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第101話 本部と辺境

「文人さん……!」


 病院を出ると、誰かにそう声を掛けられる。


 足を止めて振り返ると、そこにいたのはまろんだった。


『まろん……久しぶりだな』

「はい! お元気そうで、よかったです」

『まろんも』


 病院から出てきておいて元気そう、は少しおかしい気もするが……まあ、そこは突っ込まないでおこう。


「今日は、何でこちらに?」

『あ、ちょっと本部に用があって』

「そうなんですか」


 まだ病気のことは言っていないので、何で病院に? と聞かれたら何と答えていいのかわからない。その前にこっちが話の主導権を握ってしまえばいい話なのだが。


『まろんは何でここに? 第一部隊……だったよな?』

「はい。先輩が任務で怪我したので、搬送とお見舞いに」

『そうなのか。大丈夫だったか?』

「はい。幸い怪我は軽症で、すぐに復帰できるそうです」

『そうか。……まろんは?』

「え?」

『怪我とか、してないか?』

「大丈夫です。私はまだ前衛じゃありませんから」

『なら、よかった』


 あの第一部隊でも怪我はするのか……っていうか、怪我するほどの任務ってなんだよ。


「文人さん、この後、予定ってありますか?」

『予定か……』


 少し考えたが、全く思いつかなかった。


『特に無いな。一旦部屋に戻ってから竜小屋に行って……それくらいか』

「部屋って、本部に泊ってるんですか?」

『ああ。一応、仕事だしな』

「ご実家には……?」

『帰ってない。帰らないつもり。そんなに長くいるつもりもないし、帰省じゃないから』

「そうですか」


 実際は色んな人と顔を合わせづらいという理由の方が大きい。最初は水風家に泊まる話になっていたが、それを本部の宿舎に変えてもらったくらいだ。


 まろんとのことも見られたし、あの執事のこともあったし、棘病のこともあるし、両親が両親じゃなかったり、瑠花とのこともあったし……色々な問題が気まずいまま辺境に行ってしまった自分の責任ではあるのだが。


「よかったら、他の部隊も見に行ってはどうですか?」

『そうだな……』


 あとは幹部たちから答えを聞くだけだ。雷の方はどうなってるかまだ聞いていないが、全てが終わるまでどれだけ時間がかかるのかわからない。


『それもアリだが、迷惑はかけられないしな。ちょっと調べたいこともあるし、遠慮しておくよ』

「そうですか」


 本部の部隊を見たところで、辺境に生かせることは何もない。それが本音だったが、そんなことをまろんの前で言えるはずがない。


「では、私はこれで。報告会がありますので」

『ああ。また連絡する』

「はい」


 そしてまろんと別れると、俺はまろんに言った通り、本部の宿舎に一旦戻った後、竜小屋に向かった。


「あ、雷くんの剣士さん。また来てくださったんですね」

『すみません、何度も』


 竜小屋のスタッフの人が、話しながら雷の場所に案内してくれる。


「いえいえ、大丈夫ですよ。心配ですもんね、知らない場所に預けるなんて」

『いや、ここは設備もしっかりしてますし、そこは心配していません。でも、そうですね、少しでも仲を深められたら、意思疎通も上手く行くと思うので。それに、雷の方が不安そうでしたから、頻繁に会いに来ようかと』

「すごいですねー」

『それほどでもないですよ』


 辺境ではほとんどが暇さえあれば竜小屋にいるのだが……やっぱり、こっちじゃそこまで竜は重要視されていないのか。


 夜勤の時とかは代わりに世話を頼んだり頼まれたりはするが、竜も一緒に戦うことや協力することが求められたり、そもそも基本の仕事から竜と共にあるのだから、友好関係を築くのは当然か。


 やっぱり、本部の仕事も知っておいた方がいいかもしれない。


「じゃあ、ごゆっくり」

『ありがとうございます』


 そう言ってスタッフの人は一旦離れるが、なぜかもう一度戻って来た。


「そういえば、明日検査なんですけど、来ますか? その方が安心するかもしれないし」

『あ……じゃあ、行かせてもらいます』


 特に予定も入っていないし、どうせ王都内だろうから、本部から連絡が来ればすぐに戻って来られるだろう。


「わかりました。では、明日の朝、いつも来てる時間でいいので、ここに来てください」

『はい』

「では、今度こそ、ごゆっくり」

『ありがとうございます』


 そして今度こそ、スタッフの人は仕事に戻って行った。


 それから少し奥に進むと、雷のいるスペースにたどり着く。


『雷、』

「ぐあっ」


 名前を呼ぶと、雷はすぐに顔を上げてこっちを見る。


『特に話すことはないんだが……』

「ぐあぅ」


 どうせいつものことだろ、と雷は言っているように思える。まあ、ただ俺の勝手だが。


『明日のことは聞いてるか?』

「くぅ?」

『明日検査らしいが、』

「くぅ……」

『それで、俺も一緒に行くことになった』

「がう?」

『明日は一日一緒だな』

「ぐあー」


 なんだか、嬉しそうだ。


『あと今日、まろんに会った』

「くぅ?」


 そういえば、まろんと言ってもわからないか。


『初めて会った時に、俺と一緒にいた女の子』

「がうっ」


 思い出したようだ。


『一応さ、付き合ってるんだよね。だから、ほんとは一緒にいたいんだけど……いつもは辺境にいるから無理だし、向こうも精鋭が集まる第一部隊だから任務も大変みたいだし、なかなか時間合わなくてさー』


 雷はいつもの愚痴が始まったと悟ったのか、首を下げて半分寝ながら俺の話を聞いてくれている。多分。いや、聞いていなくてもいいんだが……むしろその方がいいまであるんだが……でも、だったら何で雷に話してるんだかってことになってしまうか……


 そんなことはどうでもいいんだよ。


『まあ、そんなもんだと思ってる。親にはまだ俺からは何も言ってないし、今は仕事で来てるし』


 そこまで言うと、雷の寝息が微かに聞こえる。


『寝たか……』


 まあ、いつも大体こんな感じだ。


『明日は頑張ろうな、雷』


 俺はそう呼びかけながら、軽く雷の頭を撫でた。


 普段危険と隣り合わせで戦う辺境の竜なのだから、そんなに恐怖や不安は感じていないと思うが……そうでも言わないと、俺は何て言っていいのかわからない。


 そういえば、何の検査なのだろうか。

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