第2話:学校
「早速だけど、高校に行ってみようか!」
リーフデは俺に高校へ行くことを勧めてきた。しかし、現実の人間の体がこっちにもあるということは、咲もいるということだ。俺は行くかどうか迷った。
「咲ちゃんのことなら心配しなくていいよ?」
「……え?」
「この世界は現実の世界とは違う。人々の関係値は現実の世界と全く異なるんだ。だけど、家族だけが現実と同じ関係値だね」
それなら、咲と俺は幼馴染では無いかもしれない。少し寂しい気もするが、これはチャンスだ。友達として見られる前に恋愛対象として見られれば、この世界で咲と付き合える可能性はある!
「よし!学校へ行こう!」
リーフデと俺は高校に向けて歩き始めた。
「リーフデ、この世界は地球とあまり変わらないのかもしれないな」
「それ、本気で言ってるの?」
「え?」
「頭を上げてみて」
空を見ると、不気味な色をした太陽のようなものが空に浮かんでいた。
「あれは……なんだ?太陽か?」
「あれはリーブストーン。人々のお互いに対する思いがあそこに込められているんだ。」
「じゃあこの世界は平和なんだな……?あんなに大きいからな」
「いや、逆だよ。確かに大きいけど、色が不気味でしょ?あれは人々のお互いに対する憎しみがとても大きいことを示しているんだ」
俺は一気に学校へ行きたくなくなった。そんなにこの世界の住民が憎しみを抱えているなら、学校で嫌な思いをするに違いない。
「俺、やっぱり学校行きたくないよ」
「どうして?」
「いじめられるかもしれないだろ?」
「安心して。その時は私が守るよ」
「お前は何者なんだ?こんな世界に俺を連れてきて何がしたい!告白失敗した俺を慰めようとしたのか??」
「違うよ。この世界に君が来たいと思っていたから連れてきたんだよ」
何を言っている。俺はこの世界のことなんか1mmも知らなかった。なのに、俺はこの世界に来たいと思ったのか?そんな訳無いだろう。
そうしているうちに高校の前にたどり着いた。
「行かないといけないのか?」
「私は行くことをおすすめするよ」
「そうか、なら行ってみよう」
リーフデは心なしか嬉しそうな表情を浮かべていた。
校舎を歩いてみると、現実の校舎と変わりはなかった。自分の教室の前まで行き、ドアを開けると、怒鳴り声が耳に届いた。
「お前、遅刻だぞ!」
「すみません。仕方ないんです」
「仕方ないとはどういうことだ?とりあえずもういいから座れ」
高校に行った初日から怒られるとは思ってもいなかった。しかも俺の担任は何をしても怒らないことで有名だった。やはり、この世界の人々の性格は現実とは違うのかもしれない。
「実弥おはよう!」
「龍司!?おは…よう…」
「どうした?何か変だぞ?大丈夫か?」
何が起きている。龍司はいわゆるスクールカースト上位の人で俺の事を嫌い、避けていたはずだ。こいつのせいで俺は充実した高校生活を送れていない。やはり、性格が現実とは違う。
……じゃあ咲は?
俺は授業が終わると急いで咲の席に行った。
「咲…おはよう」
「…………」
俺は怖かった。現実で振られた人に話しかけるのだからな。しかし、いくら嫌だからといって、無視することはないだろう!
「なにか言えって!」
「…………」
どうして咲は何も言わない?クラスメイトの視線が集まっているのを感じた。俺は急いで自分の席に戻ろうとすると、咲は俺の服を掴んで、俺を引き寄せた。
「今日の放課後、屋上に来て……」
屋上に来てだと??これはもう告白だろう。いや、告白しかない!そう思うと俺の口は勝手に動いた。
「分かった」
放課後、俺は屋上に向かった。現実では振られたが、この世界で付き合えれば良い。そして俺は、咲の生涯を共に歩むんだ!
屋上に着くと目の前には咲がいた。
「実弥……」
「どうした?」
「私、あなたに伝えたいことがあって……」
これはもう確定演出だ。告白以外の何ものでもない。これは告白である。そう思うといてもたってもいられなくなった。
「俺から言わせろ!咲のことが好きだ!」
「え…?」
「え?」
俺は呆然とした。両思いのはずだろ!告白されるはずだろ!突然告白されて驚いているのか?
「俺から先に言わせてもらった。咲、お前の思いも聞きたい」
「私、告白するために呼び出したんじゃないんだけど」
やってしまった。どんな顔をして立っていれば良いのだろう。告白の流れだったはずだ。なんで……
「私は、あなたが現実世界から転移してきたのではないかと思っているのよ」
なんでそれを咲が知っている。転移したことを知っているのは少なくともリーフデだけのはずだ。あいつは俺が校舎に入るとどこかに行ってしまっていた。守るとはなんだ?校舎にいないなら守れないじゃないか。
「何を言っているんだ?」
「転移してないのね。ごめんなさい。忘れて」
俺は転移してきたが、今のうちは誰にも言わないでおく。言ってしまうと何が起こるか分からないからな。
そうして、俺は校舎を後にした。
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