第16話 レベル上げ
前回のあらすじ
隠し部屋を見つけた。
暫く、あの事を考えていたが、
思考を逸らそうと、魔法のレベル上げをし始めた。
「暗黒・暗黒・暗黒・暗黒…」
あの使えない闇属性の魔法だが、この前頭を突っ込んだところ、
黒い範囲以外の物が見えなくなった。
シュウの使った『暗黒』にも頭を突っ込んでみたら、目の前が真っ暗になったのを見るに、
多分目潰し的な魔法なのだろう。
今のところ闇属性は妨害系の魔法だ。
冒険者がいつ来るかわからない現状、やれる事・とれる戦術は多ければ多い程良いだろう。
土は4レベまで行ってるし、ここらで平均的に伸ばしてみるのもありかなと思い、今は闇属性をレベル上げ中だ。
そう、前は魔力切れを良く起こしていた私だが、
かなりの回数体験して切れる寸前の感覚を把握出来るようになったのだ。
まぁ寸前じゃないとわかんないんだけど。
こればっかりは練習あるのみかな…。
「暗黒・暗黒・あんこ…『ルナー!』
『って、何してるの、それ…』
練習と称して部屋中真っ黒の物体だらけになっている部屋にシュウは言う。
「スキルのレベル上げ」
『凄い見た目だな…じゃなくて、獲物取ってきたよ』
「わかった、行くわ。」
起き上がり、洞窟の出入り口に向かっていくシュウの後ろを追う。
近付くと魔物達の悲鳴や呻き声が聞こえてきた。
その中には…
「離せっッ!このゴブリン風情がッ!!」
「…冒険者もいるじゃん」
『うん』
シュウはなんとも無さそうにそう答える。
いや、そうじゃなくて…でも一人っていう事は襲撃…じゃないのか?
というか、コイツも''獲物''に含まれてるワケよね…
…本来、''魔物''としてはそれが正しいのかもしれない。
(コイツこの世界に染まり過ぎだろ…!
私も片足…いや、かなり突っ込んでいるのだろうが…)
他にもウルフ等の魔物が一匹につき一匹のボブゴブリンが拘束しているのだが、
中央にいるやつのせいであまり目に入らない。
「なっ…吸血鬼…だと!?ギルドはどうなってる!!」
ボブゴブリンに拘束され、武器も取られながらも暴れ続ける冒険者。
『五月蝿いから早くして?』
「…人間はパス。どっか置いてきて」
「俺は最強の冒険者様だぞッ!お前らなんて武器さえありゃ…!!」
『頑張って持ってきたんだけどな、君の存在もバレちゃったし、
生かす訳には行かないよ。かと言って生かして拘束する価値もない。
だから…』
シュウは冒険者から奪ったのか、剣を持っていた。
私は、視界も、耳から聞こえる音も、見ない事にした。
「はっ!ゴブリン程度の雑魚がッ!このオレを倒……。」
『選り好みするなら言ってよね。いらない苦労はやりたくないし。』
肌に触れる何かの液体も、目の前の光景も、何もかも。
「…ええ」
他の獲物は基本的にウルフやゴブリンのようだった。
それと…
〈ーーーーーーステータスーーーーーー〉
種族:スライム
レベル:5
ースキルー
『気配隠蔽』『捕食』『強者感知』
〈ーーーーーーーーーーーーーーーーー〉
水色の液体のような、しかし液体ではなく、固体でもない。
「おー…これがスライム、初めて見たわ。」
『スライムは格上相手にあんまり出て来ないからね。』
「それはいいんだけど、ゴブリンもいるでしょ?良いの?」
『どうせゴブリンだ、ボブゴブリンじゃない。
強かったり使えそうなスキルを持ってる奴は仲間にするけど、
育てて使うのは面倒だからね。』
容赦ねぇ…
ー・・・
二十匹程片付けた後、最後の一匹を吸って終わった。
『今はそれでもいいけど、冒険者達が来た時にトドメは僕が、
ゴブリンがーなんていちいち出来ないから。さっさと覚悟は決めなよ』
「…分かってるわ。私も、他者の命より、私の命の方が可愛いもの。」
『それで、レベルは?』
「ええと…」
〈ーーーーーーステータスーーーーーー〉
名前:ルナ(沙桜 優月)
性別:女
年齢:17
レベル:20
種族:吸血鬼
ースキルー
『鋭い爪』『 ※ 権限 Ⅱ × 』『 ※ ステータス偽装 × 』
『火属性魔法..1』『水属性魔法..1』『風属性魔法..1』
『土属性魔法..4』『闇属性魔法..1』『無属性魔法..2』
『麻痺牙..2』『霧化』
ー称号ー
『異世界から来た者 × 』『奇襲者..1』
『魔法使い..1』『魔術使い..2』
〈ーーーーーーーーーーーーーーーーー〉
「今20。えと、元が18だから…2レベ?」
『えっ、少なっ!?』
「少ないけど今までもこんな感じよ」
『本当?僕さっきので2レベ上がったよ?』
「エッ」
〈ーーーーーーステータスーーーーーー〉
名前:シュウ(柊 朱卯)
性別:男
年齢:16
レベル:39
種族:ゴブリンキング
ースキルー
『水属性魔法..1』『風属性魔法..1』『闇属性魔法..1』
『命令..3』『感覚共有..4』
ー称号ー
『ダンジョンマスター..2』
『ゴブリンの王..3』『剣士..2』
〈ーーーーーーーーーーーーーーーーー〉
「ホントだ…で、でも倒したじゃなくて体力を削った割合とか、
経験値を平均で配られていたとしたら?」
『ホブ達はレベル上がってないよ。
僕とルナで配られてたとしても2倍近く違うんだからルナの方が上がるでしょ』
「じゃ、じゃあさっきのアイツのレベルが高いとか…
アイツのレベルは?」
『7』
「私の1レベルの時の成長率じゃん…元37なのに。37なのに!!」
レベルアップ格差で打ちひしがれている私とは裏腹に、
シュウが何やら考え込んでいた。
『……!理由が分かったかもしれない』
「何?理由は!?」
『…ルナ』
神妙な面立ちで、シュウは言う。
『腕相撲しよう。』
「は?」
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