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依存少女  作者: かなん
9/22

九 次の約束

一日投稿が空いてしまい、申し訳ありません。

次回以降はまた、毎日投稿に戻りますので、よろしくお願いします。


読んでいただけたら嬉しいです。


 真夜とモール内を歩き始めてから、一時間程で礼華から電話がかかって来る。

 教えられた集合場所に向かうと、そこは高級ホテルの目の前であった。

 

「マジか・・・」


 そこにいた人物を見て、思わず声を漏らす。


「来たわね。二人とも」


 白いポニーテールを揺らす礼華。

 そしてーー


「こんばんわ」


 先程まで一緒にいた、秋音である。


「偶々、この辺りをうろついていたらしくってね。折角だし呼んだわ。秋音も一ノ瀬君と知り合いなんでしょう?」

「あー、まあ・・・」


 礼華はどういうつもりなのだろうか。

 彼女の意図が読めない。


「さて、とりあえずご飯を食べましょうか。さっき、無理を言って予約を空けてもらったから、急ぎましょう」


 彼女に連れて行かれたのは、ホテルの中にあるレストランだった。書かれているメニューには値段が書いておらず、水の入ったグラス一つとっても、高級感がある。


「何でも頼んで良いわよ?奢るから」

「・・・じゃ、遠慮無く」


 店員に呪文のように長いメニュー名を頼み終えた後で、真夜が口を開く。


「秋音さんもここに居たなんて、すごい偶然ですね」


 心臓が跳ね上がる。

 真夜に嘘は通じない。秋音はどう切り抜けるつもりなのだろうか。


「うん、この辺りにある本屋さんに用があったの。ほら」


 そう言って、秋音は鞄の中からブックカバーに包まれた本を取り出す。

 真夜の反応を確かめると、彼女は特に疑った様子も無く、納得していた。


「どんな本なんですか?」

「ふふ、シリーズだから・・・今度、持っていくね?」


 秋音の言葉は嘘の筈なのに、真夜は見抜けなかった。

 もしかして、何か抜け道があるのだろうか。

 そんな事を考えていると、目の前に座る礼華から呼ばれる。


「一ノ瀬君、であってるかしら?」

「・・・ああ」

「じゃあ、一ノ瀬君は、真夜とどういう経緯で知り合ったの?」


 どう答えるべきか、迷う。

 まさか、自殺しようとしていた真夜を助けたから、などとは言えない。


「・・・あー、まあ、色々とな」

「あら、言いづらい事かしら?どうなの、真夜?」

「えーと、その、ちょっと私が困っていた時に、一ノ瀬さんに助けて貰ったんです」

「・・・ふーん、じゃあ秋音とは?」

「ふふ、一ノ瀬君が真夜ちゃんと一緒に居る時に会ったの」


 俺への質問だったが、秋音が答える。

 礼華が更に質問をしようとすると、店員が食事を持ってきた。

 一旦おしゃべりを中断して、食事の為に礼華がサングラスを外す。 


「・・・その目は」

「・・・ふふ、気になる?アルビノなのよ、私」


 礼華の目は珍しい紅色であった。


「あー、だからサングラスを」

「そういうこと、日傘は必須アイテムなのよ」


 何気ない会話をしながら、食事に手をつける。


「そういえば二人とも、他のメンバーと連絡は取ってる?」

「いえ、解散してからは一度も・・・何かあったんですか?」


 数日前に解散した『Six』だが、六人中、三人はまだ芸能界で活動している。とは言っても、アイドルでは無い。モデルや女優としてだ。


「桜花が心配してたわよ?連絡するかどうか迷ってたみたいだから、貴方達から連絡してあげて?」

「分かりました」


 こういう会話になると俺は入り込めない。

 黙々とご飯を食べていると、テーブルの下で何者かの脚が俺の脚に寄せられる。


「・・・」

「ふふ、どうかした?」


 無言で秋音を睨む。

 触られた方向からして、脚を寄せてきているのは間違い無く彼女だ。

 とはいえ、ここで変に反応しては、残りの二人にバレる。


「一ノ瀬さん、どうかしました?」

「・・・いや、こういった店に来るのは、あんまねえから、ちょっとな」

「確かにそうですね。私達はプロデューサーによく連れてきてもらってましたけど、普通来ないですよね」


 無視して真夜と話していると、秋音のつま先が俺の足をなぞりながら、膝まで来る。

 流石にこれは、見過ごせない。


「・・・席を外していいか?」

「構わないわ」


 さっさと食事を終えて、一旦店の外に出る。

 同時に、スマホが震えた。


「緊張しちゃった?」


 差出人は分かりきっている。舌打ち混じりに「やり過ぎだ」と返して席に戻ると、残りの三人も既にご飯を食べ終わっていた。

 俺が席に着くと、礼華が口を開く。

 

「さて、まだまだ話したい事はあるんだけど、ちょっと予定が詰まっているの、今日は解散にするわ。ほら、レディーファースト、二人から先に出なさい」


 真夜と秋音が先に店を出る。

 礼華が出ていくのを待っていると、彼女が声をかけてきた。


「来週土曜の午後十時、ここに来なさい。少し、お話ししましょう?」

「・・・断ったら?」

「さあ?どうなっても知らないわ?」


 手渡されたのは、四つ折りにされた紙であった。礼華はそれ以上何も言わずに出て行く。

 

「・・・めんどくせえな」


 呟き、彼女の後を追う。

 外に出ると、既に礼華の秘書が車に乗って待っていた。


「それじゃあ、また今度会いましょう」

「はい、また今度」


 車窓から顔を出した礼華と二人が話していると、思い出したように礼華が言う。


「あ、そうだ。今度、椿がドラマの撮影でここに来るらしいわ」

「え、椿さんですか?」

「椿ちゃんと会うのは久しぶりだね」

「そうですね。いつ来るんですか?」

「確か・・・来週の日曜日だった筈よ」


 来週の日曜日、俺が呼ばれた日の翌日。

 何か意味があるのだろうか。


「それじゃあ、一ノ瀬君も、また会いましょう?」


 彼女の紅瞳が俺を捉える。

 

「ああ、また」


 どうやら、彼女と会う他に選択肢は無いようだった。


 

 


 

 

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