第12話 邂逅
前回のあらすじ
迷子になった後洞窟に逃げ込んだ。
そのまま奥へ奥へと進んでいると、広い空間に出た。
そこには、大量のホブゴブリンが居た。
(ホブゴブリンがこんなに…!?)
壁に隠れながら様子を伺う。
こちらには気付いていないようで一安心だが…
数えるのも面倒臭い程数が多く、少なくとも50匹ぐらいはいそうだ。
他にもホブゴブリンで隠れて見えないが、
ゴブリンやゴブリンメイジもいる。
…もしかして、この洞窟はゴブリンの巣だったのか?
それはわからないが、戦闘になったら確実に勝てない。
ここは大人しく入り口はまで戻るべきか。
その場を去ろうと、振り向いて歩き始めようとした。
しかし、足音が聞こえ、立ち止まった。
(ぐ、まだ見つかってないものの、進行方向はこっち、
このままでは挟み撃ちにされる…!)
ペタ、ペタ…という足音が少しずつ近付いてくる。
数は5匹、足音が大きい事からホブゴブリンが4匹、
ちっちゃいゴブリンが1匹居るが、
普通のゴブリンかメイジかはわからない。
ホブゴブリンという事は最低でも15レベ以上が4匹。
だがこれだけホブゴブリンが多い巣の住民なのだ、
それよりレベルは高いと思った方が良いだろう。
ここは一本道だから隠れるところなんて無いし…
勝てる見込みは薄いが戦うか?
できればこの洞窟から脱出したい所だけど…
今朝になったところだ、夜にはまだまだ時間がある。
まぁどうこう考えていても、戦うしかないのだが…
ここで立ち尽くしていても挟み撃ちにされるだけだし。
(鋭い爪、麻痺牙)
スキルを発動させ、一気に走り出す。
音との距離がどんどん縮まっていく。
(見えた…!)
ホブゴブリン2匹が先頭を歩いてこちらに向かっている。
警戒する様子もない為、こちらには気付いていなさそうだ。
その後ろにゴブリンがいて、更に後ろにホブゴブリンが2匹居る。
ゴブリンを守るような配置だ。
(ホブゴブリンがゴブリンを守る意味なんてないし、
やっぱりメイジか…)
メイジは厄介だな…一番最初に狙うべきか。
羽根に力を込め、勢いよく飛ぶ。
すぐに距離は縮まり、相手もこちらに気付く。
(発火!)
メイジに向けて魔法を撃つが、すぐにホブゴブリンが庇った。
その隙に前方のホブゴブリンを通り抜け、メイジを狙う。
『転生者…?』
メイジはこちらを見てそう言った。
私は爪で切り裂く一歩手前で止まった。
そのメイジの左目は黄色に輝いており、奥に何か書いてあるのが見える。
(何故バレた…?私と同じ様に権限持ち?
でも、あれは同じ称号を持たないと見れないはず…
…同じ、称号!?)
権限で確認する。
〈ーーーーーーステータスーーーーーー〉
名前:シュウ(柊 朱卯)
性別:男
年齢:16
レベル:37
種族:ゴブリンキング
ースキルー
『水属性魔法..1』『風属性魔法..1』『闇属性魔法..1』
『命令..3』『感覚共有..4』
ー称号ー
『ダンジョンマスター..2』
『ゴブリンの王..3』『剣士..2』
〈ーーーーーーーーーーーーーーーーー〉
右目に文字が表示される。
その文字を読もうと私が意識を逸らした隙に、
静止した私をホブゴブリンが襲おうとする。
「ッ…!!」
『『止まれッ!!』』
ソイツがそう叫ぶと、ホブゴブリンの動きが止まる。
襲いかかろうとした体勢のまま、一ミリも動かない。
呼吸さえもしなくなっていた。
『まさか自分以外の転生者が居るとはね。
今度は襲いかかろうとしないでね?』
摩訶不思議とでも言うべきだろうか、声の様だが、奇妙な音の様にも聞こえる。
ゴブリン特有の鳴き声と共に、日本語の様な声が聞こえてくる。
だがそれは聞き取りにくくはない。これが称号の能力か?
見るとソイツは剣を持っていた。
私が何かすれば、すぐに動かせるように。
「…アンタが攻撃しないなら私も攻撃する理由はないわ。」
そう返事をしながら、権限で調べた文字を読む。
柊 朱卯、私と同じ転生者。
ゴブリンキング…なるほどね、だから守られていた訳だ。
『そう、助かるよ。
で、なんでここに居たの?』
探る様な視線を向けられる。
まぁ当然だろう。あっちにしてみれば、
私は突然家に入ってきた侵入者だろうから。
「見れば分かると思うけど私は吸血鬼なの、
日光を遮る為に洞窟に入っただけ。」
『ふーん…』
「何もせずとも、夜になったら出て行くわよ。」
動く様子はないが、警戒を解く様子もない。
『ちょっと待って、話したいことがある。
血抜き死体って君のこと?』
「は?私が血のない死体に見えるっての?」
いや、吸血鬼は死体か…?いやいや、そうゆう事じゃないよな。
つまりは…食べ残しと言うこと?
そういえば、そのままにしてたっけ。
「あー…まぁそう、なのかな」
『やっぱり君なんだ。』
「大体何の話?用がないなら構わないでくれる?」
少しイラついてきた私はぶっきらぼうにそう言い放つ。
しかしコイツはその様子を気にもとめなかった。
『用があるから言ってるんだ』
一呼吸置いて、彼は口を開ける。
『僕と協力しない?沙桜優月さん』
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