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依存少女  作者: かなん
4/22

四 普通の嫉妬

緊張と緩和を書きたいです。

読んでいただけたら嬉しいです。


「やっぱり、真夜ちゃんだ。ふふ、久しぶりだね」


 儚げで透明な雰囲気を纏う少女が真夜の手を取る。

 困惑した様子の真夜は、されるがままになりつつも、なんとか口を開く。


「え・・・と、色々聞きたい事はあるけど、秋音さんはどうしてここに?」

「どうしてって・・・友達に会いに来ただけだよ?こっちでの生活が落ち着いてから電話しようと思ったんだけど、丁度見つけたから」」

「本当に、それだけなんですか?」

「うん・・・けれど」


 そう言った少女は俺の方に視線を向けてくる。


「今は、ちょっと違うかも」



 二人から三人になった俺達は、適当なカフェに入って、飲み物だけを頼む。

 店員に席まで案内されると、俺の隣に真夜、真夜の正面にもう一人の少女が座った。


「谷塚秋音です。よろしく」

「一ノ瀬遥、よろしく」


 互いに簡単な自己紹介を終えてから、秋音が切り出す。


「それで、二人はどういう関係なのかな?」

「友達です」


 と、真夜。

 だが、秋音の反撃は鋭かった。


「友達が普通、こんなふうに手を繋ぐ?」


 そう言ってスマホの写真を見せてくる。そこには、ばっちりと恋人繋ぎをした俺と真夜の姿がある。

 頭痛がぶり返してくるような気分だった。というか、アイドル達の間では脅迫写真を撮るのが流行っているのだろうか。


「そ、それは・・・」


 困った様子の真夜に助け舟を出してやる事にする。

 流石に、このまま放置して、関係を誤解されても困る。


「なあ、あんた、関係を知ってどうしたいんだ?」


 わざわざ写真を撮ったのだ、何か要求があるのだろうと思っていたのだが、目の前の少女は慌てて首を振る。


「ううん、そんなつもりじゃないよ。純粋に気になっただけ」

「そうか?なら、こいつの言った通り、友人だよ。あんたの邪推するような関係はない」

「そうなの?」

「男女で多少、親密ならああいう繋ぎ方ぐらいするだろ」

「そう、なのかな?」


 実際は知らないが、こういうのは言っている側が、自信を持っていれば大体は誤魔化せる。

 それに、俺と真夜が恋人ではないというのは事実だ。


「じゃあ、一ノ瀬君は真夜ちゃんの事好き?」

「な、秋音さん!」

「んー、嫌いじゃないな」

「そうなんだ。じゃあ、二人はいつ知り合ったの?」

「最近だな、四日前だったか?・・・てか、楽しそうだな」


 質問してくる秋音は、俺と真夜の関係に興味津々のようで、答える度に別の質問をしてくる。

 

「あ・・・ごめんね?その、アイドルになる前から男の子とは話したことも無くて、友達もあんまり居なかったから」

「別に責めてねえよ」


 真夜という前例があるせいか、少しキツく当たり過ぎたかもしれない。

 俺がそう言うと、彼女は再び目を輝かせて質問を続けようとするが、その時、いきなり横から誰かが割って入ってきた。


「あの、『Six』のハルさんですよね!」


 ハル、というのは秋音の芸名だ。

 そういえば、隣の真夜とは違って秋音は変装していない。見れば、一目でわかる。

 

「えーと、もう『Six』は辞めたから」

「あ、そうでしたね!じゃあ、ハルさん、もし良かったらサインとか貰えませんか!ペンとか買ってきたので!」

「その・・・ごめんなさい。もう、アイドルは辞めたから、芸名を勝手に使えないんです。ですから、サインはちょっと」

「そんな!?せめて握手だけでも!」

「まあ、それくらいなら」

「うわ!やった!」


 少年が握手をしてもらった腕を眺めながら走り去っていく。そんな景色を見ていると、目の前の秋音も隣の真夜も有名人である事に気付かされる。


「あ、ごめんなさい。今日は余り外にいる気は無くて、その、変装を・・・」

「気にして・・・」


 申し訳無さそうな彼女に気にしてない旨を伝えようとすると、真夜が遮って言う。


「そうですね。今日は一旦解散にしませんか?また、ファンの方が来るかもしれませんし・・・一ノ瀬さんが居ると、要らぬ誤解を招くかもしれません」

「・・・あー、まあ、そうだな」


 確かに、と思い直す。

 今の秋音と一緒にいて写真など撮られようものなら、学校で注目の的になる事間違い無しだ。

 

「秋音さん、私の住所は後で送っておくので、積もる話はまた明日にしましょう」

「そうしよっか。バイバーイ、真夜ちゃん、一ノ瀬君・・・あ、お金」

「良いよ、俺が払っとく」


 秋音と別れた後、真夜が俺の服を引っ張る。


「あの・・・秋音さんは可愛いと思いますか?」

「まあ、そりゃアイドルだしな」

「・・・そう、ですよね」


 しおらしい様子の真夜の聞きたい言葉はすぐに分かった。

 

「心配しなくても、あんたも可愛いと思うぜ?」

「っ、そう、ですか!・・・その、続きしませんか?デートの!」

「まあ、構わねえよ」


 普段がこんなに奥手なのに、どうしてやばい時はあそこまで振り切れるのか。

 そんな事を考えながら、彼女に手を引かれて夜まで買い物を続けた。



 そして、翌日。

 休日ということもあり、十時を過ぎてもベッドから起き上がらなかった俺を起こしたのは、インターホンの音だった。


 勧誘か何かかと思い、ドアを開けると、そこに居たのは昨日の少女、秋音だった。


「何でだよ・・・」


 

 



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