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依存少女  作者: かなん
8/22

八 目的は?

まだ、緊張は解きません。

読んでいただけたら嬉しいです。


 真夜との遭遇という予想外すぎる事態に、思わず思考を放棄しかけるが、それをしたら本当に終わる。

 秋音と一緒に来たこと、後ろの薄いカーテンの向こうに彼女がいる事は絶対に隠し通さなければいけない。

 

 目の前の、嘘が通じない少女相手に、だ。


 平然を装って尋ねる。


「あんた、吉宮とどういう関係なんだ?」

「ふふ、吉宮、ねえ?まあ、良いわ」


 真夜の隣の少女は意味深に言うと、何処からか名刺を取り出して渡してくる。


「私はこういうものよ」


 そこに書いてあったのは、エンタメに詳しくない俺でも聞いたことがあるような、超大手企業のプロデューサー兼総取締役という肩書きと、その下にある『鳴倉礼華』の文字。


「へえ・・・って、え?」


 思わず、それと目の前の少女を見比べる。


「そうそう、言い忘れていたけど、私、多分貴方より年上よ」

「・・・マジか」


 人は見た目によらないと言うが、礼華はそういうレベルじゃ無いだろう。


「まあ、そういうことよ。真夜とは仕事のパートナー、元、だけどね」

「昨日の夜に連絡が来て、久しぶりに話したいって言われたんです。まさか、一ノ瀬さんに会えるとは思ってませんでしたけど」

「へえ・・・」


 引退したアイドルに元プロデューサーが会いに来る、思いつく理由としては、アイドルとしての再起、もしくはーー。

 そんな事を考えていると、それを見透かしたように礼華が言う。


「心配しなくても、本当に話をしに来ただけよ。『Six』のメンバーとは、プロデューサーとアイドルである以前に、親友なの。ね?」

「はい、アイドル時代はよく、メンバーと礼華さんで一緒にご飯とか食べに行ったりしてたんです」


 そう言う二人は本当に仲が良さそうで、俺の心配は懸念であったようだ。

 ほっと安堵するが、直面している問題は未だに解決していない。


「一ノ瀬さんはどうしてここに?わざわざ隣町まで」

「あー、知り合いと一緒に来たんだ。一人ならこんなとこまで来ねえよ」


 跳ね上がりそうな心臓を無理矢理押さえつけながら答える。


「そっちこそ、どうしてここに?」


 これ以上質問される前に質問し返す。


「私の都合よ」


 答えたのは礼華だ。


「この後、用事があってね。新幹線が通ってる駅はこっちにしか無いでしょう?それより、貴方は真夜とどういう関係なの?」


 少し考える。

 俺と真夜の関係、どう言葉にするべきか、迷った末に呟く。


「・・・知り合い?」

「友人です」


 と、被せるように真夜が割り込んでくる。

 

「友人・・・ま、どっちでも良いけれど、写真とかは気をつけなさい?引退したとは言え、有名人であったという事実は何処までも付いてくるんだから。貴方も、この子と友達になるなら、人の視線には気を配るように」

「善処するよ」

「そ、なら良いわ。にしても、丁度良かったわ。さっき用事が入っちゃって、少し抜けないとなの。もし良かったら、真夜と一緒にいてもらっても良い?」


 早く立ち去りたかった俺にとって、渡りに船のような提案であった。


「別に構わねえよ」

「え、良いんですか?お知り合いの方は」

「後で謝れば許してくれんだろ」

「・・・じゃ、じゃあ、お願いします」


 そう言って、真夜は俺の手を取ろうとするが、礼華がいる事を思い出したのか、伸ばした手を引っ込める。


「じゃあ、後でまた合流するわ」

「はい、また後で。行きましょう、一ノ瀬さん」

「ああ」


 先に歩いて行った真夜に着いて行こうと歩き出す。

 そして、礼華の隣を通り過ぎようとした瞬間、彼女が俺にだけ聞こえるように言った。


「秋音の事は任せておきなさい、嘘吐きさん」

「ッ・・・あんた」


 思わず、礼華の方を向きかけるが、遠くから真夜に呼ばれる。


「一ノ瀬さん?」

「・・・ああ、今行く」




 

「さて」

 

 二人が立ち去った後、礼華は試着室のカーテンを勢いよく開けた。


「礼華、プロデューサー・・・」


 中にいた少女、秋音が申し訳なさそうに彼女の名前を呼ぶと、呆れたように礼華が口を開く。


「全く、危ない橋を渡るのは程々にしなさい?」

「ごめんなさい」


 秋音が素直に謝ると、礼華もそれ以上は注意する気は無いようで、話題を変える。


「貴方もあの子と面識あるのよね?どういう関係かは敢えて聞かないけど」

「あの・・・はい」

「・・・実はこの後、私と真夜とあの子の三人でご飯でも食べようと思っているんだけど、秋音も来る?」

「良い、の?」


 遠慮がちに尋ねる秋音に、礼華はニヤリと笑う。


「ええ、ちゃんと謝れた子には、ご褒美をあげないとだもの」



 


 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

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