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吸血鬼になった私の話  作者: へたっぴのゆゆ
第1章 転生編
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第13話 協力

前回のあらすじ

転生者に出会った。

「は?協力?突然何を…」


『冒険者に聞いた話だが、

 ここの近くの街の領主が冒険者達に依頼をしているらしい。

 内容は、ゴブリンの巣、及び吸血鬼の討伐。

 この吸血鬼って…君のことだよね?』


街…この近くというと、この服を奪ってきたところかな?

それ以外街なんて見たことないし。



「そうでしょうね、私以外の吸血鬼なんて見た事ないし。」


『僕も吸血鬼を見たのは君が初めてだよ。

 そしてゴブリンの巣というのも、おそらくはここの事だろう。

 つまり、僕等はお互いに狙われているわけだ。』


それで協力…という訳か。

その提案自体はおかしくはないだろう。

敵の敵は味方という理論だが…


しかし、互いに信用していない者同士で共闘なんてできる訳がない。

そう考えていると、彼は再び口を開いた。



『吸血鬼というのは特殊な種族だ。

 半不死身といってもいいだろう。しかしそれ故に弱点も多い。

 ただの冒険者ではなく、吸血鬼ハンター等の専門家が来る可能性が高いと思ってる。

 僕と協力してくれるなら、その専門家は僕らが相手をする。

 …どう?』


警戒しながら、彼はこちらを見続けていた。


確かに吸血鬼は半不死身、ただの冒険者が来たとしてどうにもならない。

本当に吸血鬼の専門家…吸血鬼ハンター等が来るのであれば、

彼と協力した方が生存できる可能性は高いだろう。



しかし、敵の敵が味方となりうるのは、

その敵が双方にとって絶対的な力を持ち、必ず戦わなければならないという状況だ。


しかし今の状況はそれとは違う。

敵が本当に居るのかもわからず、目の前の敵が本当に味方なのかもわからない。


もしいたとしても、その敵が協力しなければならないほど強力なのか?

彼は私とは違い昼間でも動く事が出来るから、逃げるという事だってできる。

他にも私が知らないだけで対抗策はあるのかもしれないし。

そもそもその話は冒険者から聞いたらしいが、嘘かもしれない。


どちらにせよ、わざわざ信用できない相手と協力する必要があるとは思えない。

私が考え込んでだんまりとしていると徐に彼は口を開いた。



『君にも損はないはずだよ。』


そう喋り終えた後、彼は目を伏せ小さく呟いた。


『それに僕だって…もう、死にたくないんだ』 


独り言だったのか、とても小さい声だったが、

吸血鬼の五感は鋭いもので、良く聞こえた。


確かに発せられた音は静かな洞窟に響き、次第に消えていった。

それはどこか小さく、儚い。


命が消える感覚を、私は知っている。

彼も、その感覚を知っているのだろう。



死ぬ間際の事は朧げで良くは覚えていないが、

あの時、確かに命が消える感覚がした。

誰もが一度経験すれば思う。

あんな事、もう二度と経験したくはないと。


もう、二度と。



「…アンタは、私に背中を預けられるわけ?」


『肯定はできないけれど…生きる為に必要ならばやる。

 それで、君は?』



答えは決まっていた。

はぁ、と聞こえないほど小さなため息をつく。


「…同じよ、私だって……死にたくない。」


『じゃあ、よろしくね。

 お互い…死なないために』


「えぇ。」


彼の言葉に頷くと、彼は警戒を解き始めたようで、剣を鞘にしまった。

…私はその様子を黙って見つめていた。



「…色々、聞きたい事があるんだけど。」


「もう仲間な訳だし、大抵の質問には答えるよ。

 その前に、君の事はなんて呼んだらいいかな?』


そういえば、前世の名前はあるけど、今世は無かったな。

彼…シュウは前世の名前のまんまなようだけど。


名前、名前か……ユヅキ?自分の名前が嫌いな訳じゃないけど、

せっかくの異世界だし、別のにしたいな。


(うーん…優月、ユヅキ…月、英語でたしか…ムーンだっけ、

 いや、呼びづらいな…)


私が悩んでいると、シュウが喋り始めた。


『どう?決めた?』


「まだ。うーん…」



月…月……あっ、''ルナ''っていうのはどうだろう。

確か月って意味だし、言いやすいし、かっこいい気がする。


「決めた。ルナにする。」


『そっか。僕はシュウって呼んで。』

 えっと…さん?ちゃん?』


「呼び捨てで良いわ、シュウ。」


『そっか』



シュウはホブゴブリンに『吸血鬼を襲うな』と言い、その直後『動け』と発言した。

おそらくはスキルの命令を発動させたのだろう。


ホブゴブリン達は息すら止めていたのに、動き出した。

かなりの時間呼吸していなかったと思うのだが、

なんで生きているんだろう…?


少しの間思考していたが、色々説明をすると言う事で洞窟の奥に案内された。



洞窟の奥までシュウ達と一緒に歩くが、

そのスピードは私からして見るととても遅かった。


ゴブリンの身体能力に比べ吸血鬼の方が上と言う事もあるのだろうが、

シュウの身長が小さい…というか、ホブゴブリンは大きいが、

それ以外のゴブリンは私と一緒、もしくは下ぐらいなので基本的に身長は小さめだ。


シュウ達にスピードを合わせ、ゆっくりと歩く最中、軽く情報共有をした。

内容は凡そスキル等のステータスの話だ。


話を聞いたという冒険者や、その話を何故信じているのか、

何故ここから逃げ出さないのか等も聞いたが、

後でと言われてしまった。



シュウに聞かれたスキルや称号を大まかに話す。

大抵私の持っているスキルは名前から内容を想像できそうな物ばかりだから、

隠していても無意味だと思うし、今は少しでも信用を稼ぐ事の方が重要だ。

閲覧ありがとうございます。

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