかかった。


 飛翔の剣が通ったところには水色の光の線ができていた。一方柊璃の剣が通ったところには青い光の線ができていた。



「ホアリ流、氷光ひょうこうとノアル流、水光すいこう……精度も高い……」


 まろんがそう言った。こういうのに詳しいまろんが言うのだから相当なものだろう。



 お互いの剣がぶつかり合い、大きな音と衝撃が走る。


 そして『パキっ』と音が鳴った。(正確には『バキっ』の方が正しいかもしれないが……)


 よく見ると柊璃の剣がぽっきり折れて短剣くらいの長さになっていた。


 場内からざわめきが起きる。それもそうだろう。平民が二級貴族に勝ったのだから。しかも、剣を折って。

 貴族が持つ剣は地味にお金がかかってくる。お金は剣の強度や切れ味などに比例するからだ。そういう剣を折ったのだから、飛翔はすごい。正直こんなに強いとは思ってなかった。


「そこまで! 勝者、柴崎飛翔!」


 心なしか先生の声が元気だった気がした。先生も少し喜んでいるのか……?

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