第17話 腕相撲
前回のあらすじ
レベル上げをしたがあんまりレベルが上がらなかった。
突然何を言い出すんだコイツ。
腕相撲とレベルが上がらない事って関係ある?
「いや、なんで急に腕相撲なんか…」
『いいから!ほら!』
「いいからじゃないわよッ!
辺り見て見なさいよ!」
殺った私が言えた事ではないが、
この光景を前にしてそんな馬鹿げたことを言える神経がわからない。
『え?あぁ、片付けしなきゃね』
『食べていいよ』
…は?
ホブゴブリン達は許しが出た犬みたいに、一斉に死体に群がっていった。
骨も血も肉も関係なく貪り尽くす。
不快な音が冷たい空間に鳴り響く。
『僕はこれにしようかな』
シュウはホブゴブリンと死体で入り混じった中から、
ゴブリンの死体を一つ引きずり出していた。
「きっしょ…というか共食い……。」
『選り好みして生きていける程の数の群れじゃないし。
生きる為だよ』
…それは、そうかも知れないが。
でも側から見たら…私も、彼らと同じなのかもしれない。
そもそもこの中の大体は私が手を下した奴だし…
…彼らと私は、同類なのだろう。
ー・・・
『ほら、綺麗になったよ。
これで文句ないでしょ?』
私はこの光景を見て綺麗になったとは思わないが。
「もういいや…それで、テーブルは?」
『……』
考えなし過ぎるでしょ!
はぁ…
「石生成」
そこそこの魔力を込め、デカい石を作る。
真四角だしめっちゃ硬いだろうが別にいいだろう。
『おぉ!土魔法は凄いね!』
そういやシュウは土属性持ってなかったっけ。
「なんだか訳がわからないけど、ほら、やるんでしょ」
『乗り気で嬉しいよ』
テーブルに肘をつき、シュウの手を握る。
「…テーブル、もうちょっと小さくした方が良かったかな」
『うるさいよ、低身長は種族のせいだから。
それはいいから、行くよ』
『3、2、1…スタート!』
スタートと同時に、グッと力を入れる。
やるからには負けたくないし。
するとすぐにドンッ!!という音がした。
「え?」
『いッ!』
すぐにシュウの手はテーブルにつき、
シュウの肘あたりから嫌な音がする。
更に、テーブルには少しヒビが入っていた。
『いったた…』
シュウは痛そうに肘をさすっている。
「えっ…そ、そんなに力弱いとは…ごめんね?」
『ウザいな君!というか、もうちょい容赦してよ!』
さっきシュウだってゴブリンとか、
冒険者に対して容赦無かったけどな…
「ごめんて、と言うか…シュウってホントに39レベルもあるの?
そんなに力入れてないのに…」
『更に追い討ちかけるか、別にいいけどさ。
…おそらくだけど、種族によってレベルの上がりやすさ、
そして、レベル毎の強さが違うんじゃないかな。
さっきの話、1レベルの時に7レベルの何かを倒した事があるんだろ?
何の奴だったにせよ、僕は1レベルで7レベルのスライムやらゴブリンやら倒せなかったよ』
「なるほど…それで力比べね?
レベルが2倍近く違うのに圧勝だったし。
…でも、わざわざそれを確認するために腕相撲の必要あった?」
『1レベルの僕と1レベルのルナの強さは違う。
だからレベルの上がりやすさも違うんだろう。
同じ場合、格差があまりにも開き過ぎる。』
無視したなコイツ。
「格差…この世界のスキルやらなんやらって一体なんなの?」
『わからない、けど僕は''バランス調整''をしてる奴はいると思ってる。
それは世界のルール的な奴なのか、それとも意思を持つ人が……いや。』
『ルールを弄れるのであれば、神とでも言った方が正しいのかな。』
そこら辺、わからないよね…。
私達…シュウ以外の転生者が居るのかはわからないけど、
少なくとも、転生者は一人だけじゃなかった。
わざわざ二人だけ転生させる理由は何?
前世で会った事とかも無いし、共通点がない。
つまり転生者は二人だけじゃない、と考えるのが自然だろう。
しかしそもそも、何故私達を転生させたのか。
もしくは、させなきゃいけない理由とか?
ステータスとかスキルとか、''権限''とか。
ゲームみたいで私的にはわかりやすいから助かっているけれど。
私達を見て、バランス調整してる奴が居てもおかしくない。
ここら辺周辺は弱い魔物が多いようだし…。
転生場所は明らかに指定されている。けれど…
どれだけ考えても、情報が足りない以上答えは出ない。
もし仮に正解を導き出せていたとしても、それが正解かどうか、今の私達にはわからない。
つまるところ、手詰まりだ。
「今は考えたって無駄でしょ。
それより、目の前の危機についてを考えないと。」
『ま、そうだね。』
ふと、石のテーブルが目に入る。
そこにはかなりのヒビが入っていた。
「石…なはずなんだけどな、このテーブル」
『怪力女子』
「シュウが非力なのよ」
『ルナが怪力過ぎるんだよ!いっ…』
私に見える様にわざとらしくシュウは肘をさする。
腕相撲しようって言い出したのはそっちなんだけど。
「そういや大丈夫?肘、嫌な音したけど」
『結構痛い…。』
「非力〜。ま、暫く私のレベル上げでしょ?
治るまで引き篭っといたら?」
『言われなくとも。そもそもこれまでも外にはあんまり出てなかったよ。
ルナが入ってきた時に出てたのはたまたま。』
「引き篭もり、ニート」
『口悪いな』
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