第11話 冒険者と洞窟
前回のあらすじ
女性の悲鳴が聞こえ、そこに向かった。
あそこだ!
木々が生えていない場所がある。
女性がゴブリンに襲われているのが見え、私は急いで向かった。
女性は血を流し木にもたれ掛かっており、動けずにいた。
ゴブリンは遊んでいるのか、ゆっくりとした動きで女性に近付いていた。
(油断大敵ッ!これなら間に合う!)
着地し、木々の間の向こうにゴブリンが居るのが見えた。
「発火ッ!」
そこそこ大きい火の玉を生成し、猛スピードで発射する。
「ガァギャッ!?」
頭に命中したようで、ゴブリンは取り乱していた。
(っよしっ!)
大丈夫かな?と思い女性の方を見ると、
女性はこちらの方を向いていて、目が合ってしまった。
(!やばっ、バレた…?)
一旦木に身を隠した。そのとき…
「「ガァギャギャアァァアア!!」」
そんな声が聞こえてすぐに隠れるのをやめ、女の方向を見た。
反撃された事に逆上したであろうゴブリンが女を攻撃しようとしていた。
(やばっ、発「「おぅッらッ!!」」
おそらく女性の仲間が駆けつけて来たのだろう。
彼はホブゴブリンに蹴りを食らわせた。
もう一人の盾と剣を持った男もカバーに入った様で、
一安心そうだ。
もう助けはいらないかな?
でももしまた何かあったら大変だし、
ちょっと場所を変えつつ見守っておこうかな。
別にあの人たちが死んだところで赤の他人なわけだが…
折角助けたんだし、死なれても気分が悪いし。
と思い、草の影から彼女らを観察していた。
男性二人は近接戦でホブゴブリンを抑え、
少し離れた場所にいる女性は両手を前に伸ばし、目を瞑っていた。
少しすると女性の手には火が形成されて行き、
それは徐々に大きくなっていった。
「ラジ!オクナー!」と女性が呼びかけると、
男2人はホブゴブリンから距離を取り始めた。
「思いッきり焼き焦がしてあげるッ!」
女性がそういうと、すぐに炎が発射され、
かなりのスピードでホブゴブリンに命中した。
「「ボカーンッ!!」」と巨大な爆破音が鳴り響くと、
こちらまで物凄い熱気が飛んできた。
(熱ッ…!?)
彼女らは何か話していた様だったが、
熱く焼けるような痛みで聞き取れなかった。
(熱いって…!彼らはなんであの距離で熱気を浴びて平気なの…!?)
痛みに悶えていたが、少し経つと徐々に温度が下がっていった。
(はぁ、助かった…)
そう思い彼女らの方向を見ると、
煙が晴れていて、その奥には黒焦げどころか、
灰になったホブゴブリンの亡骸があった。
(やっば…)
その後彼女達は少し揉めていた様子だったが、
ホブゴブリンの灰から何かの輝く石を取り出していた。
あれは…もしかして、魔石?
あの爆発の中よく残ってたな…
その後、彼女達は草を採集し去って行った。
あの人達…もしかして冒険者だったのかな?
私も冒険してみたいなぁ、討伐依頼とか、ダンジョンとかね。
折角異世界に転生したんだしな。
って、それどころじゃない!
帰るまで彼女達をずっと見ていたらそろそろ日が始め昇りそう…!!
急いで帰らないと…
「…あれ、拠点の方向ってどっちだったっけ…?」
やばい…朝までには帰らなきゃいけないのに!
最悪帰れなくても日光が防げればなんでもいい…!
それから飛んで上から洞窟や影が出来そうな場所を探してみたりしたが、
そう都合良くは見つからなかった。
(どうしようどうしよう…
もう日が昇り始めたからもう飛べないし…)
闇雲でもなんでも探すしか無いか。
このままここに居たって待ってるのは死、それだけなのだから。
腹をくくり、私は森を走り回った。
ー・・
日が昇り始め、肌がチリチリと焼ける様に痛んだ。
ギリギリのところでなんとか洞窟を見つけ、そこに滑り込んだ。
危なかったな…肌を見ると、表面が少し灰になりかけていた。
私もアレみたいになるのかと思うと、背筋が凍った。
早く…一刻も早く強くなって、日光を克服しないと…
また死んでしまう。
私はもう死にたくない。
日本に帰れるかもわからない今、生き甲斐などないが、
絶対に、死ぬ訳にはいかない。
しかし、拠点の場所がわからなくなってしまうとは…
迂闊だった。もっと気を付けないと…
みると、洞窟はかなり奥まで続いているようだった。
とりあいず探索してみるか。
安全そうだったら、ここを第二の拠点にしてもいいし。
少し進むと、床は石になり、奥には下へ続く階段が見えた。
その階段を降り、一本道をひたすら進む。
かなり進んだと思うのだが、洞窟はまだまだ終わりそうになかった。
そのまま歩いていると、突然足に何かが触れ、つまづいた。
屈んで触れてみると、それは…
「…糸?」
そう言うと同時に、シュっと音がし、頭上に何かが通り抜けた。
カコン、と左から音がし、見てみると床に矢が落ちていた。
(これはトラップ…だとすれば、知能のある何かがいる…?)
このまま進むのは危険か?
うーん…いや、どうせ夜になるまではここで過ごすしかないんだし、
このまま探索しよう。
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